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安心な鳥籠の中で

大学4年生、春

「将来何になりたい?」
「就活どんな感じ〜?」

あぁ、またこの話題か。
頼むから私を放っておいてくれ。

20歳超えた頃から本格的に社会人としてどの仕事に就くかそろそろ考えねばならなくなった。

仕事、すなわち己が生き方。

さて、我が身は生まれてから今日までとりあえずは
「家族」という最小単位の社会に属し続けてきた。
当然近くにいる人に「憧れ」というやつを持つもので、私の場合は姉がそうであった。

 人見知りを拗らせ信頼を置けるのは姉周辺の人たちで、彼ら以外は関われないという考え方から何でも
彼女の後をついてまわっていた。

 小学生に上がると3学年の違いが立ちはだかる。
彼女の卒業後、クラブ活動や委員会が始まったため、ずっと一緒の空間にいることが叶わなくなる。
しかし、不思議と頭は回るもので、彼女の入っていたものに入れば少なくとも彼女を知る人物はおり、
そのつながりで私も自動的に可愛がられるだろう
という閃きが舞い降りてきたのであった。

つまり、何も苦労しなくて済むのである。
あぁ…素晴らしきかな、姉路線、

 この発想から小学校、中学校と私はバドミントン、保健委員会を続けることになる。さらには高校も彼女と同じ高校に入学し、これまでと同様保健委員会は続けたのである。

 それでも誤算というのはあるもので、
例えばバドミントン部では、やはり実力主義であり、これに入れなかった私は同学年の上位に在する数人によりいじめられた。
これともう走り込みは嫌になり、
高校からは続けなかった。
 一方、保健委員会に関しては小学校から委員長に任ぜられたこともあり、高校では普通の委員会を統率する側の専門委員にまでなった。しかし、委員長という役職には後で述べるが、なることは出来なかった。

 高校の部活は何をしていたのか。
ここでも姉により開拓済みの道を辿ってきた妹の甘い考えが発動する。
彼女は高校では園芸部に属していた。
当然妹である私も入部した。さらにお菓子が食べられるという理由のみで茶道部にも入ることになる。
こののち、3年生になる頃には先輩方や先生の信頼を得ることになり、園芸部部長、茶道部副部長という肩書きを頂いたのである。つまり、この二つが忙しいだろうということで保健委員会委員長はなれなかったのだ。ちなみに、茶道部に関しても園芸部で部長なら兼任は大変だろうからということで副部長になったのであった。
 この頃から私は姉の面影を追いつつも彼女の一歩先を求めるようになる。一つ理由があるとすれば受験の時に彼女と同じことコースを選択しようとした甘ちゃんに母親から「一つ上のコースを受けないなら受験料は払いません!」と一喝されたこと、そして活動する中で自分が役に立てた時の喜びも関係していた。

しかし、
この甘ちゃんは大きな壁に衝突したのである。

大学受験だ。

 正直、高校受験の時に姉の影響もあるが、一方で「あ、私ここに進むなぁ」という直感で即決であった。この感覚が大学選びでも発動し、某大学に「なんか、通ってる姿が想像できるなぁ」という感じで
今日までなんとか、通うことができている。

 だからこそ、姉とは違う大学への進学という選択を初めてしたのである。もちろん己が力で開拓しなければならなくなり、2年生のある日、心身共に崩壊してしまう。そこからなんとか周りの人間の助力で
現在の4年生にまでなんとかなれた。

 さて、就職はどうすれば良いのか。

これまで働いていた直感が全く機能しない。

何も見えない。

今までは姉、親の言うこと、安全そうな道、という
安心圏ないわば鳥籠の中で生きてきた。
しかし、
そろそろここから羽ばたかねばならないらしい。

だけど、我が翼はあまりにも休み過ぎて動かない。
いや、動かせない…という方が良いのだろうか。
ただ単に勇気がないだけかも知れぬ。
導きを待つだけでは
どうにもならぬことくらいは分かっているつもりだ。

そんなとき、
バイト先や近隣店舗の人生の先輩方に
同じような言葉を頂いた。
「しっかりしてるし、この職業が好きだから
今まで続けてこれたのだと思うけどなぁ」
なるほど、盲点だ。
確かに良い出会いがあるとこちらも嬉しくなるし、人が納得の商品を選べたことで笑顔になってくれるのは役に立てたという喜びと、ときに失敗もあるが、
フォローしてくれる周囲の大人たちはすごいという
尊敬もある。

なんだ、私にも向いてる職業というのはあったのか。
さぁ、我が翼よ、事前準備は整った。
いつでも飛び立てる。
安心して、深呼吸して、周囲の人の温かさを忘れずに
いざ。

夏終わり、
なんとか一社内定がもらえた、

11月現在、
内定先で本当に良かったのか、
その後の周りの反応や心配されるごとに
不安になってきている。

いつもお世話になる美容院の方によると…

 どんな職業選んだとしてもさ、
 結局やってみないと、現実はわからんもんだし、
 俺らみたいな専門職は
 それが元々体質的に使うものが合わないとか、
 ドクターストップかけられたら
 今までそれ一筋でやってきた分
 お先真っ暗になるけど…
 君の場合はもし合わなくても、
 これまで学んできた武器は多いわけで、
 選択肢が狭まるわけじゃない、
 逆にこれから経験することが
 次に繋がるかもしれないんだしさ、
 まぁとりあえず飛び込んでみたらいいんじゃない?
 俺はさ、いろんなお客さん見てきたけど、
 やっぱり
 就活浪人だけはしない方がいいと思うんだよね、
 同じ4月スタートって大事だと思うし、
 周りの同い年の人たちの半年ずれるだけで
 辛そうな人たくさんみてきたから、
 せっかく決まってるとこ蹴らなくても、
 俺はいいと思うけどなぁ

だそうだ。
そうか、とりあえず飛び込んでみるのもアリなのか、
そういえば最近見た映画にも進路で悩んでいる
主人公に友人たちが
飛び込んでみたら案外大したことないよ
と励ましていたっけ? 

いつも悩みすぎるのは私の悪い癖なのかもしれない、
優柔不断と心配性は一生治らん…と思う、多分…
ならまぁ…やってみるのもありかしら、
結局映画の主人公も目の前のことに全力になるしかない?(だったかしら?)となっていたしなぁ

まぁ、こんな感じだけど、
やってみるさねぇ


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