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仕事内容よりも時給を選んだ

 ひとりぼっちコールセンターは辞退した。

在宅ではなく通勤なので仕事の内容や環境を確認したところ、腹積もりの条件をクリアした仕事とわかったので応募。採用された。

時給はぼっちコールセンターの倍以上だ。ただ、コールセンターは在宅の予定だったし、収入が当てにできないのは承知の上ではあった。

収入にはならずとも、社会参加であるとか、やりがいとか面白味とか、そういった別のところで興味があった。

それと、小馬鹿に映りそうだが「声を出したい」ということが大きかった。

自宅に引き籠っていると、まあ人と話さない。一昔前とは違い、他者とのコミュニケーションはチャットで済んでしまう。私もそれで困らない。困らないのだが、嚥下能力の低下が心配なのである。

カラオケがお好きな人は良い。一人だろうがいやむしろ一人で大いに歌うが良い。YouTubeでも見ながら大声でどうぞ。

私はカラオケもしない。若い頃はよく行ったが、今はもう「そんな時代もあったね」だ。なんであの頃夢中になっていたのやら。

ともかく、こんな理由でコールセンターは打ってつけであった。かかってきた電話には嫌でも応えねばならない。明るくトーンを上げて、張りのある声で。喉を鍛えよう、そんな思いが強かった。嚥下能力が低下すると飲み込む力が弱くなって、色いろ衰えてしまうのだ。

しかしいかんせん、賃金が安い。正直なところ安すぎた。安いだけでなく、数か月にもなるかも知れぬタダ働きも覚悟しなくてはならなかった。一旦は覚悟を決めた私でも、あっさりと他の求人に目が向いてしまったほど、条件は悪かった。

さて、時給で転んだ通勤仕事だが、勤務開始から一か月。

まあまあ、である。

それにしても、ぼっちコールセンター、もう少し賃金をどうにかしてくれればなあ。絶対に面白いはず。惜しいなあ。

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