ひまわりと観覧車
図書館の閲覧席で、カメは物語の世界に入り込んでいた。すると、隣から小さな咳払いが聞こえた。カメが驚いて隣を見ると、いつの間にかウサギが座っていた。
カメが本に視線を戻そうとすると、隣からまた小さな咳払いが響いた。ウサギは何か言いたげに、じっとカメを見つめていた。
「今日は図書館じゃなくて、どこか他に行きたいんだね?」とカメが尋ねると、彼女はほっとしたように、大きく頷いた。
ウサギを助手席に乗せたカメは、三浦半島を南へと車を走らせた。やがてソレイユの丘の駐車場に車を止めると、カメは助手席側に回り、そっとドアを開けた。
「どうしてあなたはここを選んだの?」とウサギに尋ねられたカメは、少し迷ったように彼女に質問を返した。
「今、一番見たいお花は何?」
ウサギは空を見上げてから答えた。
「ひまわりかしら…」
その言葉を聞いたカメは静かに微笑み、彼女の手を握りながらゆっくりと歩き出した。すると、辺り一面に広がるひまわりが二人を優しく迎えてくれた。
「今、一番乗りたい乗り物は何?」
ウサギは少し照れくさそうに答えた。
「観覧車かしら…」
その言葉を聞いたカメは静かに頷き、彼女の手を握りながらゆっくりと歩き出した。すると、大空を回る観覧車が二人を優しく迎えてくれた。
「海、きれいだね」とウサギがぽつりと呟いた。二人は観覧車の小さな窓から、広がる景色をじっと見つめていた。
「ひまわりも見たし、観覧車にも乗ったし、私の願いはほとんど叶ったわ。ひとつを除いてね…」ウサギはそう言うと、振り返ってカメを見つめた。
その言葉を聞いたカメは静かに頷くと、彼女の手を取り、レストランのドアをくぐった。「ここで少し待ってて」と言ってカウンターへと向かったカメは、戻ってくると彼女の前にそっとお皿を置いた。
ウサギがゆっくりと顔を上げると、その瞳はまるで心が透けて見えるかのように喜びで輝いていた。