前代未聞の大失敗
僕はその日、680円を握りしめてLAWSONへ行った。
目的はただ一つ。
仮面ライダーオーズの一番くじの景品が欲しい!
……時は少し遡る。
仮面ライダーオーズは、確か僕が小4の頃に放映されていた。小4と言うと、ちょうどヒーローに憧れる時期である。僕もまた然り、仮面ライダーオーズを見るのが日曜日の日課だった。
仮面ライダーオーズは、人間の欲望や絆がテーマ。あのときはオーズの戦闘シーンが大好きだったが、大人に近づいた今は色々考えさせられるドラマである。あれはもはや、子供向けの番組ではない。
とにかく、僕は幼き頃も今も仮面ライダーオーズの大ファンである。
そして、仮面ライダーオーズは今年で記念すべき10周年目である。10周年目ということで、YouTubeで全話放映されたりプレゼント企画があったりとお祭り騒ぎだった。
その10周年イベントの中に、一番くじがあった。その他ほとんどのアニメに興味がない僕も、『仮面ライダーオーズ』と『ポケモン』と『スポンジボブ』だけは目の色が変わる。これは何としても引かなければならない、そう僕の使命感は吠えた。
……
そして冒頭に戻るのである。
LAWSONに入ると、目当ての一番くじがあったのでホッとした。が、ここですぐさま一番くじを引こうとするのは考えものである。
正直、仮面ライダーオーズの景品なら何を貰えても嬉しい。だが、良い景品を貰えるならそれに越したことは無いではないか。棚にはまだ下位景品が多数あり、今引いても上位を取るのはかなり確率が低い。
逆に考えてみよう。
下位景品が上位景品よりも多いということは、他の人も下位景品を取る可能性が高い。つまり今ここで引くよりかは、他の人がごっそり下位景品を持って帰っていた後の方が、当たる確率が高くなるだろう。
そう考えて、僕は一番くじに延びかけていた手を戻した。訝しがる店員に、腹黒さを微塵にも感じさせないような爽やかな笑顔を向けて店から出た。
一時間後。
僕はまた同じLAWSONにいた。景品棚を見ると、気持ち下位景品が無くなっているような痕跡が見受けられた。上位景品はまだ取られていない。僕は「計画通りだ」と思わずニヤリと不気味な笑みを浮かべてしまう。
だが、さっきの店員さんが気持ち悪そうに僕を見ているのが横目でわかったので、足早に店の外へと出た。勿論、爽やかな笑顔付きである。
三時間後。
僕は懲りずに同じLAWSONにいた。店員は入ってきた僕を見ると、即座にマークし始めてきた。背中越しでもひんやりした視線を感じる。萎縮しながら景品棚を見つめると、下位景品がかなり消えていた。が、上位景品も一つ持ち帰られていた。
この時点でちょうど半々の確率になっている。僕はどうしようか大いに迷ったが、もう一時間粘ろうと賭けに出る。店の外に出ようとしたとき、爽やかな笑顔を向けようと思って振り向いたが、店員が非常に危険な視線を向けてきていたので慌てて帰った。
それから一時間後。
遂に一番くじを引く決心をして、LAWSONに向かう。流石に店員が変わっているかなと思っていたが、相変わらず同じ人だった。僕を見ると、今にも通報しそうな顔で睨んでくる。おいおい、俺ほどの善人はおらんぞ?(大嘘)
さて、緊張の瞬間である。メンタルを犠牲にして挑んだ僕の作戦は決まったのか?ドキドキしながら景品棚を見てみると、
なんとほぼほぼ上位景品しか残っていなかった!
これだったら、くじ運が悪い僕も流石に当たりを引くだろう。名軍師の作戦の完全勝利である。
「一番くじ引きます!」
さっきの店員が安心したように笑う。ただ一番くじの当たりを狙っていただけで、変質者でないことに安堵したのだろう。明らかに挙動不審で変態な僕は、変質者とそこまで変わらない気もするが。
そして運命の瞬間。
僕は心から祈ってくじを引いた。
結果は……、
G章だった。
しばし沈黙が流れる。店員が申し訳なさそうに「もう一回引きます……?」と声をかけてくれる。
「いえ、大丈夫です。」
元々、僕は仮面ライダーオーズの大ファンなので何が貰えても嬉しいのである。一日頑張って引いたのがG賞ならば、そのG賞と縁があったのだろう。
僕は寧ろテンションがあがったまま、景品を譲り受けた。
その時である。僕が大失敗したことに気づいたのは。
貰った景品を見て、次は僕が訝しがる番だった。
貰った景品はこちら。
ん、仮面ライダーオーズ……?
え、ドラクエ……。
次の瞬間、僕は気づいてしまったのだ。
仮面ライダーオーズの一番くじの横に、ドラクエの一番くじがあることを。
……。
悲しみにくれる僕から皆さまにご忠告を。
一番くじはよく確認してから引け。
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