「道具だとしても」
灼熱と向き合いながら、刀を打っていた。余分な要素を取り除くために熱を持った刀を叩いた。そして、冷やすために水をつけた。
叩く。叩く。水につける。叩く。叩く。水につける。一日を通してそれを続ける。時間が経つごとに頭に巻いた布が汗を吸って重くなる。そして、吸いきれなかった布から汗が流れ出る。
正直、かなり過酷だ。しかし、これが俺の生き甲斐だ。しばらくすると打った刀が出来上がった。
数日後、街を歩いていると凄まじい腐臭が漂ってきた。臭いが気になった為,辿っていくと武士達が血色が抜けた顔で歩いていた。
おそらく戦から帰ってきたら者たちだろう。彼らの腰に掛けられた刀から鉄錆の匂いが出ていた。多くの刀が人を斬って、血まみれになったのだ。
そして、さらに俺は目を見開いた。俺の打った刀があった。俺の刀だ。
剣は人を切るための道具だ。そこに何の反論もない。ただ、どうしてだろうか。胸が痛くなるのは。ただこの刀達も使命を果たせて、光栄だったのではないか。誇りに思えたのではないか。そう思うほか、この心の乱れを落ち着かせる方法がない。