結構「ガチ」な作品なんで、流し読みには向いてませんでしたw:読書録「アフター・リベラル」

・アフター・リベラル 怒りと憎悪の政治
著者:吉田徹
出版:講談社現代新書(Kindle版)

最近、結構出ている「リベラル反省の書」の一冊かと思って、通勤中に流し読みできるようにKindleで購入したんですが…。
すみません。
硬派でガチな作品でしたw。

まあ、大きな枠組みは今までの「リベラル反省」の分析と違うわけじゃないんですけどね。

所謂「中間層」が既存の政治勢力に自分たちの代弁者を見つけ出すことができなくなって、そこに登場したポピュリズム的/権威主義的なリーダーが、彼らの「代弁者」として、精力を拡大することになった。

この大きな構図を、「リベラル」の分析や歴史的な経緯などを踏まえつつ、過去の学術的な論説なども参照しながら、現在の国際的課題(トランプ旋風、BREXIT等のほか、歴史認識問題やテロにまで視野は及んでいます)にも言及する…という内容になっています。
どっかの政治評論家のような印象批評的あるいは政治談義的な話ではなくて、しっかり先行する研究を踏まえた内容になってると思います。
(まあ、そこら辺についていけなかったんですけどw)

・既存の政治勢力(保守/リベラル)は、(先進国での)経済発展・冷戦を背景に、「リベラル・コンセンサス」に偏ってしまった。冷戦後、<大きな物語>がなくなった中で、反リベラル・非リベラルのポジションにある層が(多くは中間層)が置いてきぼりにされてしまった。
・戦後の経済発展の恩恵を受けて、中間層は物的な充足感ではなく、脱物的価値に重きを持つようになっている。その結果、「リベラル」が推し進めた<個人重視>の思想とも相まって、「アイデンティティ」「自己承認」を求める人々を生み出してしまった。(この転機が「68年」ってあたりも興味深い)
この層がポピュリズム・権威主義を支持するようになっている。(彼らが自己承認を満たしてくれるから)
・「自己承認」は「事実」を必要としない。自分が信じたい「物語」を与えてくれることを求める。
「歴史修正主義」も「テロリズム(宗教原理主義)」も、自分が勝手に考える「物語」を受け入れる土壌となっている。

…ザク〜っとそんな感じで受け止めています。
いや、勝手にまとめてるだけなんで、作者の言ってることを把握できているかどうかは、甚だ心許ないんですが…。

では、どうすればいいのか?
作者はそれを乗り越えていくのも「リベラル」であると主張します。

<重要なのは、共同体・権力・争点とも対応する、このアイデンティティ・個人・主体という三角形の均衡と相互の緊張関係である。これまでみてきた事例でいえば、あまりにも強いアイデンティティは例えば宗教原理主義を、あまりにも強い個人の要請はナルシシズムを、あまりにも強い主体の要求は経済的不平等を、それぞれ招き寄せてしまう可能性がある。この三角形を個人と社会のレベルにおいて、意識的かつ反省的に発展、均衡させていくのが、これから「請け戻される」リベラリズムの姿となるだろう。>

<めざすべきは人間性の剝奪に抵抗するリベラリズムの構想だ。その担い手となる個人を社会リベラリズムによって育て、政治リベラリズムによる闘いへと誘い、開かれた個人主義リベラリズムを生むような整合的なリベラリズムも考え得る。>

…具体的にはどうしろって言うの?
と思わなくはないですかねw。

まあ、それは僕の読解力の問題だと思うのですが、それを割り引けば、「リベラル」を考える視座を与えてくれる本としては結構しっかりしてていいんじゃないかって気はします。
流石に今回の新型コロナ対策で「トランプはどうよ〜」って感じも出てますが(あまりにもファクトを軽視しすぎでしょう)、中国を中心とした東南アジア諸国の権威主義的な対応には一定の評価がされつつあるというところもあります。

リベラリズムがそれに対抗できる思想となり得るのか。

結構、重要なことだと思いますよ。

#読書感想文

#アフターリベラル

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