「甘美な夜」
夜の町。人が行き交う街を車で走っていた。隣では愛する女性が頬を染めながら、僕を見つめていた。彼女の左手の薬指には先ほど奥がプレゼントした指輪が光っている。上京して早数年。慣れて来たこの光景も君となら雰囲気を掻き立てるイルミネーションに早変わりする。
運転をしながら、彼女と歩んだこれまでのことを思い出していた。大学時代に出会ったこと。誰よりも僕を信じ、夢を応援してくれたこと。僕が酒に溺れかけた時、泣きながら止めてくれた事。彼女がいなければ今の僕はいない。
家に着いた後、僕達は互いの将来について、改めて話し合った。身に余るほど幸せな時間だ。気づけば朝を迎えていた。隣で愛しい彼女が寝息が立てていた。携帯を見て、今日のタスクの確認をした。
今まで仕事にやりがいなんてものは感じなかった。でも守るべきものが出来た。ならそれのために全力を尽くそうではないか。僕は机に向き合ってパソコンを開いた。
全てはあの甘美な夜を再び迎えるために。