ペットボトルと社会、私たちの理想は? 行政と飲料メーカーが掲げるリサイクル目標
海洋プラスチック問題が注目されるようになり、近年はマイボトルを持つ人も増えましたが、依然、ペットボトル飲料は私たちにとって身近な存在。
全国清涼飲料連合会(以下、全清飲)によると、業界全体における生産販売量は年間4兆円。これは「全国民が1年を通して毎日500mlのペットボトルを飲んでいる量」に相当するそう(参照)。
環境汚染などの問題はありつつも、ペットボトル飲料は現状私たちの生活に深く根付いていると言えます。
しかし、持続可能な社会に向けて世界的に意識が変革されつつある今、ペットボトルを取り巻く問題の解決は急がれます。
2020年8月、東京都と全清飲は持続可能な社会に向けての取り組みを、大手飲料メーカーなど各ステークスホルダーが宣言する「ボトルtoボトル 東京プロジェクト キックオフ会議」をオンライン開催しました。
「ボトルtoボトル」というのは、東京都と全清飲そして大手飲料メーカーなどが推進する、使用済みペットボトルを原料化(リサイクル)して新たなペットボトルとして再利用する資源循環の形です。
(ボトルtoボトルを行う日本環境設計(株)のプレスリリースより)
会議では「100%リサイクルペットを活用」など希望ある言葉もありましたが、現状はリサイクルや資源再生のメリット・デメリットに関する情報が錯綜しています。
消費者である私たちも、企業まかせではなく自らその取り組みを注視し、欲しい未来をイメージしていきたいですね。
簡単ではありますが、キックオフ会議に参加した各ステークスホルダーの目標を一部まとめつつ、いち消費者として考えてみました。
東京都の目標:「2050年にCO2排出実質ゼロ」に貢献
(同会議の様子)
環境大臣に就任していたこともある、小池百合子都知事。
会議では、2019年5月に宣言した「ゼロエミッション東京」と、その戦略ついて言及しました。
同宣言は、世界の大都市の責務として掲げられた「2050年にCO2排出実質ゼロ」に、都として貢献するというもの。プラスチック対策では、2030年までのアクションとして以下が掲げられています。
・水平リサイクルなど、先進的な企業と連携したイノベーションの創出
・ペットボトルのボトル to ボトル推進
・区市町村支援・連携強化と3Rアドバイザーによる分別リサイクル促進
・TOKYO海ごみゼロアクション
(参照)
会議でも、「都民にも呼びかけて、ボトルtoボトルを大きな流れにしていきたい」と語りました。
全清飲の目標:2030年までにペットボトルの100%有効利用
(会議で使用されたスライド)
全国の飲料メーカーからなる全清飲は、2030年までにペットボトルの100%有効利用を目指していく「プラスチック循環宣言」を掲げています。
全清飲によると、再生PETの利用は現状、業界全体で販売量に対し12%ほど。
会議では、「ボトルtoボトル」を推進し、各社が打ち出す改善策を実現するには、行政と企業の連携、消費者の協力が不可欠と強調し、同団体の取り組みとしては以下があげられました。
①ペットボトルのラベルレス化
(コカ・コーラ株式会社 プレスリリースより)
ペットボトルにラベルを貼らないことで、プラスチックの利用が削減され、リサイクルする際に剥がす手間も省ける。
②リサイクルボックスの共同回収
現状、各企業が自主的に回収している自動販売機横のリサイクルボックスのペットボトルを、団体が委託した回収事業者にまとめて回収してもらう共同回収に移行。
都内でモデル的に実施したところ、ゴミの散乱防止や、空き容器の品質改善に繋がった。今後は、教育施設やオフィスビルなど、範囲を広げ実施予定。
③リサイクルボックスへの異物混入の問題を解決
全清飲が2018年に調査したところ、自販機横のリサイクルボックスへの異物混入率は31%にも登り、「生活関連ビニールや食品容器などが捨てられ、『街のゴミ箱』と化している」現状がある。
こうしたリサイクルに支障をきたす要因をなくすため、消費者の理解を深めるための啓蒙や、設置方法などの改善にも取りくんでいく。
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いち消費者としては、可能な時はラベルレスの商品を選ぶ、ゴミの分別、リサイクルボックスにゴミを入れないといった形で貢献できそうですね。
大手飲料メーカー数社からは、意欲的な目標も
会議に出席した各飲料メーカー10社のなかには、意欲的な目標値を掲げる会社もあり、各社の環境保護への意識が表れた印象でした。目標と発言の一部を抜粋して紹介します。
■コカ・コーラ ボトラーズジャパン
・ボトルtoボトルを推進し、現在20%強の再生ペットボトルの使用率を、2030年までに90%へ。
・「ボトルtoボトル」に必須となる、ケミカルリサイクルを後押しするプロジェクトを進行中。数年内には商業化を目指す。
・2019年に発売された「いろはす」は、100%「ボトルtoボトル」のリサイクルペットを使用。これにより、自動車4000台分の新規プラの生産を抑え、ペットボトル1本あたり49%のCO2削減に貢献。
■サントリー食品 インターナショナル
・2030年までに、全てのペットボトルをリサイクル素材と植物由来素材に100%切り替える。化石燃料由来のペットの使用ゼロを目指す。
・2025年までに、国内清涼飲料事業における同社全ペットボル重量の半数以上において、再生ペット素材の使用を目指す。
・「ペットボトルはゴミではなく資源である」という意識のもと、「作る・使う・集める」のループをしっかりと回し、脱炭素社会の実現する。
■朝日飲料
・企業として「容器包装2030」を掲げている。
調べたところ、同活動の3つの目標は以下のとおり。
・2030年までにリサイクルペットの活用を、60%へ
・リデュースorラベルレスボトルを活用
・プラ以外の新しい環境に配慮した新容器の開発
■キリングループ
・国内事業のペットボトルにおいてリサイクル樹脂の使用を、2027年までに50%を達成
・2050年までに グループ全体での資源循環100%を目指す
企業や行政だけじゃない。消費者の関心も世界を変える
以上、同会議にあった目標や関連情報を筆者なりにまとめました。
とはいえ、専門家ではない一人の消費者にとっては、提示された目標や数値が十分なのか、最善なのかということは、判断がつきにくいですね。
しかし、企業の掲げる目標がつくる未来がどうであれ、それを支えるのは、私たち消費者です。だからこそ、自らの消費が世界に及ぼしている影響の実情は注視していきたいところ。
例えば、同会議では、日本のリサイクル率85%は「世界的にも高水準」という発言がありましたが、85%の中には世界的には認められていないサーマルリサイクル(焼却)や、海外に輸出したプラスチックゴミも含まれています。
そうした指標を整理し、世界と土俵を合わせたときの日本のプラスチックリサイクル率は、現状23%という指摘もあります。(参考)。
また、現状だと輸出されたペットボトルが海に流れ、「ボトルtoボトル」は依然、多大なコストと手間がかかることを考えると(参照)、マイカップ・マイボトルの利用普及につながるインフラ構築に注力するなど、ペットボトルフリーな社会へ向け、抜本的な変化を起こすことだって可能です。
消費する側も、行政や企業と一緒に社会を変える意識で、その方針に関心をもったり、ライフスタイルを見直したりと、「自分なりのエコ」を意識したいですね。
Miroku
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