妖の唄─屋台おでん『闘魂』
屋台おでん『闘魂』
妖怪達が贔屓にしている
この店に幼児が二人。
ふーふーとおでんの
ウィンナーを冷ましている。
貧乏神共も、静かに様子を
眺めてながら
チビチビと酒を傾ける。
「おお!チビ共!」
ニコニコと地獄酒の壺を振りつつ
遠くから声をかけているのはコン。
仕事後なのだろうか
妖艶な姿で微笑んでいる。
コンに気づいた貧乏神のジンは
背中を丸め、ゆっくりと
座敷童の後ろへと移動した。
『闘魂』のオヤジへコンが酒を
渡しているのを確認して
ジンは、音を立てずに暗闇へと
消え……ることは、出来ずに
コンに首根っこ掴まれた。
三日月の口元は
本来であれば、痺れるほど美しい。
が、ジンにとっては恐怖でしかない。
「ヌシ、もしや逃げ「ねぇさん!おかえりなさい!!」」
そんな大きな声が出たのかと
いうほどの声量でジンが叫ぶ。
「オヤジ!ねぇさんに、おでん!」
そう言いながら『闘魂』へ
走っていく。
ケタケタと笑うコン。
つられて、一緒に笑う座敷童達。
今夜も長い宴が始まりそうだ。
妖の唄|まくら|note
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