(注を追記)解の置換とラグランジュ・リゾルベント
竹村の家庭教師が始まった。
「前回の授業では、2次方程式の解の公式を『対称式』という観点で導出してみた。まずは解を『対称式』とりわけ『基本対称式』で表す。すると『解と係数の関係』を用いて、解をその方程式の係数で表すことができる、ということだったね。
<2次方程式の解と係数の関係(復習)>
2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の2つの解を $${\alpha, \beta}$$ とすると
$$
\begin{align*}
\underbrace{\alpha+\beta}_{基本対称式}&=-\dfrac{b}{a}\\
\underbrace{\alpha\beta}_{基本対称式}&=\dfrac{c}{a}
\end{align*}
$$
解と係数の関係の左辺は基本対称式なので、基本対称式で表せれば係数 $${a, b, c}$$ で表すことができる。では前回の復習として、そのときのスタートとなる式は何だったっけ」
「2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の2つの解を $${\alpha, \beta}$$ としたとき、$${\alpha+\beta}$$ と $${\alpha-\beta}$$ の和、および差を $${2}$$ で割った
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta)+(\alpha-\beta)}{2}\\
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta)-(\alpha-\beta)}{2}
\end{align*}
$$
という式です」
即答する小学5年生の森田君。
「そうだね。上式が $${\alpha}$$ 、下式が $${\beta}$$ となる。$${\alpha+\beta}$$ と $${\alpha-\beta}$$ を連立させたんだね。
すると、前回やったので具体的な計算は省略するけど、$${\alpha+\beta}$$ と $${\alpha-\beta}$$ は
$$
\begin{align*}
\begin{cases}
\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}\\
\\
\alpha-\beta=\pm\sqrt{\left(\dfrac{b}{a}\right)^2-4\cdot\dfrac{c}{a}}
\end{cases}
\end{align*}
$$
と2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の係数を用いて表せるので、それらを
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta)+(\alpha-\beta)}{2}\\
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta)-(\alpha-\beta)}{2}
\end{align*}
$$
の右辺の、$${\alpha+\beta}$$ と $${\alpha-\beta}$$ に代入することによって、やがて
$$
\begin{align*}
x&=\dfrac{-\dfrac{b}{a}\pm\sqrt{\left(\dfrac{b}{a}\right)^2-4\cdot\dfrac{c}{a}}}{2}
\end{align*}
$$
という2次方程式の解の公式が得られるんだったね。これを変形していくと、教科書に出てくる
$$
x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
$$
を得ることができた。さて $${\alpha+\beta}$$ は対称式なので、$${\alpha}$$ と $${\beta}$$ を入れ替えても式は変わらない。今後この $${\alpha}$$ と $${\beta}$$ の入れ替えのことを『置換』という言葉で表すことにしよう。つまり『$${\alpha+\beta}$$ は対称式なので $${\alpha}$$ と $${\beta}$$ の置換によって式は変わらない』という言い回しをする。
そこで新しい見方として解の入れ替え、つまり『解の置換』という見方を勉強しよう(注)追記。これは3次方程式の解の公式を『対称式』という観点で導出するときに鍵となる考え方なんだ。
ではまず2次方程式の2つの解 $${\alpha}$$ と $${\beta}$$ の置換の表記を、次のように定義する。2つの解の置換には次の2つのケースがあるよ」
<$${\boldsymbol{\alpha}}$$ と $${\boldsymbol{\beta}}$$ の置換>
➀ $${\alpha}$$ を $${\alpha}$$ に、$${\beta}$$ を $${\beta}$$ にと、そのままで変わらない置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow \alpha\\
\beta\longrightarrow \beta
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\alpha & \beta
\end{pmatrix}
$$
と表す。何も変わらない場合も置換に含めるよ。これは「恒に等しい置換」という意味で『恒等置換』という。そしてもう1つ
② $${\alpha}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\alpha}$$ に入れ替える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow \beta\\
\beta\longrightarrow \alpha
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\beta & \alpha\
\end{pmatrix}
$$
と表す。( )の中の解は、上から下へ置換されると考えればいい。ここで、$${\alpha}$$ と $${\beta}$$ の置換はこの2つ
$$
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\alpha & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{10pt}と\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\beta & \alpha\
\end{pmatrix}
$$
のみで、他には無いことに注意しよう。すると $${\alpha-\beta}$$ は対称式ではないので
$$
\begin{align*}
&➀
\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\alpha & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\alpha-\beta \longrightarrow \alpha-\beta\\
&②
\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\beta & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\alpha-\beta \longrightarrow \beta-\alpha
\end{align*}
$$
と、➀の恒等置換では変化しないが、②では変化する。しかし2乗した $${(\alpha-\beta)^2}$$ を考えると
$$
\begin{alignat*}{2}
&➀では & (\alpha-\beta)^2 \longrightarrow &(\alpha-\beta)^2\\
&②では & (\alpha-\beta)^2 \longrightarrow &(\beta-\alpha)^2\\
& & =&\{-(\alpha-\beta)\}^2\\
& & =&(\alpha-\beta)^2
\end{alignat*}
$$
より
$$
\begin{rcases}
➀\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\alpha & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
②\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta\\
\beta & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\end{rcases}
\hspace{10pt}
\begin{align*}
&では\\
&(\alpha-\beta)^2 \longrightarrow (\alpha-\beta)^2
\end{align*}
$$
となり、どちらの置換でも変化しない。$${-1}$$ を2乗すると $${+1}$$ となることから、対称式でない $${\alpha-\beta}$$ は、2乗すると $${(\alpha-\beta)^2}$$ となり対称式になるんだね。このことを利用して前回の授業で解の公式を導いた。この『解の置換』が、2次方程式の解の公式を導くための鍵となったんだね。
以上を踏まえ、『解の置換』という観点で3次方程式の解の公式を導いてみようと思う。まず復習として、以前3次方程式の解の公式を導いたとき、一般式 $${a x^{3}+b x^{2}+c x+d=0}$$ を、2乗の項 $${y^2}$$ の無い $${y^{3}+p y+q=0}$$ に変換する方法をやったね。この方法を研究した17~18世紀のドイツの数学者チルンハウスにちなんで、この変換を『チルンハウス変換』と言うんだけど、そこまでは前と同じ計算を行うよ。では森田君やってみようか」
「わかりました」と森田君はノートに向かった。
<チルンハウス変換(復習)>
「3次方程式は一般に $${a x^{3}+b x^{2}+c x+d=0}$$ と表せます。そこで、まず両辺を $${a(\ne 0)}$$ で割って $${x^3}$$ の係数を 1 にします。
$$
x^{3}+\dfrac{b}{a} x^{2}+\dfrac{c}{a} x+\dfrac{d}{a}=0
$$
この式に $${x=y-\dfrac{b}{3 a}}$$ を代入すると
$$
\underline{\left(y-\dfrac{b}{3a}\right)^{3}}+\dfrac{b}{a}\underline{\underline{\left(y-\dfrac{b}{3 a}\right)^{2}}}+\dfrac{c}{a}\left(y-\dfrac{b}{3 a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
$$
すると一重線部の $${\left(y-\dfrac{b}{3a}\right)^3}$$ 部分は、高校で習う3乗の展開公式
$$
(a-b)^{3}=a^{3}-3 a^{2} b+3 a b^{2}-b^{3}
$$
を使って、$${a=y, b=\dfrac{b}{3a}}$$ として展開すればいいので
$$
\begin{aligned}
\left(y-\frac{b}{3 a}\right)^{3} &=y^{3}-3 \cdot y^{2} \cdot\left(\frac{b}{3 a}\right)+3 \cdot y \cdot\left(\frac{b}{3 a}\right)^{2}-\left(\frac{b}{3 a}\right)^{3} \\
&=y^{3}-3 y^{2} \cdot \frac{b}{3 a}+3 y \cdot \frac{b^{2}}{9 a^{2}}-\frac{b^{3}}{27 a^{3}} \\
&=y^{3}-\frac{b}{a} y^{2}+\frac{b^{2}}{3 a^{2}} y-\frac{b^{3}}{27 a^{3}} \\
&=y^{3}-\frac{b}{a} y^{2}+\frac{1}{3} \cdot \frac{b^{2}}{a^{2}} y-\frac{1}{27} \cdot \frac{b^{3}}{a^{3}} \\
&=y^{3}-\frac{b}{a} y^{2}+\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)^{2} y-\frac{1}{27}\left(\frac{b}{a}\right)^{3}\cdots(*1)
\end{aligned}
$$
また二重線部の $${\left(y-\dfrac{b}{3a}\right)^2}$$ 部分は、2乗の展開公式
$$
(a-b)^{2}=a^{2}-2 a b+b^{2}
$$
を使って、$${a=y, b=\dfrac{b}{3 a}}$$ として展開すればいいので
$$
\begin{aligned}
\left(y-\dfrac{b}{3a}\right)^{2} &=y^{2}-2\cdot y\cdot\frac{b}{3 a}+\left(\dfrac{b}{3a}\right)^{2}\\
&=y^{2}-\dfrac{2 b}{3a} y+\dfrac{b^{2}}{9a^{2}}\\
&=y^{2}-\dfrac{2}{3}\cdot\dfrac{b}{a}y+\dfrac{1}{9}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}\cdots(*2)
\end{aligned}
$$
よって
$$
\underline{\left(y-\dfrac{b}{3a}\right)^{3}}
+\dfrac{b}{a}\underline{\underline{\left(y-\dfrac{b}{3 a}\right)^{2}}}
+\dfrac{c}{a}\left(y-\dfrac{b}{3 a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
$$
の一重線部に $${(*1)}$$、二重線部に $${(*2)}$$ を代入して
$$
\begin{align*}
y^{3}&-\dfrac{b}{a}y^{2}+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}y-\dfrac{1}{27}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}\\
&+\dfrac{b}{a}\left\{y^{2}-\dfrac{2}{3} \cdot \dfrac{b}{a} y
+\dfrac{1}{9}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}\right\}+\dfrac{c}{a}\left(y-\dfrac{b}{3 a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
\end{align*}
$$
さらに展開して
$$
\begin{align*}
y^{3}&-\dfrac{b}{a} y^{2}+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2} y-\dfrac{1}{27}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}\\
&+\dfrac{b}{a} y^{2}-\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2} y+\dfrac{1}{9}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}
+\dfrac{c}{a} y-\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)\left(\dfrac{c}{a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
\end{align*}
$$
$${y}$$ の次数の大きい順 に並べ替えて
$$
\begin{align*}
y^{3}&-\bcancel{\dfrac{b}{a}y^{2}}+\bcancel{\dfrac{b}{a}y^{2}}+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}y-\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}y+\dfrac{c}{a}y\\
&+\dfrac{1}{9}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}-\dfrac{1}{27}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}-\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)\left(\dfrac{c}{a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
\end{align*}
$$
すると $${y^{2}}$$ の項がうまく消えて
$$
\begin{align*}
y^{3}&+\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2}y-\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{2} y+\dfrac{c}{a}y\\
&+\dfrac{1}{9}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}-\dfrac{1}{27}\left(\dfrac{b}{a}\right)^{3}-\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{b}{a}\right)\left(\dfrac{c}{a}\right)+\dfrac{d}{a}=0
\end{align*}
$$
$${y}$$ の項を同類項でまとめつつ、式全体を整理すると
$$
\begin{align*}
y^{3}&+\left\{\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)^{2}y-\frac{2}{3}\left(\frac{b}{a}\right)^{2}+\frac{c}{a}\right\}y\\
&+\frac{3}{27}\left(\frac{b}{a}\right)^{3}-\frac{1}{27}\left(\frac{b}{a}\right)^{3}-\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)\left(\frac{c}{a}\right)+\frac{d}{a}=0\\
y^{3}&+\left\{\underline{-\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)^{2}+\frac{c}{a}}\right\}y\\
&+\underline{\underline{\frac{2}{27}\left(\frac{b}{a}\right)^{3}-\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)\left(\frac{c}{a}\right)+\dfrac{d}{a}}}=0
\end{align*}
$$
ここで、この式の一重線部を $${p}$$ 、二重線部を $${q}$$ とおきます。つまり
$$
\begin{align*}
-\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)^{2}+\frac{c}{a}&=p\\
\frac{2}{27}\left(\frac{b}{a}\right)^{3}-\frac{1}{3}\left(\frac{b}{a}\right)\left(\frac{c}{a}\right)+\frac{d}{a}&=q
\end{align*}
$$
とおくと
$$
y^{3}+p y+q=0
$$
となり、これで『チルンハウス変換』、$${y^{2}}$$ の項の無い新しい3次方程式ができました。 後はこの 3次方程式を解いて $${y}$$ を求めれば、それを $${x=y-\dfrac{b}{3a}}$$ に代入して $${x}$$ を求めることができます」
「よくできました。前回はここで $${y=s+t}$$ と置き、$${s, t}$$ を具体的に求めることによって $${y}$$ が3通りに決定し、そこから解の公式を導き出すことができたんだね。
これは『カルダノの方法』または『カルダノの公式』といって、3次方程式の一般的解法が発見された時の最初の方法なんだ。カルダノは16世紀のイタリアの数学者で、3次方程式の一般的解法を最初に”発表”した人物。しかし発表ではなく最初に”発見”したのは同じく16世紀のイタリアの数学者タルタリアという人物で、自分も3次方程式の解の公式を研究していたカルダノは、タルタリアに教えをこい、誰にも話さないという約束でタルタリアから聞いたその方法を自分の書物として発表してしまい論争となったという逸話が残っている。よってそのタルタリアに敬意を表し、3次方程式の解の公式を『タルタリア・カルダノの公式』と呼ばれることもあるよ。
さて、ここからは、その $${y=s+t}$$ と置く方法ではなく、『対称式』と『解の置換』を利用した、より発展的な方法で3次方程式の解の公式を導いていくことにしよう。5次以上の方程式に解の公式が存在しないことの証明においては、これからやる新しい方法が重要になるよ。
ここで、いきなりだが次の3つの式を考えよう。$${y^{3}+py+q=0}$$ の解を $${\alpha, \beta, \gamma}$$ として、次の3つの式を考える。
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
\end{align*}
$$
この3つの式は『ラグランジュ・リゾルベント』と呼ばれ、ラグランジュという18世紀のフランスの数学者が、この式を用いて最初に解の公式を研究したのでこう呼ばれる。リゾルベントとは分解式という意味なので『ラグランジュの分解式』とも呼ばれるよ。
さて、これから $${y^{3}+py+q=0}$$ の解 $${\alpha, \beta, \gamma}$$ を求めていこう。これは、先ほどのラグランジュ・リゾルベント
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
\end{align*}
$$
を組み合わせることによって、つまり連立させることによって求めることができるんだ。
これらの式は、1つ目の $${\alpha+\beta+\gamma}$$ は3変数の基本対称式、2つ目は $${\beta}$$ の係数は $${\omega}$$ で $${\gamma}$$ の係数は $${\omega^2}$$、3つ目は $${\beta}$$ の係数は $${\omega^2}$$ で $${\gamma}$$ の係数は $${\omega}$$ と、2つ目と3つ目では $${\beta}$$ と $${\gamma}$$ の係数が入れ替わることに注意しよう。
$$
\begin{alignat*}{2}
\alpha+&\omega\beta+& &\omega^2\gamma\\
{\small 入れ替わる}\hspace{3pt}&\hspace{-2pt}\updownarrow & &\hspace{-2pt}\updownarrow {\small入れ替わる}\\
\alpha+&\omega^2\beta+& &\omega\gamma
\end{alignat*}
$$
では、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ を求める前に、前にやった $${\omega}$$ について復習しておこうか。計算するときにこの $${\omega}$$ の性質を頻繁に使うので、しっかり復習しておこう」
<$${\boldsymbol{\omega}}$$ について(復習)>
「それでは森田君 $${\omega}$$ とは何だったかな?」
「$${1}$$ の3乗恨、つまり3乗して $${1}$$ になる数のうち、虚数で表されるものの内のどちらか一方です」
「そうそう、しっかり覚えているね。虚数とは $${i^2=-1}$$、つまり2乗して $${-1}$$ になる $${i}$$ を含む数のこと。例えば $${2i}$$ や $${3-5i}$$ のような数だね。では森田君、具体的に $${\omega}$$ の値を出せるかな?」
「はい。それには3乗して $${1}$$ になる数を求めればいいので $${x^3=1}$$ を解きます。まず $${1}$$ を左辺に移項して
$$
\begin{align*}
x^3-1=0
\end{align*}
$$
ここで $${a^3-b^3=(a-b)(a^2+ab+b^2)}$$ の因数分解公式を適用します。
$${x^3-1=0}$$ は $${x^3-1^3=0}$$ とみなせるので、この因数分解公式について $${a=x, b=1}$$ として
$$
\begin{align*}
(x-1)(x^2+x\cdot1+1^2)&=0\\
(x-1)(x^2+x+1)&=0
\end{align*}
$$
よって、各々のカッコの中身について
$$
x-1=0\hspace{10pt}または\hspace{10pt}x^2+x+1=0
$$
すると、$${x-1=0}$$ の方は $${x=1}$$ とすぐに求まり、$${x^2+x+1=0}$$ の方は、2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の解の公式
$$
\begin{align*}
x=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}
\end{align*}
$$
について、$${a=1, b=1, c=1}$$ として
$$
\begin{align*}
x&=\dfrac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}\\
&=\dfrac{-1\pm\sqrt{1^2-4\cdot1\cdot1}}{2\cdot1}\\
&=\dfrac{-1\pm\sqrt{1-4}}{2}\\
&=\dfrac{-1\pm\sqrt{-3}}{2}\\
&=\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}\\
&=\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}
\end{align*}
$$
となります。
ただし、途中で $${\sqrt{-3}=\sqrt{3}i}$$ を使いました。$${\sqrt{-3}}$$ は2乗して $${-3}$$ となる数です。
$${(\sqrt{-3})^2=-3}$$
また
$${(\sqrt{3}i)^2=\sqrt{3}^2\cdot i^2=3\cdot(-1)=-3}$$
より、$${\sqrt{3}i}$$ も2乗して $${-3}$$ となるので、$${i}$$ を用いて
$${\sqrt{-3}=\sqrt{3}i}$$
と表すことが可能です。
$${(\sqrt{-3})^2=-3}$$
$${\hspace{25pt}\updownarrow \Rightarrow \sqrt{-3}=\sqrt{3}i}$$ と表せる
$${(\sqrt{3}i)^2=-3}$$
すると、この $${\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}}$$ が虚数 $${\omega}$$ なので
$$
\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\hspace{10pt}または\hspace{10pt}\omega=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}
$$
つまり、$${\omega}$$ は $${\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}}$$ か $${\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}}$$ のどちらか一方となります」
「そうだね。プラスマイナスの2つの虚数解が出てくるが、この2つの解は対等なので、どちらを $${\omega}$$ としてもいいんだ。では仮に $${\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}}$$ と置くと、$${x^3=1}$$ の解は $${\omega}$$ を使ってどう表せるかな?」
「$${\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}}$$ を2乗すると
$$
\begin{align*}
\omega^2&=\left(\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\right)^2\\
&=\dfrac{(-1+\sqrt{3}i)^2}{2^2}\\
&=\dfrac{(-1)^2+2\cdot(-1)\cdot\sqrt{3}i+(\sqrt{3}i)^2}{4}\\
&=\dfrac{1-2\sqrt{3}i+(\sqrt{3})^2i^2}{4}\\
&=\dfrac{1-2\sqrt{3}i+3\cdot(-1)}{4}\\
&=\dfrac{1-2\sqrt{3}i-3}{4}\\
&=\dfrac{-2-2\sqrt{3}i}{4}\\
&=\dfrac{2(-1-\sqrt{3}i)}{4}\\
&=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}
\end{align*}
$$
より、もう一方の解が得られます。仮に $${\omega=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}}$$ とおいても、同様な計算で
$$
\begin{align*}
\omega^2&=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}
\end{align*}
$$
と、もう一方の解が得られます。つまり
$$
\begin{align*}
&\omega=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}\hspace{10pt}のとき\hspace{10pt}\omega^2=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\\
&\omega=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}\hspace{10pt}のとき\hspace{10pt}\omega^2=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}
\end{align*}
$$
となるので、$${x^3=1}$$ の解は
$$
\begin{align*}
x=1, \omega, \omega^2
\end{align*}
$$
とまとめることができます」
「大変よくできました。2つある虚数解のどちらか一方を $${\omega}$$ とおくと、もう1つの虚数解は必ず $${\omega^2}$$ と2乗で表せる、ということなんだね。
さて、その $${\omega}$$ について2つの重要な性質がある。まず $${\omega}$$ は $${x^3=1}$$ の解であるので、この式に $${x=\omega}$$ を代入して
$$
\omega^3=1
$$
さらに、先ほどやった $${x^3-1=0}$$ は
$$
(x-1)(x^2+x+1)=0
$$
と因数分解されることにより、$${\omega}$$ は $${x^2+x+1=0}$$ の解であったので、これにも $${x=\omega}$$ を代入して
$$
\omega^2+\omega+1=0
$$
以上をまとめて
<$${\boldsymbol{\omega}}$$ についての重要性質>
$$
\begin{align*}
\omega^3&=1\\
\omega^2+\omega+1&=0
\end{align*}
$$
この2つの等式は、$${\omega}$$ を使うときに必ず出てくる等式なので、しっかり覚えておこう。これからどんどん使うことになるよ。
補足として他にも、$${\omega^3=1}$$ を用いることによって
$$
\begin{align*}
\omega^4&=\omega^3\cdot\omega=1\cdot\omega=\omega\\
\omega^5&=\omega^3\cdot\omega^2=1\cdot\omega^2=\omega^2\\
\omega^6&=(\omega^3)^2=1^2=1
\end{align*}
$$
という計算もよく使うので覚えておこう。一応確認しておくけど、指数法則 $${a^{m+n}=a^ma^n,\hspace{5pt}(a^m)^n=a^{mn}}$$ は大丈夫だね。当たり前のように使っているよ。
ではここで、先ほど述べたラグランジュ・リゾルベント
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
\end{align*}
$$
を使って $${\alpha, \beta, \gamma}$$ を求めてみよう。
<ラグランジュ・リゾルベントを使って $${\boldsymbol{\alpha, \beta, \gamma}}$$ を求める>
まず $${\alpha}$$ だがこれは簡単。 この3つの式をそのまま全部足して3で割ると
$$
\begin{align*}
=&\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\alpha+\alpha+\beta+\omega\beta+\omega^2\beta+\gamma+\omega^2\gamma+\omega\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\alpha+\alpha+(1+\omega+\omega^2)\beta+(1+\omega^2+\omega)\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\alpha+\alpha+(1+\omega+\omega^2)\beta+(1+\omega+\omega^2)\gamma}{3}\\
=&\dfrac{3\alpha+0\cdot\beta+0\cdot\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\bcancel{3}\alpha}{\bcancel{3}}\\
=&\alpha
\end{align*}
$$
左右入れ替えて
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}
\end{align*}
$$
さっき証明した $${\omega}$$ の性質 $${\omega^2+\omega+1=0}$$、つまり $${1+\omega+\omega^2=0}$$ を最後に使っているよ。それによって $${\beta}$$ と $${\gamma}$$ の項がうまく消えるようになっているんだね。
次に $${\beta}$$ を求めよう。$${\beta}$$ は、先ほどのラグランジュ・リゾルベントについて、2つ目の式に $${\omega}$$、3つ目の式に $${\omega^2}$$ をかけてから、つまり
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
\omega(&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)\\
\omega^2(&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)
\end{align*}
$$
としてから、全部を足して3で割ると
$$
\begin{align*}
&\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega\alpha+\omega^2\beta+\omega^3\gamma+\omega^2\alpha+\omega^4\beta+\omega^3\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega\alpha+\omega^2\beta+1\cdot\gamma+\omega^2\alpha+\omega\beta+1\cdot\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma+\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\omega\alpha+\omega^2\alpha+\beta+\omega\beta+\omega^2\beta+\gamma+\gamma+\gamma}{3}\\
=&\dfrac{(1+\omega+\omega^2)\alpha+(1+\omega+\omega^2)\beta+3\gamma}{3}\\
=&\dfrac{0\cdot\alpha+0\cdot\beta+3\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\bcancel{3}\gamma}{\bcancel{3}}\\
=&\gamma
\end{align*}
$$
左右入れ替えて
$$
\begin{align*}
\gamma&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}
\end{align*}
$$
やはりここでも $${1+\omega+\omega^2=0}$$ を使うことによって、$${\alpha}$$ と $${\beta}$$ の項がうまく消えるようになっている。$${\omega^3=1}$$ も使っているよ。
そして最後は $${\beta}$$ だね。$${\beta}$$ は先ほどのラグランジュ・リゾルベントについて、2つ目の式に $${\omega^2}$$、3つ目の式に $${\omega}$$ をかけてから、つまり
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
\omega^2(&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)\\
\omega(&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)
\end{align*}
$$
としてから、全部を足して3で割る。$${\gamma}$$ のときとは、$${\omega}$$ と $${\omega^2}$$ の配置が逆になるよ。
$$
\begin{align*}
&\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma^2)+\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega^2\alpha+\omega^3\beta+\omega^4\gamma+\omega\alpha+\omega^3\beta+\omega^2\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega^2\alpha+1\cdot\beta+\omega\gamma+\omega\alpha+1\cdot\beta+\omega^2\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\beta+\gamma+\omega^2\alpha+\beta+\omega\gamma+\omega\alpha+\beta+\omega^2\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\alpha+\omega\alpha+\omega^2\alpha+\beta+\beta+\beta+\gamma+\omega\gamma+\omega^2\gamma}{3}\\
=&\dfrac{(1+\omega+\omega^2)\alpha+3\beta+(1+\omega+\omega^2)\gamma}{3}\\
=&\dfrac{0\cdot\alpha+3\beta+0\cdot\gamma}{3}\\
=&\dfrac{\bcancel{3}\beta}{\bcancel{3}}\\
=&\beta
\end{align*}
$$
左右入れ替えて
$$
\begin{align*}
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}
\end{align*}
$$
と、これで $${\alpha, \beta, \gamma}$$ すべてを求めることができた。 $${\omega}$$ の性質 $${1+\omega+\omega^2=0}$$ をうまく利用したね。では結果をまとめておこう。
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
\gamma&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}
\end{align*}
$$
これらは”恒に成り立つ等式”なので『恒等式』となる。常に成り立つ等式のことを恒等式と言ったね。すると森田君、この恒等式のパーツをなすラグランジュ・リゾルベントの3つの値
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
\end{align*}
$$
をすべて3次方程式の係数を用いて表すことができれば、理論的には3次方程式の解の公式が作れるね。1つ目は3次方程式の解と係数の関係から $${\alpha+\beta+\gamma=0}$$ とすぐに分かるんだけど、問題は2つ目と3つ目の式。この2つ目と3つ目を3次方程式の係数で表すことがこれからのメインテーマとなるよ。実は同じようなことを2次方程式でもやっているんだ。分かるかな?」
「はい。2次方程式の2つの解を $${\alpha, \beta}$$ として
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta\\
&\alpha-\beta
\end{align*}
$$
というものを考え、これを足して $${2}$$ で割ったのが $${\alpha}$$、引いて $${2}$$ で割ったのが $${\beta}$$ でした」
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta)+(\alpha-\beta)}{2}\\
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta)-(\alpha-\beta)}{2}
\end{align*}
$$
「そうだね。前回の授業でやったけど、2次方程式の解の公式を対称式の観点で求めるときに、この
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta\\
&\alpha-\beta
\end{align*}
$$
が重要な式になってくるんだね。それでこの式のことを『2次方程式のラグランジュ・リゾルベント』というよ。$${\alpha+\beta}$$ は、解と係数の関係から $${-\dfrac{b}{a}}$$ とすぐに分かるけど、問題は $${\alpha-\beta}$$ の方だった。これは対称式ではない。しかし、前回の授業でやったように2乗した $${(\alpha-\beta)^2}$$ は対称式となるので、それを利用することによって2次方程式の解の公式が実現できたんだね。それでは 『3次方程式のラグランジュ・リゾルベント』と合わせてまとめておこう」
<2次方程式のラグランジュ・リゾルベント>
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta\\
&\alpha-\beta
\end{align*}
$$
<3次方程式のラグランジュ・リゾルベント>
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
\end{align*}
$$
この『2次方程式のラグランジュ・リゾルベント』は、『3次方程式のラグランジュ・リゾルベント』の拡張になっているんだ。森田君わかるかな」
「うーん・・・、そうか!」
森田君は少し考え、何かに気付いたような表情を見せた。
「対称式 $${\alpha+\beta}$$ の相手として、$${x^2=1}$$ の解、つまり $${1}$$ の2乗恨 $${\pm1}$$ のうち、2乗して初めて $${1}$$ になる数 $${-1}$$ を $${\beta}$$ の係数に配置すると
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta\\
&\alpha+(-1)\cdot\beta=\alpha-\beta
\end{align*}
$$
となり、『2次方程式のラグランジュ・リゾルベント』が得られます。すると上式の $${\alpha+\beta}$$ は対称式でしたが、下式の $${\alpha-\beta}$$ は対称式ではありません。しかし2乗すると対称式になりました。『3次方程式のラグランジュ・リゾルベント』は
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma
\end{align*}
$$
ですが、この場合は対称式 $${\alpha+\beta+\gamma}$$ の相手として、$${x^3=1}$$ の解、つまり $${1}$$ の3乗恨 $${1, \omega, \omega^2}$$ のうち、3乗して初めて $${1}$$ になる数 $${\omega, \omega^2}$$ を、$${\beta}$$ の係数と $${\gamma}$$ の係数に、順序を入れ変えて振り分けたのが2つ目と3つ目の式です。あっ!」
森田君は何かに気付いた。
「すると最初の式 $${\alpha+\beta+\gamma}$$ は対称式ですが、2つ目と3つ目は対称式ではありません。ということは、この2つ目と3つ目の式を2乗、いや $${\omega^3=1}$$ という性質があるので3乗するとラグランジュ・リゾルベントはすべて係数で求まりそう・・・」
「森田君、ちょっと待った!」
核心を突きそうだと感じた竹村は、一旦発言を止めた。
「そうそう。実は3次方程式のラグランジュ・リゾルベントはすべて3次方程式の係数を用いて表すことができるんだ。そのことを調べるために、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ の置換を3次方程式のラグランジュ・リゾルベントに具体的に作用させてみよう。このことが3次方程式の解の公式を導くための鍵となるよ。まずはそのための準備として、さっき2つの解でやったように、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ の3つの解の置換の表記を、次のように定義する」
<$${\boldsymbol{\alpha, \beta, \gamma}}$$ の置換>
➀ $${\alpha}$$ を $${\alpha}$$ に、$${\beta}$$ を $${\beta}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\gamma}$$ に、つまりそのままで変わらない置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow \alpha\\
\beta\longrightarrow \beta\\
\gamma\longrightarrow \gamma
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは変化しないので『恒等置換』だね。
② $${\alpha}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\alpha}$$ に置き換える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow\gamma\\
\beta\longrightarrow\alpha\\
\gamma\longrightarrow\beta
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは$${\alpha\rightarrow\gamma\rightarrow\beta\rightarrow\alpha}$$ と巡回する置換なので『巡回置換』というよ。
③ $${\alpha}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\alpha}$$ に置き換える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow \beta\\
\beta\longrightarrow \gamma\\
\gamma\longrightarrow \alpha
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは $${\alpha\rightarrow\beta\rightarrow\gamma\rightarrow\alpha}$$ と巡回する置換なので、これも『巡回置換』となる。
④ $${\alpha}$$ はそのままで、$${\beta}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\beta}$$ に置き換える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow\alpha\\
\beta\longrightarrow\gamma\\
\gamma\longrightarrow\beta
\end{align*}
\hspace{14pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは $${\beta}$$ と $${\gamma}$$ を入れ替える置換だね。
➄ $${\beta}$$ はそのままで、$${\alpha}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\alpha}$$ に置き換える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow\gamma\\
\beta\longrightarrow\beta\\
\gamma\longrightarrow\alpha
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは $${\alpha}$$ と $${\gamma}$$ を入れ替える置換。
⑥ $${\gamma}$$ はそのままで、$${\alpha}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\alpha}$$ に置き換える置換、すなわち
$$
\begin{align*}
\alpha\longrightarrow\beta\\
\beta\longrightarrow\alpha\\
\gamma\longrightarrow\gamma
\end{align*}
\hspace{12pt}を\hspace{10pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}
$$
と表す。これは $${\alpha}$$ と $${\beta}$$ 入れ替える置換。( )の中の解は、上から下へ置換されると考えればいいね。
さて、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ の置換は上記➀~➅の6通りがすべてで、他には無いことに注意しよう。このことは、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ の置換の数は、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ を1列に並べる並べ方と同じ数になることからも分かる。実際に辞書式順序で並べると
$$
\begin{align*}
&\alpha \beta \gamma \rightarrow ➀のケース\\
&\alpha \gamma \beta \rightarrow ④のケース\\
&\beta \alpha \gamma \rightarrow ➅のケース\\
&\beta \gamma \alpha \rightarrow ③のケース\\
&\gamma \alpha \beta \rightarrow ②のケース\\
&\gamma \beta \alpha \rightarrow ➄のケース
\end{align*}
$$
より、やはり6通りだね。ここで、次のように『3次方程式のラグランジュ・リゾルベント』の2つ目の式を $${A}$$、3つ目の式を $${B}$$ と置こう。
$$
\begin{align*}
A&=\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
B&=\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma
\end{align*}
$$
それでは、上の置換 ➀~➅ において、$${A}$$ と $${B}$$ がどのように変化するのかを見ていくことにする。そのことが、$${A, B}$$ を3次方程式の係数で表すための道しるべとなるよ。
<3つの解の置換による『ラグランジュ・リゾルベント』の変化>
<➀のとき>
$${\alpha}$$ を $${\alpha}$$ に、$${\beta}$$ を $${\beta}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\gamma}$$ に変換すると
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma=A\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma=B\\
\end{align*}
$$
より➀の置換では、$${A}$$ は $${A}$$ のまま、$${B}$$ は $${B}$$ のままで変わらない。恒等置換なので変わらないのは当たり前だね。
<②のとき>
$${\alpha}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\alpha}$$ に置き換えると
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\gamma+\omega\alpha+\omega^2\beta\\
=\,&\underset{1}{\underline{\omega^3}}\,\gamma+\omega\alpha+\omega^2\beta\\
=\,&\omega(\omega^2\gamma+\alpha+\omega\beta)\\
=\,&\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)=\omega A\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\gamma+\omega^2\alpha+\omega\beta\\
=\,&\underset{1}{\underline{\omega^3}}\,\gamma+\omega^2\alpha+\underset{1}{\underline{\omega^3}}\cdot\omega\beta\\
=\,&\omega^3\gamma+\omega^2\alpha+\omega^4\beta\\
=\,&\omega^2(\omega\gamma+\alpha+\omega^2\beta)\\
=\,&\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)=\omega^2B\\
\end{align*}
$$
よって②の置換では、$${A}$$ は $${\omega A}$$ に、$${B}$$ は $${\omega^2B}$$ に変化する。
ところどころで $${\omega^3=1}$$ をうまく使っていることに注意しよう。$${A}$$では $${\gamma}$$ に $${\omega^3}$$ をかけ、 $${B}$$では $${\gamma}$$ と $${\omega\beta}$$ の2か所に $${\omega^3}$$ をかけているけど、 $${\omega^3}$$ は $${1}$$ なので掛けても式の値は変わらないからね。また $${A}$$ では最後に $${\omega}$$ でくくって $${\omega A}$$ を導き、$${B}$$ では最後に $${\omega^2}$$ でくくって$${\omega^2B}$$ を導いていることにも注意。くくったときに、$${\alpha}$$ の係数が $${1}$$ なるようにしているのがポイント。
<③のとき>
$${\alpha}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\alpha}$$ に置き換えると
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\beta+\omega\gamma+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^3\beta+\omega^3\cdot\omega\gamma+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^3\beta+\omega^4\gamma+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^2(\omega\beta+\omega^2\gamma+\alpha)\\
=\,&\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)=\omega^2A\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\beta+\omega^2\gamma+\omega\alpha\\
=\,&\omega^3\beta+\omega^2\gamma+\omega\alpha\\
=\,&\omega(\omega^2\beta+\omega\gamma+\alpha)\\
=\,&\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)=\omega B\\
\end{align*}
$$
よって③の置換では、$${A}$$ は $${\omega^2 A}$$ に、$${B}$$ は $${\omega B}$$ に変化する。
ここでもところどころで $${\omega^3=1}$$ を使っていることに注意。また $${A}$$ では最後に $${\omega^2}$$ でくくって $${\omega^2A}$$ を導き、$${B}$$ では最後に $${\omega}$$ でくくって$${\omega B}$$ を導いていることにも注意。ここでもくくったときに、$${\alpha}$$ の係数が $${1}$$ なるようにしているね。
<④のとき>
$${\alpha}$$ はそのままで、$${\beta}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\gamma}$$ を $${\beta}$$ に置き換えると
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\alpha+\omega\gamma+\omega^2\beta\\
=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma=B\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\alpha+\omega^2\gamma+\omega\beta\\
=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma=A\\
\end{align*}
$$
よって④の置換では、$${A}$$ は $${B}$$ に、$${B}$$ は $${A}$$ に変化する。$${A}$$ と $${B}$$ が入れ替わるんだね。
<➄のとき>
$${\alpha}$$ を $${\gamma}$$ に、$${\beta}$$ はそのままで、$${\gamma}$$ を $${\alpha}$$ に置き換えると
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\gamma+\omega\beta+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^3\gamma+\omega^3\cdot\omega\beta+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^3\gamma+\omega^4\beta+\omega^2\alpha\\
=\,&\omega^2(\omega\gamma+\omega^2\beta+\alpha)\\
=\,&\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)=\omega^2B\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\gamma+\omega^2\beta+\omega\alpha\\
=\,&\omega^3\gamma+\omega^2\beta+\omega\alpha\\
=\,&\omega(\omega^2\gamma+\omega\beta+\alpha)\\
=\,&\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)=\omega A\\
\end{align*}
$$
よって➄の置換では、$${A}$$ は $${\omega^2B}$$ に、$${B}$$ は $${\omega A}$$ に変化する。
やはりところどころで $${\omega^3=1}$$ を使う。また $${A}$$ では最後に $${\omega^2}$$ でくくって $${\omega^2B}$$ を導き、$${B}$$ では最後に $${\omega}$$ でくくって$${\omega A}$$ を導いている。くくったときに $${\alpha}$$ の係数が $${1}$$ になるようにするのは先ほどと同じだね。
<➅のとき>
$${\alpha}$$ を $${\beta}$$ に、$${\beta}$$ を $${\alpha}$$ に、$${\gamma}$$ は変化させないと
$$
\begin{align*}
A=\,&\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\\
&\beta+\omega\alpha+\omega^2\gamma\\
=\,&\omega^3\beta+\omega\alpha+\omega^2\gamma\\
=\,&\omega(\omega^2\beta+\alpha+\omega\gamma)\\
=\,&\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)=\omega B\\
\end{align*}
$$
$$
\begin{align*}
B=\,&\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma\\
&\hspace{-2pt}\downarrow\hspace{24pt}\downarrow\hspace{20pt}\downarrow\\
&\beta+\omega^2\alpha+\omega\gamma\\
=\,&\omega^3\beta+\omega^2\alpha+\omega^3\cdot\omega\gamma\\
=\,&\omega^3\beta+\omega^2\alpha+\omega^4\gamma\\
=\,&\omega^2(\omega\beta+\alpha+\omega^2\gamma)\\
=\,&\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)=\omega^2A\\
\end{align*}
$$
よって⑥の置換では、$${A}$$ は $${\omega B}$$ に、$${B}$$ は $${\omega^2A}$$ に変化する。
$${\omega^3=1}$$ を使い、$${A}$$ では最後に $${\omega}$$ でくくって $${\omega B}$$ を、$${B}$$ では最後に $${\omega^2}$$ でくくって$${\omega^2 A}$$ を導いている。$${\alpha}$$ の係数は $${1}$$ だね。
以上をまとめると
$$
\hspace{-10pt}
\begin{align*}
&➀
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow A\\
B &\longrightarrow B
\end{align*}\\
&②
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega A\\
B &\longrightarrow \omega^2 B
\end{align*}\\
&③
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega^2 A\\
B &\longrightarrow \omega B
\end{align*}\\
&④
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow B\\
B &\longrightarrow A
\end{align*}\\
&➄
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega^2 B\\
B &\longrightarrow \omega A
\end{align*}\\
&➅
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega B\\
B &\longrightarrow \omega^2 A
\end{align*}
\end{align*}
$$
すると森田君がさっき指摘したように、$${A}$$, $${B}$$ は②~➅で変化しているので対称式ではない。対称式ならばすべての置換で変化してはならず、変わらないんだね。
ここで、この結果をじっと見てみよう。あることに気付くね。まず➀~③では $${A}$$, $${B}$$ は入れ替わらず、②と③で係数の $${\omega}$$ と $${\omega^2}$$ が入れ替わって現れる。④~➅では $${A, B}$$ はいずれも入れ替わり、➄と➅で係数の $${\omega}$$ と $${\omega^2}$$ が入れ替わって現れる。これをふまえると、$${A, B}$$ の置換後の積 $${AB}$$ は、$${\omega^3=1}$$ に注意すると
$$
\begin{alignat*}{2}
&➀では & AB \longrightarrow &AB\\
\\
&②では & AB \longrightarrow &\omega A\cdot\omega^2B\\
& & =&\omega^3AB\\
& & =&1\cdot AB=AB\\
\\
&③では & AB \longrightarrow &\omega^2A\cdot\omega B\\
& & =&\omega^3AB\\
& & =&1\cdot AB=AB\\
\\
&④では & AB \longrightarrow &BA=AB\\
\\
&➄では & AB\longrightarrow &\omega^2B\cdot\omega A\\
& & =&\omega^3AB\\
& & =&1\cdot AB=AB\\
\\
&➅では & AB \longrightarrow &\omega B\cdot\omega^2A\\
& & =&\omega^3AB\\
& & =&1\cdot AB=AB
\end{alignat*}
$$
となり、①~➅ すべての置換で $${AB}$$ は変化しないことがわかる。まとめると
$$
\begin{rcases}
➀\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
②\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
③\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
④\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➄\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➅\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}
\end{rcases}
\hspace{10pt}
では
\hspace{10pt}
AB \longrightarrow AB
$$
ということだね。どの変換でも $${AB}$$ は変わらない。つまり
$$
AB=(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)
$$
は、3変数 $${\alpha, \beta, \gamma}$$ についての対称式になっている、ということなんだ。定数の $${\omega}$$ が入っているので分かりにくいけど、$${AB}$$ は対称式なっている。$${A, B}$$ は単体では対称式ではないけど、その積である $${AB}$$ は対称式になるんだね。
実はもう一つ、$${A, B}$$ で構成される式で対称式になる式があるんだ。そこでまず、$${A^3}$$ と $${B^3}$$ が上の置換➀~➅においてどのように変化するのかを見ていこう。”3乗”というのが鍵となる。そのために、まずは先ほどやった $${A, B}$$ の置換を確認しておこう。
$$
\hspace{-10pt}
\begin{align*}
&➀
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow A\\
B &\longrightarrow B
\end{align*}\\
&②
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega A\\
B &\longrightarrow \omega^2 B
\end{align*}\\
&③
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega^2 A\\
B &\longrightarrow \omega B
\end{align*}\\
&④
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow B\\
B &\longrightarrow A
\end{align*}\\
&➄
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega^2 B\\
B &\longrightarrow \omega A
\end{align*}\\
&➅
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{7pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A &\longrightarrow \omega B\\
B &\longrightarrow \omega^2 A
\end{align*}
\end{align*}
$$
すると
$$
\begin{align*}
\omega^3&=1\\
\omega^6&=(\omega^3)^2=1^2=1
\end{align*}
$$
に注意すると、$${A^3}$$ と$${B^3}$$ の置換は
$$
\begin{align*}
&\begin{align*}
➀では &A^3\rightarrow A^3\\
&B^3\rightarrow B^3
\end{align*}\\
&\begin{alignat*}{2}
\\
&②では & A^3 \rightarrow&(\omega A)^3\\
& & =&\,\omega^3A^3\\
& & =&\,1\cdot A^3=A^3\\
& & B^3\rightarrow&(\omega^2 B)^3\\
& & =&\,\omega^6 B^3\\
& & =&\,1\cdot B^3=B^3
\end{alignat*}\\
\\
&\begin{alignat*}{2}
&③では & A^3\rightarrow&(\omega^2 A)^3\\
& & =&\,\omega^6A^3\\
& & =&\,1\cdot A^3=A^3\\
& & B^3\rightarrow&(\omega B)^3\\
& & =&\,\omega^3B^3\\
& & =&\,1\cdot B^3=B^3
\end{alignat*}\\
\\
&④では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow B^3\\
&B^3\rightarrow A^3
\end{align*}\\
\\
&\begin{alignat*}{2}
&➄では & A^3\rightarrow&(\omega^2 B)^3\\
& & =&\,\omega^6B^3\\
& & =&\,1\cdot B^3=B^3\\
& & B^3\rightarrow&(\omega A)^3\\
& & =&\,\omega^3A^3\\
& & =&\,1\cdot A^3=A^3
\end{alignat*}\\
\\
&\begin{alignat*}{2}
&⑥では & A^3\rightarrow&(\omega B)^3\\
& & =&\,\omega^3B^3\\
& & =&\,1\cdot B^3=B^3\\
& & B^3\rightarrow&(\omega^2 A)^3\\
& & =&\,\omega^6A^3\\
& & =&\,1\cdot A^3=A^3
\end{alignat*}
\end{align*}
$$
$$
\begin{alignat*}[2]
&➀では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow A^3\\
&B^3\rightarrow B^3
\end{align*}\\
\\
&②では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow(\omega A)^3=\omega^3A^3=1\cdot A^3=A^3\\
&B^3\rightarrow(\omega^2 B)^3=\omega^6 B^3=1\cdot B^3=B^3
\end{align*}\\
\\
&③では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow(\omega^2 A)^3=\omega^6A^3=1\cdot A^3=A^3\\
&B^3\rightarrow(\omega B)^3=\omega^3B^3=1\cdot B^3=B^3
\end{align*}\\
\\
&④では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow B^3\\
&B^3\rightarrow A^3
\end{align*}\\
\\
&➄では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow(\omega^2 B)^3=\omega^6B^3=1\cdot B^3=B^3\\
&B^3\rightarrow(\omega A)^3=\omega^3A^3=1\cdot A^3=A^3
\end{align*}\\
\\
&⑥では
\begin{align*}
&A^3\rightarrow(\omega B)^3=\omega^3B^3=1\cdot B^3=B^3\\
&B^3\rightarrow(\omega^2 A)^3=\omega^6A^3=1\cdot A^3=A^3
\end{align*}
\end{align*}
$$
となるので、まとめると
$$
\hspace{-10pt}
\begin{align*}
&➀
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow A^3\\
B^3 &\longrightarrow B^3
\end{align*}\\
&②
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow A^3\\
B^3 &\longrightarrow B^3
\end{align*}\\
&③
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow A^3\\
B^3 &\longrightarrow B^3\\
\end{align*}\\
&④
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow B^3\\
B^3 &\longrightarrow A^3
\end{align*}\\
&➄
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow B^3\\
B^3 &\longrightarrow A^3\\
\end{align*}\\
&➅
\hspace{6pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}
\hspace{8pt}
では
\hspace{12pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow B^3\\
B^3 &\longrightarrow A^3\\
\end{align*}
\end{align*}
$$
となる。ここで面白いのは、$${A^3, B^3}$$ の行き先は、①の恒等置換と②、③の巡回置換では、$${A^3, B^3}$$ はそのままで変化しない。
$$
\begin{rcases}
➀\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
②\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
③\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}
\end{rcases}
\hspace{8pt}では\hspace{8pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow A^3\\
B^3 &\longrightarrow B^3
\end{align*}
$$
一方④~➅のように、3つのうち2つだけを入れ替える置換だと $${A^3}$$ と $${B^3}$$ が入れ替わる、ということだね。
$$
\begin{rcases}
④\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➄\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➅\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}
\end{rcases}
\hspace{8pt}では\hspace{8pt}
\begin{align*}
A^3 &\longrightarrow B^3\\
B^3 &\longrightarrow A^3
\end{align*}
$$
「すると $${A^3+B^3}$$ は➀~➅の置換によってどう変化するかな?」
「変化しません」
「そうそう。①~③はそもそも $${A^3}$$ は $${A^3}$$、$${B^3}$$ は $${B^3}$$ なので、$${A^3+B^3}$$ はこのままで変化しない。④~➅のときは $${A^3}$$ と $${B^3}$$ が入れ替わるだけなので、入れ替わってもその和は $${A^3+B^3}$$ のままで変化しない。
$$
\begin{alignat*}{2}
&➀~③では & A^3+B^3 \longrightarrow &\,A^3+B^3\\
\\
&④~➅では & A^3+B^3 \longrightarrow &\,B^3+A^3\\
& & =&\,A^3+B^3
\end{alignat*}
$$
以上をまとめると
$$
\begin{rcases}
➀\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \beta & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
②\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \alpha & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
③\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \gamma & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
④\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\alpha & \gamma & \beta
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➄\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\gamma & \beta & \alpha
\end{pmatrix}\hspace{5pt}\\
\\
➅\hspace{5pt}
\begin{pmatrix}
\alpha & \beta & \gamma\\
\beta & \alpha & \gamma
\end{pmatrix}\hspace{5pt}
\end{rcases}
\hspace{10pt}
\begin{align*}
&では\\
&A^3+B^3 \longrightarrow A^3+B^3
\end{align*}
$$
となり、➀~➅のすべての置換について変化しないので
$$
\begin{align*}
A^3+B^3=(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)^3+(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)^3
\end{align*}
$$
は、3変数 $${\alpha, \beta, \gamma}$$ についての対称式になるということなんだね。ここで、今までの流れをおさらいしておこう。
<まとめ>
ラグランジュ・リゾルベントを
$$
\begin{align*}
A&=\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma\\
B&=\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma
\end{align*}
$$
とおくと $${A, B}$$ は対称式ではない。しかしそれを掛けた $${AB}$$ は対称式になる。また3乗した $${A^3, B^3}$$ は対称式ではない。しかしそれを足した$${A^3+B^3}$$ は対称式になるということなんだね。さて、今日の授業の結論だけど
$$
\begin{align*}
AB&=(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)\\
A^3+B^3&=(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)^3+(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)^3
\end{align*}
$$
は3変数 $${\alpha, \beta, \gamma}$$ についての対称式となるということ。すると『対称式の基本定理』~対称式は基本対称式の加減乗除で表せる~という定理があるので、$${AB}$$ も $${A^3+B^3}$$ も3変数の基本対称式
$$
\begin{align*}
&\alpha+\beta+\gamma\\
&\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha\\
&\alpha\beta\gamma
\end{align*}
$$
の加減乗除で表すことができるんだ。そうすれば、3次方程式 $${ax^3+bx^2+cx+d=0}$$ の解と係数の関係
$$
\begin{alignat*}{2}
\alpha+\beta+\gamma&= & - &\dfrac{b}{a}\\
\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha&= & &\dfrac{c}{a}\\
\alpha\beta\gamma&= & -&\dfrac{d}{a}
\end{alignat*}
$$
を使って、ある計算をすることで $${A}$$ も $${B}$$ も3次方程式の係数で表すことが可能となる。解と係数の関係の左辺はすべて基本対称式だからね。するとラグランジュ・リゾルベント $${A, B}$$ は、最初の方でやった $${\alpha, \beta, \gamma}$$ を求めるための式
$$
\begin{align*}
\alpha&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+(\overbrace{\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma}^{A})+(\overbrace{\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma}^{B})}{3}\\
\beta&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}\\
\gamma&=\dfrac{(\alpha+\beta+\gamma)+\omega(\alpha+\omega\beta+\omega^2\gamma)+\omega^2(\alpha+\omega^2\beta+\omega\gamma)}{3}
\end{align*}
$$
に表れる、2つ目と3つ目のカッコの式だね。最初のカッコ $${\alpha+\beta+\gamma}$$ は基本対称式なので $${- \dfrac{b}{a}}$$ とただちにわかる。あとは残りの $${A, B}$$ を3次方程式 $${ax^3+bx^2+cx+d=0}$$ の係数 $${a, b, c, d}$$ で書ければ、$${\alpha, \beta, \gamma}$$ 全体も $${a, b, c, d}$$ で書けるようになる。そしてそれを”$${x=}$$”としてまとめたのが『解の公式』ということだね」
「先生、できそうです!」
「はい?」
「できそうなので、今やってもいいですか?」
「今?いや今日はもう時間なので、次にしようか」
「分かりました。もしかしたら $${A, B}$$ は、『カルダノの方法』のときに $${y=s+t}$$ とおいたその $${s}$$ と $${t}$$ になるのでは・・・。次の授業までに計算してみます!」
・・・・・・
今日の授業は終わった。
「解説がまた途中なのに『カルダノの方法』と結び付けた?さすが森田君、楽しみになってきた」
今日の授業に手応えを感じ、竹村は行き付けの小料理屋へと向かった。
(了)
(コメント)客観的に見てくれる人がいないので、数式の文章がどのように伝わっているのか全く不明で書いています。これで分かるのでしょうか。
なお長い数式がスライドになり、あとちょっとで入る時は自動調節してくれるなど何か良い方法がないか調べてみます。あと、図形やグラフも直接描けるようになればと思います。他のエディターで作って画像として貼り付けることも可能ですが、修正したい時に画像から作り直すことになり面倒です。今後はどうしても図形とグラフが必要になってきます。要望を受け付けているようなので、描画(できれば座標を描いて任意のグラフをかく)もできるようリクエストしてみます。
追記(注)Wikipedia より抜粋参照
$${n}$$ 個の要素の置換の総数を決定する規則は、少なくとも1150年頃にはヒンズー文化において知られていた。インドの数学者バースカラ2世による著書に
と訳せる一節が含まれる。
一見関係なさそうな数学の問いが置換を通じて研究された最初の事例は、1770年頃にラグランジュが代数方程式の研究において、方程式の根の置換と方程式の可解性との関係を観察したことである。 この方向性をルフィニが引き継いで進めた結果、5次以上の代数方程式には解の公式が存在しないことが示された。
しかし、置換は文字の順列として表されており、まだ読みにくいものだった。ルフィニの成果に感動したコーシーは、置換の記号の簡略化や理論の一般化を行い、1815年に『置換論』としてまとめ上げた。
アーベルはルフィニの論文を直接には知らなかったが、コーシーの『置換論』を読み、ルフィニの論文に欠けていた代数的可解性の原則も証明した上で、独自に5次以上の代数方程式には解の公式が存在しないことを示した(アーベル・ルフィニの定理)。
さらに代数的可解性を分析したガロアは、何が(一変数)多項式方程式の可解と不可解とを根本的に決めているのかを完全に記述するガロア理論に到達した。現代数学において、ある問題の理解に際して、関連するある種の置換を調べるという状況は多く存在している。
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