自由な海の世界
その夏の日、ウサギとカメは白砂の前浜ビーチを背にして、来間島へと泳ぎ出した。宮古島の陽射しは力強く、波はエメラルドブルーに輝き、その光は海の深くまで届いていた。
カメは波に揺られながら、その美しい景色に心を奪われていた。ウサギは静かに彼の隣を泳ぎ、二人はまるで夢の中にいるかのように、穏やかな時間を共有していた。
彼は右、左とストロークを繰り出しながら、顔をあげて来間島の位置を確認した。水中では言葉を交わせないが、隣で泳ぐウサギと時おり目が合う。彼女は自分のペースで、この時間を楽しんでいるように見えた。
宮古島の海は海岸から眺めるだけでも美しいが、海に入ると別世界が広がっている。ゴーグル越しに見る海の底には、鮮やかな色のウミヘビがゆらゆらと身をくねらせ、エイが忙しそうにヒレを動かしていた。
二人はその光景に圧倒されながら、まるで宇宙遊泳をしているかのような浮遊感を味わっていた。
色とりどりの熱帯魚を見ているうちに、カメはふと、「帰ったら図書館の487.5の書架で魚類について調べてみよう」という考えが頭をよぎった。海の美しさに包まれながらも、彼の心は知識への好奇心でいっぱいだった。
沖に出れば、そこは自然と自分たちだけの世界だった。何ものにも縛られず、恐ろしいほど自由な世界が広がっていた。二人はその広大な海に浮かびながら、心の底から開放感を味わっていた。
来間島が近づいてきた。二人は海底の岩や熱帯魚にそっと別れを告げながら、白い海岸を目指して力強く泳ぎ続けた。