【短編サムシング】休日それは君が見た光

前略　橋の上から

　揃えた靴の位置がどうにも気に食わず、直しているうちに日が暮れて朝が来ました。つぎは裸足で来ようと思います。次があるのかは知りませんが。そんな事はどうでもいいんだ。俺はいま猛烈に怒っているし、これは義憤だし公憤なので配慮されるべきだよ。
　例えば反権力者たちが欲しがる金バッヂや銀の楯、または名誉だとか名声と言うのは権力そのものですから、それを得た瞬間より手前の、それを欲しがる瞬間から家父長的な保守思想は発生しており、これらは腹を切って死ぬべきなのである。
　また世界の大半は小麦粉と砂糖、または塩を捏ねくり回したもので構成されている。例えば俺が黒鉛やゼロとイチを弄り回す様に。それがキーボードかタッチパネルかの違いかは些細である。
　しかし逆に言えばその遊戯の差で世界はこんなにも変わる訳だ。俺やお前を構成する物質は殆ど同じだし、設計図も大体は同じだ。個体差もあまりない、誤差の範囲内に収まる程度だ。しかしその差があるから愛だとか罵声だとかが発生する。個体差もなかなかどうして難しいものだ。誤差範囲内だけど。
　誤差範囲内だと言うのに、しかし世界はこうも分裂している。君の卵子だとか俺の精神だとかまたは議会、それともモーゼの海の様に。
　いや、チリの東西分裂を笑っていたら祖国が東西分裂してしまい、わりと楽しい事になってしまっているんだ。今になると北陸地方の観光をしておけば良かったと思う。俺は北陸に行った事が無くてね、それが残念なんだ。
　しかし「歴史的に見て小国は近くの大国に飲まれる運命なのだ」と左利きのセフィロスがしたり顔で言うが、それなら五十一番目の星になる方がまだマシだと思う人間が少なくない。お陰で島が右に傾いて東京湾と芦ノ湖が繋がってしまった。霞ヶ浦も繋がったし、猪苗代湖もそう遠くないうちに繋がるだろう。
　そう言えば琉球の独立に触発されたのか、ハワイも独立を言い出したらしいね。やれやれ、そうなったらさっきの話も五十番目と言う事になる。沖縄のつぎは北海道と言う話もあるが、まさか五稜郭を使う訳でもあるまい。千葉は南北に分かれると言う話も聞いているが、アクアラインがあるし何とかなるだろう。いざとなればフェリーのルートに橋を建てさせるさ。幸いにも少年院が近くにある。え？もう水没しているって？それは少し困った話だね。
　世界はどうなっているかね？この手紙が届く頃にはバスク地方も独立を果たしているだろうか。ピンチョス、君の乳首やクリトリスに刺さったピアスを指す隠語であり君のコードネームだ。いいかいピンチョス、この手紙が届いたら封を切らずにそっとしまっておいてくれ。トキが立てば俺の今の気持ちが分かるだろう。トキが立つからな。
　地球を分裂させて軌道上に二つ、太陽を軸として対象にぶん回せば右翼も左翼も幸せだと思うんだ。ひとつしか無いから揉めるのであって、２つあれば分け合えるだろう。地球内空洞説も好きだけれど、やはり内側と外側で喧嘩になりかね無いからね。
　だからいま外宇宙から巨大な精子の群れがこちらに向かっているはずだ。距離にして350,000光秒くらいだと思う。少なくとも宇宙にはコンドームが無いから着床はしやすい筈だ。コーラで宇宙を洗っても間に合わないさ、地球は分裂をする。そう、コーラは洗うものじゃない。飲むものだしね。
　さて、そろそろ笛を置くとしよう。もう中を吹く布が無いんだ。リコーダーは乾かして置いた方が良い。穴から何が出てくるか分かったものじゃないからね。そう、ミリオタ的には穴は何かを出すものだよ。トイレットペーパーの芯にすら陰茎を入れたい人種にはワカらないだろうけど、写経で方が済むならその方が良い。