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「HSP」を正しく理解する

今回は今巷で濫用されている「HSP (highly sensitive person)」について書いていこうと思います。

環境感受性

本題に入る前に、HSPを理解するために欠かせない概念である「環境感受性」について簡単にご紹介します。

これは平たく言うと「環境刺激に対する感受性の個人差」の事です。

ここでいう環境刺激には物理的・心理的なもの、ポジティブ・ネガティヴなもの、全て含まれます。

そして当然環境感受性は高い人から低い人までおり、統計を取ると正規分布を描くとされています。

ここで重要なのは

・「環境感受性が高い/低い=いい/悪い」とかという話では無い
・「環境感受性が高い=生きづらい」では無い

という事です。

測定方法

環境感受性は主に次の3つの特徴から測定します。

1.感受性遺伝子型

いくつかの遺伝子型の有無が環境感受性の個人差に関わっているとされ、それらが重なり合う事によりその高低が決まる可能性があります。

2.神経生理的な反応

環境感受性が高い人に刺激を与えると、脳の特定の領域(扁桃体・海馬など)がそうで無い人に比べ活性化する傾向があります。

3.気質・性格

環境感受性の気質・性格的側面は「感覚処理感受性」という概念で研究されており、それが高い人は刺激に対する反応も大きいとされています。

(※ちなみに心理学の世界では「気質」は生得的なもの、「性格」は気質に環境刺激が加わったもの、という考え方が一般的です)

HSPとは

以上の事から人の環境感受性を測定し、上位30%に入る人を「HSP」と呼びます。

が、もちろん環境感受性はスペクトラム(連続体)であり、この区分は絶対的なものではありません。

参考文献:飯村周平,「HSPの心理学:科学的根拠から理解する「繊細さ」と「生きづらさ」」,金子書房,2022年

私が思うこと

環境の測定方法の1.と2.はヒトの生物学的な側面を測定したものであり、理解できます(同じ事なのでは?と思わなくも無いですが)。

が、3.についてはどうなんだ?と思わざるを得ません

人間なんて凸凹しているものであり、ある一面では鈍感な人も他の面では敏感だったりするのが当たり前です。

(心理学・心理統計学をきちんと学んだ人は知っていると思いますが、心理テストというのはいい加減なものが多いです)

また、「自称HSP」の人について言えば、「自分は敏感で他者は鈍感だ」と考えている訳で、そんな厚かましい人が「繊細」な訳ないだろ、と私なんかは思います。

そういった図太い人たちが自身を「繊細さん」などと呼んでいるのを見ると、もう、なんというか、脚かなんか骨折してほしいです(でも頑丈だから多分すぐ治る)。


また、「〇〇型HSP」というのはエビデンスの全く無い概念であり、これは問題外です。

田村某なるコンビ芸人の片割れが、「精神科医に〇〇型HSPだと言われた」などとツイッター(X)に投稿していた様ですが、「ふざけるなと言いたいです。

ヘンな医者がデタラメな事を言ったか、本人が嘘をついているかのどちらかでしょう。

私は後者だと思います。

上述した様に「〇〇型HSP」なんてものは存在しませんし、そもそもHSP自体診断名ではありません

某氏は狡猾なポピュリストなので、自分の「ブランディング」のために流行りのワードを取り入れたのだと思います。

(あと「HSPだから叩かないでね🥺」というセコい自衛のため)

氏は以前、友達同士を中違いさせてそれを面白がる様な番組をやっていたはずですが、本当にHSPならそんな事はできないはずです。

私が氏を強く批判するのは、こういったセンシティブな問題について間違った情報を拡散すると、その事で本当に苦しんでいる人をさらに苦しめる事になるからです。

「発達障害バブル」との比較

10年ほど前から発達障害(神経発達症)との診断を受けた人が激増しており、多くの良心的な医者がそれを「バブル」と形容し、批判しています。

発達障害は「生得的な脳の機能障害(※注)」であり、これほど多くの人がそれに該当するとは考えにくいと思われます。

(※後天的な要因(虐待など)でも発症します)

なので、「言い訳が欲しい人」と「患者(客)が欲しい医者」の利害が一致した結果、過剰診断(治療の必要の無いものに診断を付けること)が行われている、と考えるのが自然でしょう。

「自称HSP大量発生問題」と「大人の発達障害バブル」問題の共通点は、どちらも何らかのレッテルが欲しい人たちが実際には違うのにそれを名乗ってしまっている、という事だと言えます。

(「自称HSP」に関しては医者の診断が不要なので、現状の様に大量発生してしまっているものと考えられます)

そして誤った情報が拡散される事により、真の当事者達をさらに苦しめる事になります。
 
結論

HSPのちゃんとした研究は進んでいる様なので、それをきちんと理解する事が大事でしょう。

自称して「予防線」や「免罪符」に使おうというのは卑怯だと思います。

今回は以上となります。

お読み頂きありがとうございました。


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