短歌 新作8首 『何も言わないで。』
相手の気持ちを知りたいと思うとき、つい言葉を求めてしまう。
けれど、無言で読み取れる気持ちもある。
声、顔、仕草……答えは人のあらゆる細部に宿っている。
そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
何も言わないで。 鈴掛真
ひとつだけボタンを掛け違ったからあなたに俺はもう似合わない
人の声を聞いていたくてYouTube流したままで寝落ちする火曜
本当の俺を映して確かめる水を抜かれた池の水面に
着実なロングトーンを轟かす路上奏者のテナーサックス
環七を背中合わせで歩き出し落ち合えたなら、何も言わないで。
消防のサイレンが鳴るヒトがヒトに救われながら眠りゆく首都
今日がまた終わっていくね夕暮れを背にした君は眩しすぎるよ
「見て、飛行機」近所の老女に促され見上げた空は何も無かった
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