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映像感想文『マザー』

2014年に起きた川口祖父母殺害事件が元になった映画。
知り合いから勧められて居たので勇気を出して観ることに。


凄まじい話だった。
これが本当に同じ日本で起こった事なのか?そう思うほどの酷い環境と家族の話だった。


母親は働かず、まともな子育てはしない。

「私の子をどう育ってたって私の勝手じゃない」

そう言っていた事に、こんな人も居るんだと、悲しくなった。


別れた父親に息子を使ってお金の無心をしに行き、遠くで見ているだけの母親、酷すぎる。
あの時、父親が「お父さんの所にくるか?」と聞いたが「お母さんがいい」と言う息子。
あの時、父親の所に言っていれば普通の生活が送れただろうに。


と、思って調べたら、実際は父親も愛人のところに入り浸ってたりしていたのでこちらも中々に酷いのでどう転んでも普通にはなれなかったのかもしれないと思うと悲しい。
映画では人の良さそうなお父さんだったのに。


ネグレクトされてもDVを受けても、子供は親が好きなのが変わらないのって切ない。

母親からの愛情表現みたいなのは見えないのに、男に捨てられた時に息子にしがみついて泣く姿は違和感しか無い。

それでも息子は何も言わない。ただ、握られた拳が震えていた。悲しいシーンだった。

息子に祖父母や親戚にお金の無心をさせ、盗みをさせ、それでも

「周平しかいない」

と、泣くなんて。そんな母親でも愛してるなんて。切なすぎる。



まともなご飯も食べることが出来ない、学校へも行けない。なんなら住む所すらない時があった。

何も無い環境で、狭い歪んだ世界で、母親に言われるままに祖父母に手をかけた。
この母親は狡いよ。自分の手は汚さないし、妹を引き合いに出して息子を責めるんだから。

祖父母の家に数年ぶりに向かう周平。
大きくなった周平を、招き入れ話を聞く祖父母。

「ご飯食べていきなさい」「妹か、会いたいね」

こんな風に優しく接してくれた祖父母を刺した時、彼はどんな気持ちだったんだろうか。
母親に言われたから、やるしかない、それだけだったのかと思うと悲しい。


祖父母を殺して、手にしたお金は8万円だったと事件の記事で見た。
8万円の為に……?と胸が苦しくなる。


裁判でも、母親の指示は無かったと全ての罪を被り15年の刑期が下る。
でも、周平は「もう外に出たくない、ここに居ればご飯もあるし本も読める」と言った。
今まで、どれだけ酷い環境で生きてきたかが解る。

それでも、母親を庇うほどに母親が好きなのだ。

母親を庇い、自分は母親よりもずっと長い刑期を過ごすことになることに「お母さん、ひとりじゃ生きていけないですよ」と母親の心配をする。

彼の世界は、母親しか無かったんだろうな。

でも、母親からの愛情を充分に受けられず、歪んだ世界で生きてきた彼には、親離れなんて知る由もなく、母親の心配をする姿は本当に痛々しい。

学校へ行けていたら、手を差し出してくれた人の手を掴んでいたら、世界はもう少し広がつていたかもしれないのに、共依存と言うのはそれすら拒んで、世界を狭くしていた。恐ろしい。


正直、こんな生活をして、こんな風に育てられている子供がいる現実にショックを受けた。

母親の愛情を欲して、母親の為に頑張っても報われない息子。それでも、母親が好きで罪も1人で背負って……。いつか報われて欲しいと思うけど、あの母親はきっと変わらない。

母親はもう刑期を終えて一般社会に出ている。
息子に面会に行ったりするのだろうか?
15年という刑期を終えた後、彼は母親に会いに行くのだろうか。きっと、会いに行くよな。好きなんだから。
15年の間になにか変わるかな。親離れするのかな。

映画と実際の事件を重ねて観ていたけど、生い立ちも、これからも、あまりにも切なくて、事件を起こした彼がいつか報われること、幸せを感じられることを祈ってやまない。


そして、映画の俳優陣、すごく演技が良かった。
長澤まさみの演技、めちゃめちゃ怖かった。(褒めてる)
阿部サダヲの絶妙な演技、まじクソ男過ぎるよ。(褒めてる)
奥平大兼、デビュー作だったとは。死んだ目、震える拳、心が死んでるのがすごく伝わってきた。
周平の幼少期を演じてた子もいい演技だった。見てて不安になるくらいの表情、すごい。

周平役、髪の毛ボサボサに長くて陰湿な感じだったけど、刑務所では坊主になっていて、奥平大兼の顔が整ってるのがすごく解って、長澤まさみの息子役にピッタリだったんだなと思った。


こんな感想を恋人に軽く伝えたら「彗くんとこども食堂やりたいな」と言ってくれた。

こういう事をしたいって言ってくれる優しい心の持ち主なのめっちゃ自慢したい。本当に本当に素敵な人よ。

数年前までは、外国の学校が無かったり貧困で通えない子供たちのための学校なんかを建てるのが将来の夢の中にあった。
最近は、国内の貧困層の状況、都内の子育て世帯の現状、そういう所に視野を持って行って色々見ていたら、外国に学校建てるよりもまず、国内の子供を救うほうが良いんじゃないかと思っていた。

そんな中、恋人から出た「こども食堂」をやりたい。という言葉。2人でやれたら良いなと思う。



しかし、この所、こども食堂の閉鎖が増えているそうだ。


調べたら1人で来る男性がいるそうだ。そこに来る子供やスタッフの女性を変な目で見る人もいると。

こども食堂の経営は女性がしている事が多く、貧困者の為にしているという立場で、ひとりの男性が貧困で来たと言われたら中々意見もできず、子供たちが危ない目にあってしまうことを危惧して閉鎖してしまうんだとか。


なるほど。僕が経営者になればおかしな男は排除しやすいし、男がいるっていう状況が変な男が寄り付きにくくなる。


以前、恋人と話していたことがあって。
賢くないと搾取され続けてしまうという話。

それは、本当で、今にして思えば、義務教育って自分を守る基礎知識だったんだなと思うけど、それすら行かせて貰えない子供がいて、自分を守るすべを知らないままでいる。
そういう子供たちに学びの機会を与えて、視野を広げられたらいいねという話をしていたんだけど、子供食堂をやることで、学びの機会も与えられるんじゃないか、とかやりたいことが広がった。

未来を作るのは子供達だ。
けれど、今の日本は未来への投資は少なく、薄暗い斜陽国家のように感じている。この国が壊れていく様子を僕達は見ているんじゃないかと思うくらいだ。だから、そんな不安の中子供を産み、育てたい人が減っている現実がある。

でも、未来を作れるのは子供達だから。そんな子供達が明るい未来に向かって行けるような環境を少しでも作れたらと思う。


こういうことをやりたいと話した時に、一緒にやりたいと言ってくれる僕の優しい恋人。
本当に素敵な人と付き合えてて幸せだなと思う。

僕が彼女と出会って、世界が変わったように、僕たちに出会うことで世界が変わる子供達がいたらどんなに素敵だろう。


映画を見て、悲しかったけれど、これから自分がしたいことや、どう社会貢献出来るかを考えられて、やはり見てよかったと思えた。
しんどい映画だけれど、こういう現実があることを知っておくのはとても大切だと思った。

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