マガジンのカバー画像

小説・シナリオ集

26
脚本家・作家矢野堅太郎(凄乃剣太郎)の小説・脚本を掲載する。連載小説や連続ドラマのシナリオを隔週を予定して発表、購読していただければ。
他の小説やシナリオには見られない作品を購読することが出来る。
¥3,000
運営しているクリエイター

#自分

自分だけが世界の不幸を背負っている臆病者の哀しさ

自分だけが世界の不幸を背負っている臆病者の哀しさ

○孤独な被害者意識と自意識過剰

「自分だけがこんなに苦しい」「自分だけが世界の不幸を背負っている」。SNSを見ていると、そう言わんばかりの投稿がしばしば目に飛び込んでくる。特にフォロワーを多く抱えるインフルエンサーが、そうした感情を赤裸々に語ることが多い。

一方で、その発言に対して「共感」を寄せる声と同じくらい、「自意識過剰」「被害者ぶるな」という批判も巻き起こる。彼らの言葉は、誰かの心を癒す

もっとみる
偉大な才能を目にしたときの対処法

偉大な才能を目にしたときの対処法

◯才能に圧倒される瞬間

人生で一度くらい、「これ、私には一生無理だな」って感じるような才能に出会ったことがあるはずだ。それは映画のスクリーン越しだったり、コンサート会場の席からだったり、意外と身近な職場や学校の友人だったりする。

才能を目の当たりにすると、感動と羨望、そしてちょっとした劣等感が混ざったような気持ちになる。「なんでこんなにすごいんだろう」と同時に、「自分には何があるんだろう」とつ

もっとみる
人生はマルチジョイ?

人生はマルチジョイ?

〇マルチジョイ時代の疲れ

現代は「マルチジョイ」の時代だ。スマートフォンの画面をスクロールすれば、無限に広がる娯楽の世界。SNSで誰かが投稿した絶景写真や流行りのダンス動画、最新の配信ドラマや映画。音楽ストリーミングサービスでは「次に聴くべきプレイリスト」が常に提案され、気づけば複数の娯楽が同時進行で押し寄せてくる。

このように、私たちは日々マルチタスクで「楽しむ」ことを求められている。映画を

もっとみる
負け犬の処方箋

負け犬の処方箋

 負け犬とは何か

負け犬。その響きには、敗北者や落伍者を指す冷たさがある。この言葉を浴びせられるとき、人は「失敗者」の烙印を押される。そしてその「臭い」は、どれほど努力しても消えないものとして扱われる。負け犬には牙がない。それどころか、噛みつくための犬歯さえどろどろに溶け、誰にも抵抗できない弱さを象徴する存在だ。

負け犬の臭いは強烈だ。社会の中で「勝ち組」と呼ばれる人々から見れば、その臭いは不

もっとみる
なにもしない苦痛

なにもしない苦痛

突然の空白が生む苦痛

ある日、予期せぬイレギュラーが私たちの生活を襲う。それはアクシデントかもしれないし、職場の方針転換、あるいは個人的な事情によるものかもしれない。これまで描いていた仕事の展望が突然消え去り、実際にやっていた仕事さえもなくなったとき、人は深い無力感に包まれる。

「なにもしない時間」が突きつける現実は予想以上に苦しいものだ。忙しい日々に追われていた頃には、何もせずに休める時間を

もっとみる