短歌 新作8首 『黒い星』
街の喧騒に佇んでいると、自分は本当にここで存在しているのか、不安に思うときがある。
誰も見てくれていなくても、誰にも感謝されなくても、きっと明日は今日より良い日だと、道端の空き缶を拾ってゴミ箱に入れてみたりする。
そんな気分を、8つの短歌で書いてみました。
第一歌集『愛を歌え』には収録されていない新作です。
もしも気に入っていただけたら、ぜひ『愛を歌え』も読んでみてくださいね。
あの俵万智さんが帯文で「今を生きる愛の名言が、ここにある。」と太鼓判を押してくださった、295の短歌で綴った物語です。
黒い星
朝凪の稲穂のように黄金の産毛が彼の腕で閃く
なぜ泊めたのか問われれば、すごろくの駒を進めてみたくなったから
次はいつ会えると訊いてくる人よ「いつ会いたい?」とは訊かないのだね
口実はなんでもよくて昨日より散った桜をLINEで送る
必要な人になりたい窓枠のようにあるいはカウチのように
君だけが知っていればいい月のない闇夜を照らしている黒い星
何からも卒業できず俺たちは昨日と同じスーツを羽織る
もう君を思い出さなくなったことにすらも気づかず春は終わった
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