「コンドル食い込んどる」

僕は驚愕していた。畑仕事から戻ったら家の壁にコンドルが食い込んでいたのだ。脳内では驚愕と疑問が入り混じっている。微動だにしないことからおそらく絶命している。しかし、コンドルはこの地域では神聖な鳥だ。放っておくと村の年寄り連中が怒るから、放っては置けない。

 僕は翼を握った。精一杯、力を込めて引き抜いた。勢いで地面に倒れて、コンドルの状態を確認した。自然と腐臭はしない。よく見るとそれは模型だった。動揺していると周囲から拍手が湧いた。拍手をしているのは年寄り連中を含んだ村人達だ。

「素晴らしい! 素晴らしいぞ!」

「コンドルは我らの神様! この若者のおかげで伝統は守られた!」
 村人の連中が大喜びしている。ある者は肩を組み合い、またある者は泣いて抱きしめ合っている。伝統が守られて結構だが言いたいことがある。

 壁弁償しろ。

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