# 5 悩める人間
私は歴史の専門家ではない。しかし時代は渦潮の如く、短時間に急回転しているのを感じる。
数年前までは人、金、物、情報が国境を超えて自由に行き来する、そんな時間があった。しかし、グローバリズムは貧富の差を拡大すると冷めた共通認識が醸成されて行った。
その様な世論を追い風として、タレント候補であったトランプが米国大統領となった。彼はグローバリズムを打破するような発言を繰り返し、アメリカファーストを掲げた。そんな流れから、中国も漢時代、ロシアも帝政ロシア時代の領土の回帰を掲げて、自国ファーストに傾倒していったという見方もある。
しかし、米国民主党のバイデン政権が成立、グローバリズムの時代から、自国中心主義で露骨なナショナリズムのトランプ政権を経て、経済安全保障を掲げたブロック化の時代に突入している。
ロシアのプーチン大統領は過ぎ去ったトランプ時代に固執し居残って、ロシアファーストを掲げ、ウクライナ侵攻を決断したのだろう。これは帝政ロシアの南下政策に類似した膨張戦略であり、ウクライナやNATOと厳しく対峙している。
帝政ロシアにこの様なナショナリズムが存在したのかは定かではない。絶対君主国家であった事は事実なのだが、その様な国家は、社団国家であり、社団をまとめて皇帝は君臨していた。多くの国民は選挙権もない、農奴であった。国家意識もなかったはずだ。南下政策は皇帝の個人的な自己愛と情念からとも捉えられる。
一方でそれ以前の封建時代には兵隊は傭兵がメインであった。ハップスブルグ家の傭兵は、イタリアを侵略した際に、約束の対価が払われないことから、略奪に走ったと言うのは有名である。
が、絶対君主国家の成立過程では、徴兵制もひかれて、国軍が出来て来る。
ワグネルを代表格とする民間軍事会社と類似したものがロシアには多数あるそうだ。これを傭兵とは呼ばないのだが、実質的にはそれに近い。
現在のロシアは帝政ロシアを飛び越して封建時代に先祖返りした様にも見える。だが、正確にはプーチンが公金を使って雇う私的軍隊の様だ。ワグネルもその様な主張を繰り返し、プーチンへの忠誠を誓っている。
一方で、ロシア国軍も戦っている。
彼らはスラブ民族同士で殺し合いをしなくてはならず、士気が上がるとは思えない。
プーチンは愛国心を鼓舞して、帝政ロシア時代の領土に回帰したいと理由づけをしている。しかしながら、それは愛国心なのか自己愛なのか情念なのか?何かしらグレーな空気が流れる。この不透明感の漂う霧の中で、悩ましく、息苦しいプーチンの戦争が続く。
唯一の被爆国は『原爆だけは避けるべき』と訴え続ける!
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