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世界一リッチな腸内細菌叢を持つ、タンザニアのハッザ族。

近年、腸内細菌叢の研究がたいへん盛んになっています。なぜなら、腸内細菌叢の多様性が失われると、おのずと花粉症、アトピー、鬱病、糖尿病、免疫疾患そのほか万病の原因になる可能性が高まることがわかりはじめたからです。腸と脳には相互関係があることもわかりつつあります。にもかかわらず、近年、西側諸国の腸内細菌叢 Gut microbiome の多様性はどんどん失われる傾向にあって。腸内細菌叢が貧しくなる原因は、土壌の細菌類の多様性の減少、ひいては生物多様性の減少と並行していもいれば、われわれの食の多様性の減少を裏づけてもいます。こりゃ大変だ、なんとかしなくちゃ。というわけで、いま、腸内細菌叢研究は医学、分子生物学、細胞生物学にまたがる最大のテーマのひとつに躍り出ています。


世界屈指に腸内細菌叢がゆたかなことで有名なのは、人類発祥の地、東アフリカのタンザニアの狩猟採集民ハッザ族Hadza people です。かれらは盆地にある湖のまわりと高原の保護区に住む1200人~1300人のグループで、むかしながらの狩猟採集で暮らしているのは200人足らずです。かれらはベリー類、バオバブの実、マメ科やウリ科の植物、塊根、ハチミツ、たまには肉を食べるものの、7割がた植物食で暮らしています。なんとかれらは1日100g以上の食物繊維を摂取しているそうな。(恐ろしいことに一説には、近年の日本人の食物繊維摂取量は14gていどではないか、と推定されています。これでは健康を護ることは難しいでしょう。)なお、かれらは環境依存型の食生活ゆえ、雨季と乾季では食事内容も変わり、腸内細菌叢もまた変化するそうな。これもまたかれらの腸内細菌叢のゆたかさの一因であると目されています。さて、そのハッザ族は一人当たり平均730種の腸内細菌を宿していることがわかっています。(なお、カリフォルニア人の平均的な腸内細菌叢にはわずか277種しか棲んでいません。参考として、ネパール人の腸内細菌叢は、ハッザ族とカリフォルニア人のちょうど中間に位置しています。)次に、興味深いことにはハッザ族は牧畜と無縁ゆえ、かれらの腸内細菌叢にはビフィズス菌がまったく存在していないことも注目されてます。なお、ハッザ族の平均寿命は70歳。過酷な環境と、衛生環境をおもえば、立派なものではないかしら。




つまり高脂肪、高糖質、低繊維質の欧米型の食生活がわれわれの腸内細菌叢を貧しくしていることがわかります。また、この問題が土壌の細菌叢の多様性の減少と並行していることをおもえば、一年暮らしていてもミミズの一匹も見かけないような都市で暮らしていれば、とうぜんヒトが健康が保てるかどうか怪しいものではあるという結論になるかもしれません。いくらおいしいからと言ってファミレスで食べてよろこんでばかりいちゃいけませんよ、という教えもまたあるでしょう。都市民としてはまったくうれしくない結論(?)だけれど。



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