「ズレ」
「もうここにくるんじゃないぞ」
警備員に言われて、俺は頭を下げた。今日,俺は出所した。俺がこの刑務所に入れられていた理由は昔、詐欺をしていたからだ。
地元の先輩に誘われて、やった事がきっかけだった。人騙すだけで何百万も入ってくる。最初は多少、罪悪感はあったがそれも無くなっていった。
だけど俺はもう違う。これからやり直すんだ。俺は頭上に広がる青い空に強く誓った。
早速、俺は仕事を探し始めた。知り合いに頼ろうとしたが風の噂では俺は縁を切られたらしい。自力で探すしかないのだ。しかし、どこに行っても不採用だった。理由は簡単。俺が前科者だったからだ。電話で優しく応対してくれたやつも俺が犯罪者だと知ると目を色を変えた。
再就職が難しい事は知っていたがここまでとは思わなかった。それでも俺は必死に探して,なんとか土木関係の仕事に就く事が出来た。
予想していたが職場内で俺は良いようには扱われなかった。それでも罵られながら朝から晩まで働いた。ここしかないのだ。
そう自分に言い聞かせて。しかし、それでも積み重なっていくと心が沈んでいくのを感じた。これだけ罵られても日給一万だ。俺の価値はそれだ。この理不尽を受けていても。確かに俺は前科者だ。それでも赤の他人にここまで言われる謂れはないはずだ。
数ヶ月後,俺は先輩が出所したのを聞いて,駆けつけた。再び,やり直すために。