「縁側の葛藤」

 縁側で陽の光を浴びていた。周囲の空は晴れ渡っており,雲一つない。平和だ。本当に平和になったものだ。俺が若いころはこの国は戦争への道を進んでいた。

 周囲の人間は同情していた。母も妻も息子と娘も戦争が俺を変えてしまった。戦争がなければ俺はもっと幸せな人生を送れたと言っていた。彼らの心遣いには感謝する。確かに戦争は惨たらしいものだった。だけど不快ではなかった。最初は彼らの言う通り、恐ろしかった。しかし、敵兵を数人撃ってから、世界が変わった。

 楽しくなったのだ。敵兵を倒すたびに歓喜していく自分がいた。敵を倒すたびに称賛されて、羨望の眼差しを向けられる。実に心地良かった。戦いを求める雄として本能が掻き立てられる感覚だ。しかし、そんな事を口が裂けても言えない。

「おじいちゃん。あそぼー」
 ここに戦争よりも俺を充実させてくれるものがあるから。

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