「YES! 土方!」

「おら! しっかり動け!」
 頭上からメガホン越しに暴言が飛んできた。ヘルメットを被って仕事をしているので、現場監督の表情は分からないが間違いなく怒っている。

 俺は今、下っ端作業員として現場で穴を掘っている。スコップで何度も硬い地面を掘るごとに自分の心も抉られる感覚を抱いた。

 現場仕事で嫌なのはきつい仕事はもちろん、現場が普段遊んでいる場所だと今のギャップとの差で心が傷つく事だ。

 普段、友人と楽しく遊んでいる場所が自分を苦しめる地獄のような環境に変わっている。これがたまらなく辛いのだ。

 どうか早く終われ。なんで早上がりじゃないんだ。日給の意味ないだろ。心で何度も唱えているうちに仕事が終わった。

 受け取った日給が紙切れにしか見えない。こんな薄っぺらい紙のために俺は時間を捧げたのか。ゲロと涙を吐き出しそうになりながら、家に帰った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?