「屍の上の極上」

 厨房の前、静かに頭を抑えた。また上手くいかなかったのだ。

 目の前には汚れた包丁と無惨に散らばった材料。理想へ行けないのだ。

 これ以上、失敗はしたくない。失敗した料理の数だけ無駄な屍が生まれるからだ。

 料理をミスすればする程、食材への敬意が軽んじられる気がする。しかし、同時に他人からの畏敬は向けられやすくなる。

 ここで止まってはいられない。僕は再び、包丁を握った。全ては屍の上の極上を目指して。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?