「歪んでいる」
人生でこれまでにないくらい自分の目を疑った。
ゴミ捨て場に赤ん坊が捨てられていた。生まれたばかりの小さな赤ん坊だ。
誰だ。こんな事をしたやつは。人の心はないのか。
僕は恐る恐る抱き抱えた。赤ん坊は大きな声で泣いている。実にたくましい。
ゴミ捨て場に捨てるなんて不法投棄だ。そんな事言っている場合ではない。捨てられているのだ。僕は近くの警察署に向かった。
対応してくれた警察官は酷く困惑していたが、引き受けてくれた。
一人、家に向かって歩いていく。赤ん坊を捨てる。よくもまぁそんな酷い事が出来るものだ。顔も知らないあの子の親に憤りを覚えた。
ただ、一つだけ良かった事があるとすれば、警察署に向かう道中、あの子が小さな手で僕の指を握って、笑いかけてくれた事だ。その笑顔に何の意味があるのかは分からない。
ただ、どうしようもないくらい愛おしく感じたのは確かだ。どうか幸せになってくれ。