「目覚めた牙」
暗闇の中、彼は目を覚ました。辺りの景色を見て、彼は不安になった。目を覚ます前といる場所が全く違うからだ。最後に見た光景は空から何かが落ちてきたところだ。そして、そこから視界が暗くなった。
しばらく歩いていると森を抜けた。そこには開けた草原が広がっていた。雲ひとつない晴天。心地う良いそよ風。かつて見た景色と変わらない雄大な自然が存在したのだ。しばらく歩いていると目の前にとある存在が現れた。首周りに広がる盾のようなえりと二本の鋭いツノ。かつてのライバルがそこにいたのだ。
彼は細胞が騒ぎ出す感覚に身を任せて、ライバルに向かって走った。ライバルも負けじと鋭いツノで応戦する。ライバルが勢いよく突進してきた瞬間、彼は身をかわして胴体にタックルを仕掛けた。あまりの勢いでライバルは地面に倒れる。そして、無防備な腹に自身の自慢である牙を突き立てた。上空で何やら誰かが見ている気がしたが、お構いなしに勝利の味を噛み締めた。
飛んでいるヘリコプターの中、博士は眼下の光景に目を奪われていた。
「おお、さすがはティラノサウルス。苦労して復活させた甲斐があったな」
「ええ。神々しさすらうかがえます」
隣の助手も興味深そうにトリケラトプスをくらう王者を眺める。
「さて。これからどんどん復活させていこうではないか。目指すは恐竜アイランドだ」
博士はパソコンを開いて、恐竜達のサンプルデータに目を通し始めた。彼の計画はまだ始まったばかりだ。