語りえぬものについて、ひとは沈黙しなければ…:読書録「哲学と宗教全史」
・哲学と宗教全史
著者:出口治明
出版:ダイヤモンド社
消費税増税前に買い溜めした本の一冊。
今まで「積読」状態でしたが、stay homeで時間ができたので、手にとってみました。
感想をひと言で言えば、
「思ってたより、面白かった!」
宗教が生まれる前、「言葉」の誕生から語り始めて、最古の宗教「ゾロアスター教」から、ギリシャ哲学、中国哲学、仏教、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教、中世哲学(神学)、ルネサンス、近代哲学、現代哲学
…と歴史の大きな流れを追いながら、それぞれの時代における「宗教」「哲学」の概要、それらが歴史に与え、与えられた影響等を、分かりやすい文章で、整理して解説してくれています。
まあ、さすがになんの前知識もなしに読んだら「?」でしょうが、ざっくりと「世界史」の流れを知っていて、基本的な宗教・哲学の知識がある人にとっては、楽しめる一冊になっていると思います。
個人的には「イスラム」絡みのとこなんかは知識があやふやなところも少なくなかったので、かなり参考にもなりました。
まあ他には、
「近代・現代哲学、めんどくせ!」
って感じですかねw。
個人的にはイギリスの「経験論」はOKなんですが、デカルト以降の「大陸合理論」あたりになると、「考え過ぎちゃう」?w
カント以降については「現実」とのせめぎ合いが見えてきて実感も戻ってくるものの、枠組みが理論的に精緻になる一方で、「小さく」もなってきた感じも出てきて、「構造主義」までくると、
「いや、確かにそうかもしれないけど、そうなると哲学って…」
って気分にもなってしまいます。
「現代」ってのはそう言う時代なのかもしれませんが…。
「宗教」「哲学」とは何か?
作者はそれを次の問いかけへの答えの模索と整理します。
<・世界はどうしてできたのか、また世界は何でできているのか?
・人間はどこからきてどこへ行くのか、何のために生きているのか?>
「科学的には」答えが出ているこの問いに、それでも人間は問い掛け続けざるを得ない。
ヴィトゲンシュタインは、
「語りえぬものについて、ひとは沈黙しなければならない」
と言いましたが、その「語りえぬもの」を少しでもなくしていこうと試行錯誤し続けるのが人間のサガなのかもなぁ…とも。
未知のウイルスに翻弄され、感情的になる人々や、解消することのない人種差別の噴出なんかを見ると、「宗教」や「哲学」の必要性と限界を考えざるを得ません。
本書はそう言う思考への「土台」にはなると思います。
読んだからって、「答え」はそこにはないんですけどね。(「答えがない」ってことに至るまでの「歴史」とさえ読めるかも)
それこそが<現代>の課題なのかもしれないなぁ…。
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