「脳卒中」がどう言うものか、一端が分かります:読書録「復活への底力」
・復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる
著者:出口治明
出版;講談社現代新書(Kindle版)
21年1月に出口さんが倒れたというニュースを知った時、「原因は何か」「その後の経緯はどうなのか」についてあまり情報が出てこなかったので、ちょっと不思議に思ってました。
出口さんだったら、そういうのドンドン発信しそうじゃないですかw。
なんで、
「コレは本人が意志を表明できないような重症なんだろうな。もう復帰は無理かも…」
と内心思ってました。
実際、かなり重い「脳卒中」だったようです。
<医師による診断は左被殻出血。脳卒中、脳出血と言われる病気です。症状としては意識障害や右半身の麻痺、失語が出ました。>
それが1年余りで復帰し、この4月にはAPUの入学式で祝辞を述べるまでに回復するとは!
(この37分ごろから出口さんの「学長祝辞」があります)
本書はその発症後の様子から、入院・リハビリを経て、復帰するまでの具体的なリハビリへの取り組み、その間の自分の考えなどをまとめたものです。
本としては以下のような体制で作られたようです。
<原稿作成に関しては、講談社現代新書編集部の青木肇編集長、担当編集者の岡部ひとみさん、フリーランスライターの宮内健さんに僕へのインタビューをベースとして、さまざまなメディアや講演でこれまでに僕が行った発言や、関連する資料の収集・整理、原宿リハビリテーション病院のスタッフへの取材などを行ってもらい、取りまとめていただきました。>
この復活そのものは素晴らしいと思う一方で、「学長祝辞」の様子なんかを考えると、「どこまでご自身の言葉が反映してるのかな?」というのが気にもなったんですが、本書を読んでいると、リハビリの過程でご自身が左手で書いた文章の内容が紹介されており、その内容を読むと、「いやぁ、出口さんは、出口さんやわ」と安心させられました。
どういう形で本がまとめられたにせよ、背景に出口さんご自身の考えや論理的かつ合理的な判断が反映していることは間違いなさそうです。
「脳梗塞」「脳出血」に罹った人は僕の周りにも何人かいらっしゃいます。
その症状が発症部位や発症時の経緯なんかで「人それぞれ」なのは十分に承知しているつもりです。
それでも、こうやって復帰した出口さんの文章を読むことで、「脳卒中がどういうものか」「そのリハビリがどんなものか」「その効果はどこまで期待できるのか」、一つの事例として確認できたのは、僕にとっては興味深いものでした。
最終的に出口さんは自分の意思をシッカリと表明できるようになってるわけですから、「脳出血」があっても意識さえあれば、その「意識」を「どう伝えるか」の部分に支障があるだけで、「意識」そのものはシッカリとあるんだ…と思ってたら、そうでもないんですね。
むしろ脳へのダメージが、その「意識」「考え」そのものを歪めてしまう。
応対ができたとしても、それが筋の通ったものになっているとは限らないのだというのが、出口さんの発症当初の状況から理解できます。
と同時に、リハビリによって、脳のダメージによって歪められていた部分が「回復」していくんですよね。
そこにはラッキーもあったでしょうし、出口さんのパーソナリティや、周りの適切なサポートもあったと思いますが、リハビリによってこんな風に「戻ってくる」というのも驚きでした。
諦めちゃいかんのやなぁ、と。
果たして今後、出口さんがどういう活動をされていくのか、それは分かりません。
APUの学長を続けていくのか、今回の気づきから考えた障がい者のための社会づくりの方向にいかれるのは、あるいは(あって欲しくないけど)再び体調を崩されて、思うような活動ができなることだって考えられなくはないです。
しかしまあ、そうであっても、「運命を受け入れ、前向きに生きる」。
出口さんはそうされるでしょうね。
それは間違いないと思います。
僕もまあ、心臓に疾患がありますし、脳梗塞・脳卒中だってありえないことじゃない。
そうならないように健康には留意しつつ、なったとしても「運命を受け入れ、前向きに生きる」。
そうありたいものです。
ま、「人生は楽しまなければ損」ってのも忘れないようにねw。
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