サポーター視点で読む『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』
ページをめくると最初にこのように書かれています。
『サッカー指導者は伝え方で決まる 机上は緻密に、現場は柔軟に』(カンゼン)は、「サッカーの監督が直面するリアルな悩みを、みなさんと共有し、互いの糧にできれば」という思いが込められた本です。
著者である岩瀬健さんの経験をもとに、選手のタイプによる伝え方、選手との向き合い方、戦術や練習の考え方を、清水英人さんとの対談形式で紹介しています。
岩瀬さんは、現役時代は浦和レッドダイヤモンズ、大宮アルディージャでご活躍され、引退後はコーチとして経験を積み、その後、柏レイソル、大宮アルディージャで監督として指揮をとり、現在は大分トリニータのヘッドコーチを務めていらっしゃいます。
岩瀬さんが大宮アルディージャ監督を解任された前日の話から始まるのですが、野次馬的な感じで読み始め、最後の戸田和幸さんとの対談まで一気に読みました。
「戦術とは最初からそこにある、カジュアルなもの」「ピッチ上に自然と組み込まれているもの」という考え方は、新しい気付きでした。
ボールやスペースを奪い合う小さな駆け引きも含め戦術で、それは指導者がいるいないに関係なく存在するというものです。
戦術とは少し先のプレーの狙いを共有することと考えれば、「戦術」という言葉を毛嫌いせず受け入れられるような気がしました。サッカー観戦は頭で考えるのではなく、心で感じ、スタジアムの空気感を楽しみたい、と常々思っていた私も「そうか!」と納得できたわけですから、やはり「伝え方」は大事なんですね。
一方、「伝え方」が選手のパフォーマンスに影響を与え、重要なのは理解できるのですが、監督はこんなにも選手に気を遣って伝えなければいけないのかと感じました。トップチームの選手であれば、監督のやりたいことを能動的に考え、選手から監督に歩み寄るものだと思っていたため、指導者側が選手の欲していることを考えて伝えてあげるというのは少し驚きでした。
また、サッカーの詳しいロジックに興味をもつ選手が2、3割(岩瀬さんの肌感覚の割合)しかいないのも衝撃でした。ロジックに興味を持ち指導者寄りの視点がある選手として、大谷秀和選手、中山雄太選手の名前が挙がっていましたが、やはり中心的な選手、サポーター目線でみて良いなと思う選手がそのような思考なんだと感じました。しかし、「論理的なコミュニケーションを好む選手=良い選手」という見方は避けるべきで、言語化が苦手でも感覚的に理解している選手はいるとのこと。
プレーの技術向上以外に、このようなコミュニケーション力を強みとして伸ばすことで、監督が変わっても常に選ばれる選手になるのでは……とも思いました。
それにしても、賞賛より批判される方が多く、結果が出なければ簡単に解任される職業は他にあるのでしょうか……。そんなことを考えると、スタジアムで選手紹介の最後に監督の名前が呼ばれたとき、一番大きな拍手を送りたいと思ったのでした。
戸田さんがお話しされていた、当時の監督にバルサのゴール映像を見せられて「これをやりたいんだ」と言われた話はクスっと笑えます。監督は誰だったんだろう(笑)分かった人はこっそり教えてください。
こんな人におすすめ
サッカー指導者 ★★★★★
指導を受ける人 ★★★☆☆
全てのサポーター ★★★☆☆
こちらで、序章が読めます。