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読書感想文『西洋菓子店 プティ・フール』
僕は、お菓子が好きだ。
特に、チョコレートと焼き菓子。
自分でも、お菓子を作る。
その中でも得意なのは、バターケーキとアメリカンなクッキー、マドレーヌ。
凝り性なので、なかなかの腕だと思う。
この物語は、お菓子作りの描写がなんだかすごくリアルで、読んでいると無性にお菓子が食べたくなった。
じいちゃんの作るお菓子は、レトロというか・・・懐かしさのあるお菓子。
作中では昭和のお菓子という表現が出てくるが、まさにそんな感じ。
でも、全ての人に優しく寄り添うような、そんなお菓子で、皮の柔らかいシュークリームや王道のショートケーキは食べて見たいと思ってしまった。
僕はシュークリームは皮はザクザク硬い方が好きだし、なかのクリームもバニラビーンズの入ったカスタードが良い。
ショートケーキは苦手で何年も食べたことがない。
それでも、不思議と食べてみたくなる表現が沢山あった。
この話は、西洋菓子店プティ・フールを取り巻く人達の短編集だ。
西洋菓子店の孫の亜樹の恋人の祐介が、さえない男のように描かれていたが、僕は彼が結構好きだ。
恋人が好きだからこそ思う感情や、優しさが、すごくグッときた。
そんな彼の思いが伝わらなくてヤキモキしたりもした。
きっと、自分も彼のようなところがあるからかもしれない。
「甘いものは、こんなにも簡単に人を幸福にする」
祐介が言う台詞が、帯にも書かれていた。
そうだな、お菓子には幸福が溢れてる。
じいちゃんの作るような、懐かしさのあるお菓子や素朴なお菓子は誰しも幼い時に一度は触れるものだ。
亜樹の作るお菓子も美味しそうだった。
実は僕は、彼女の作るフランス伝統菓子のようなものの方が好みかも知れないな、なんて思っていた。
じいちゃんが亜樹に
「お前の菓子は厳しいんだよ。主張ばかりで寄り添ってない」
こう言った時に、亜樹自身の事も踏まえて「甘さが足りない」と言うんだけど、お菓子作りって人が出るんだな、と感じた。
職人だもんな、そうなんだけど。
だんだんと、亜樹が人間として成長していくのが見えて、初めは割と男っぽかった亜樹がなんとなく最後には柔らかく、女っぽくなった気がする。
この先の、西洋菓子店プティ・フールを取り巻く物語は続いていくんだろうな。
続きがあったら読みたいと思うラストだった。
僕も、お菓子が作りたくなったけど、ここじゃ出来ないから、、、とりあえず、夏らしいレモンマドレーヌを食べようかな。