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電車の中のドラマ
毎朝決まった電車の決まった車両に乗車する私。
同じような方は他にもいらっしゃって何となく勝手に顔見知りの気持ちになってしまっている。
そう、以前、毘沙男が乗車してきたあの車両だ。あれ以来毘沙男には会っていない。
1車両にもいろんなドラマがある。
かれこれ5年ほど前になるだろうか。ラッシュ時の混雑している車内で、ここは私の場所、と言わんばかりに頑として動かない女性がいたために他の乗客に迷惑がかかっていたらしく、スーツ姿の中年男性とその女性とで大ゲンカが勃発したことがあった。
女性が降り際にものすごい悪態をついて降りていったことが印象的だ( ゚д゚)
今年に入って乗ってくるようになった、ある私立小学校の高学年の7~8人のグループは、教室かな?っていうくらい大騒ぎ、バカ笑いの毎日だ。イヤホンをして周囲の音を遮断している私にすら聞こえてくる騒ぎ具合だ。
注意をしても良いのだが、学生時代の通学電車、それも女子ばっかりなんて楽しい時間でしかないか、なんて考えると、音をある程度遮断できている限りは目をつぶるか、と見逃している。暴れだしたら注意するかもしれない。
でもどなたも注意されないので、皆さん我慢強いな、と感心もしている。
そんな車両にスーパードクターが乗車されていることを私だけが知っている。
たぶん誰も気づいていない。
なぜ私がそんなことを知っているのかその理由には触れないが、神の手を持つ外科医としてTVで特集されたこともあるすごい先生なのだ。
今はもうお年を召されているが、まだ現役でお仕事を続けられているようで、シートに座っているお姿はスマートでかくしゃくとしておられる。とても素敵。
私は1駅で降りる電車なのだが、車内の奥の方まで進む。目の前にはスーパードクターが座っておられることが多い。
過去に別の場所でそのドクターとお話をしたことがあるのだが、ドクターの記憶に私が残っていることは、きっとない。
さて、今朝も蝶ネクタイがトレードマークのドクターの前に立っていたのだが、小学1年生ぐらいの女子児童がふたり、乗車してきた。
ドクターの真横の座席が空いていて、女子児童がソワソワしていた。
すると読書をしていたドクターが目線で彼女に「座ったらいいよ」と仰った。そう、目で仰ったのだ。
するとその女子児童の片方が恐る恐るドクターの横に座った。
エライよ、小学生。先生の意思をよく読み取った。
そうそう、その小学1年生くらいの彼女たちはバカ騒ぎグループとは別の私立小学校の生徒だ。
1年生の躰にランドセルは重いし、サブバッグもあるし、今日は傘もあったもんね。混雑した電車で大人の間に立ってるの、大変だよね。マスクのその上にある私の目はちゃんと笑えていただろうか。
さて、降車駅に到着だ。今日はドクターの静かな優しさの場面に遭遇できてラッキーだった。
小学生も降りるようだ。
と、ドクターが彼女に顔を近づけて何か言葉をかけた。
彼女は耳を傾けてにっこり笑い、そして元気よく「はい!」と答えて降りて行った。
なんて素敵な日なんだ!
今日のバカ騒ぎは私の耳に届くことはなかった。