さて、来年の大河ドラマはどこら辺まで突っ込んでくるのかな?:読書録「月と日の后」
・月と日の后
著者:冲方丁
出版:PHP研究所(Kindle版)
「はなとゆめ」で「清少納言/中宮定子」を描いた冲方さんが、「中宮彰子」を描いた作品。
彰子の女御には紫式部がいますが、「はなとゆめ」とは違って、本書は「彰子」目線での物語となっています。(「紫式部」も重要人物の1人ではありますが)
988年 誕生
999年 一条天皇に入内
定子が敦康親王を産む
1000年 中宮に冊立
定子、崩御
彰子、敦康親王の養母となる
1006年ころ 紫式部が女御に
1008年 敦成親王を出産(後一条天皇)
1009年 敦良親王を出産(後朱雀天皇)
1010年 藤原伊周、死去
1011年 一条天皇、三条天皇に譲位後、崩御
敦成親王が東宮に
敦康親王が東宮とならなかったことに彰子が激怒する
1016年 後一条天皇、即位。彰子、国母となる
1026年 落飾(出家)
1028年 藤原道長、逝去
1036年 後一条天皇崩御
1045年 後朱雀天皇崩御。孫の後冷泉天皇即位
1068年 後冷泉天皇崩御。後三条天皇即位(後三条天皇は藤原氏を直接の外戚としない天皇)
1073年 白河天皇即位。後三条上皇崩御
1074年 崩御(87歳)
…というのが「藤原彰子」の一生。
この長命な女性の一生を追いかける作品ですので、本書も後半は「駆け足」にならざるを得なかった印象があります。
巻末にある系図を見ながらじゃなかったら、人物関係を追い切れませんでしたw。
物語の流れとしてはこんな感じでしょうか。
・一条天皇の中宮となったが、一条天皇が愛した「中宮定子」の影を払拭できず、自分に自信が持ち切れない状況が続いていた
・伯母の藤原詮子の「告白」を聞くことで、天皇・一族・朝廷を覆う「恨みと怨念」の連鎖を思い知り、それを避け、一条天皇を支えて行くことを決意する
・紫式部を師として、漢書等を学び、天皇を支えていく知識と経験も身につけていく
・一条天皇の死後、「恨みと怨念」を避ける政治を行うべく、天皇・藤原一族を支えつつ、政敵の一族にも心を配る公平な御世を目指す
・「外戚」を重視する「摂関政治」の限界を悟り、親政を行う後三条天皇に「新時代」をみる
・道長死後の一族の内争が一応の終結を迎えた(藤原頼通の死去)のを見届け、死去
読む前にはもっと道長との対決が前面に出て、なんなら「摂関政治」を破綻に追い込む…くらいの話になるのかと思ってたんですが(歴史のタイミング的にはそういうポジションになります)、もっと広い心を持った人物として設定されていますね。
まあ、そういうことをやりそうだったのは、「藤原詮子」のほう。
彼女の「告白」シーンは、ナカナカのホラーのりでした。
内裏の失火(限りなく放火が疑われる)やイベントを使った嫌がらせ、権威と権力のせめぎ合い等々、雅な世界の裏側で繰り広げられるダークな陰謀も描かれていて、それらから如何に少しでも多くの人を救っていくか…が彰子の戦いでもあります。
平安時代の政治ドラマとして、かなり突っ込んだ内容になってんじゃないかなぁと思いながら読みました。
さて、この時代は再来年の大河ドラマの題材にもなっています。
紫式部を軸に、道長や彰子も当然出てくるでしょう。
どういう風に描くのかな?
この「恨みと怨念」の連鎖に踏み込むとしたら、これは「鎌倉殿」にも並ぶような陰鬱な展開になる可能性もありますが…。
何やら、ちょっと楽しみになって来ました。
#読書感想文
#月と日の后
#冲方丁
#中宮彰子