世代としては1つ下なんだけど「そうだったよなぁ」と言う気分になります:読書録「ないものとされた世代のわたしたち」
・ないものとされた世代のわたしたち
著者:熊代亨
出版:イースト・プレス(Kindle版)
精神科医にしてブロガーのシロクマさんの新作。
シロクマさんのブログは機会があれば読ませてもらってますし(結構レコメンドされてます)、著作もいくつか読ませていただいてます。
本書は50代を迎えつつある現在、自分史に重ねる形で今までの社会の変化を記録した内容になっています。
就職氷河期世代は、50代に。
あのころの思い描いた未来と今は、どこかちがう。
昭和の地域社会、 就職氷河期、 オタクの変遷、発達障害の台頭、 インターネットへの期待と現実、ほんとうにやってきたポストモダン社会・・・・・・ 時代の変化のなかで何を体験し、 そして、 何を見落としていたのか。
1975年生まれの精神科医が、 半世紀の記憶と記録をたどるクロニクル。
「社会の曲がり角は、その渦中にあって案外気付きにくい。そのことを知るうえで、 あの、 葬送しようにも葬送しきれない一時代が教えてくれることは多いように思う。」(第2章 「ないものとされた世代のわたしたち」より)
(Amazonより)
▼もくじ
はじめに
【社会】 第1章 途上国の面影のこる地方社会
【経済】 第2章 ないものとされた世代のわたしたち
【オタク】 第3章 犯罪者予備軍と呼ばれたオタク
【精神医療】 第4章 診断され、 支援され、 囲われていく人々
【ネット】 第5章 インターネットにみた夢と現実
【現代思想】 第6章 やってきたのは 「意識低い」 ポストモダンだった
おわりに
シロクマさんは75年生まれだから、僕よりちょうど10歳年下。
「世代論としてはあんまり重ならないかな〜」
とも思ったんですが、そうでもなかったかな?
彼らはちょうど就職氷河期にあたるので、就職活動や働き方と言うあたりでは経験の質が違うのは確かです。
そのことが「ないものとされた世代のわたしたち」として論じられ、表題にもなってるんだから、そこの違いは大きいいんでしょう。
そのことは分かる気がします。(まあ88年に社会人になっったって僕もさほどバブルの恩恵は受けてないんですが、その尻尾の時期で、就職活動が楽だったのは確かです)
でも「社会」「オタク」「ネット」「現代思想」のテーマなんかには結構デジャブ感がw。
僕もまあ前近代の田舎から、大学進学でポスト近代に放り込まれて、近代が血肉になってない感はあるんですよ。
80歳代半ばで独り暮らしする母親のフォローを考えると、ここら辺のことが最近になって身近な課題としても立ち上がってる感があります。
オタク/新人類/サブカルの関係なんかもリアリティありますね。
僕自身はオタクにまでは踏み込めなかったけど、社会ムーブメントとしての新人類やサブカルを全肯定するにはオタク的含羞が邪魔をしたと言うかw。
まあ現在のようにそこら辺の作品や環境を大手を振って楽しめるようになってることはありがたいと思ってますけどね。
ネットとの距離感も同じような感じかな。
楽しみはするけど、踏み込むまでは行かない。
シロクマさんは「踏み込むひと」なんで、だからこそブログを参考にさせてもらってた、って言うのはあるんでしょうね。(踏み込む分、ずいぶんとケガもされてますが)
世代論として読むと、テーマによっては同じ世代の人でもそこに関与しなかった人もいるでしょう。
そう言う意味じゃ、世代論じゃなくて、あくまでも個人史。
でもテーマによっては(世代関係なく)重なりを覚える人はいるだろうし、そう言う人にとっては本書を参考にして自分の過去の経験や知識の解像度を上げる一助にすることが出来る。
そんな感じかな。
僕はすごく面白かったです。
まあ10歳上の僕にとっては、そうやって過去を振り返ることが「コレから」にどこまで繋がって行くのか…ってのはあるんですけどw。
ま、それは別の話。
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