ハロウィンと秋のバラ
「秋になると、いつも物悲しい気持ちになるの。ずっと前からそうだったわ」 ウサギは図書館の窓辺に立ち、風に舞う落ち葉を見つめながら、静かに呟いた。
「今は秋の花が咲いている。この季節の花には、春や夏にはない特別な魅力があるよね」 隣に立つカメは、彼女の寂しさが少しでも和らぐよう、心の中でそっと願った。
「秋のお花、ぜひ見に行きたいわ」
図書館を後にすると、秋風が二人を優しく包み込んだ。カメはさりげなくウサギの手を取り、二人は駅へと続く道を歩き始めた。
「見て! まるで魔法にかかったみたいに、今にもかぼちゃが動き出しそうだわ」園内に入ると、いろんな表情のかぼちゃたちが一斉に目に飛び込んできて、ウサギは思わず声を弾ませた。
「ハロウィンの季節は、ちょうど秋のバラが咲く頃なんだ」カメは静かに頷きながら、ウサギの横顔に微笑んだ。
「秋のバラはね、春のバラに比べると少し小さくて、花の数も少ないんだ。でも、一輪一輪がとても美しいんだよ」
「一輪で咲いているバラって、まるで『私だけを見て』って言ってるみたいだわ。バラって、やっぱり花の女王様だもの」
「歩き回ってたら、なんだか急にお腹が空いちゃった」と、ウサギは少し恥ずかしそうに笑いながら言うと、考える間もなく、カフェに向かって軽やかに駆け出した。
「コウモリが当たったんだね。ハロウィンのグミマシュマロ、8種類の中からランダムに選ばれるみたいだよ」カメは、ウサギが持ってきたトレイを優しく見つめた。
「えっ、そうなの? このコウモリ、ちっちゃくて可愛いわ」ウサギは嬉しそうにコウモリをつつき、その様子はまるで子どものように楽しげだった。
「秋って、物悲しいと思ってたけど、こうしていると違う一面が見えてくるのね」ほんの少し前まで感じていたウサギの寂しさは、どこか遠くへ消えていった。
「秋って、思っていたより温かいものかもしれないわね」彼女は、ほほ笑むかぼちゃを見つめながら、そう呟いた。その瞳には、秋の柔らかな光が優しく映っていた。