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静かな人

暑いです。暑い。暑い。今年もバカ暑い猛暑。
の、さらに上をいく、熱々な男女のイチャイチャをまた見るはめに…
こんな所に、このようなカップルがたまに来る不思議。30〜40代?どちらかと言うと、地味目なカップル。人前でそんなことをしそうには見えないのだけど、人というのは分からないもので…
ずっと暑苦しいほどに顔を近づけて、微笑みながら会話をしている。
(ゔーーーっ、このクソ暑い真っ昼間に、アホ…ダメダメ!接客業なんだから、そんなこと言っちゃだめだよ私!)
横並びでグッズを見ている二人。
女が男の背後に立ち、肩にアゴを乗せた。二人羽織状態となる。
次に、女は男の正面に立って男の首に両腕を絡ませる。そして二人は顔を近づけて…
(ちょっとぉ、ちょっと待てぃ!ここ、宝くじ売り場だよ!なにをしてるんじゃい!バカ…あっ、いけない!私の心の声が…こっちを見〜てごらん。
ガラス越しに、呆れた顔であなた達を見ている店員がいるでしょ。バーーカ!)

こんな所で、、いったいどんな話しをしたらそんなシチュエーションになるの?やーめーてー!

こんな暑苦しいカップルの後ろに並んでいたのは、60代くらいの定期的にナンバーズを買いに来る痩せ型男性。何をしている人なんだろう。白髪で、毛量の多いボンバーヘア。夏の今はTシャツにパンツのご近所スタイル。
か細い声の『こんにちは〜』から始まるちょっとした会話の隅々に気弱さが伺える人。

『すごいカップルだねぇ。夏だなぁ、夏はやっぱり恋だねぇ、いいなぁ…僕なんかさ、ずっと1人だもん』

『僕さ、意気地なしだから。昔ね、すごく大好きな女性がいたんだけど、勇気が出せなくて成就しなかったんだよね〜 僕はダメ男なの。今になってさ、1人は淋しいなって、よく思うのよ』

『僕ね、昔ね……』
若い頃、お花屋さんで働く女性に一目惚れをしたこの男性。花など全く興味がないのに、女性に会いたくて足繁くお花屋さんに通ったそうだ。
通いつめるうち、女性と話すようになり、花にも詳しくなっていった。
あるとき、女性の方から、お花の展覧会に誘われた男性は、天にも登る気持ちになったのだけど、いろいろ考えた挙げ句にドタキャンしてしまい、その恋は終わってしまった。。。

優しく、静かな静かな口調で話しはつづいた…

『考え過ぎちゃう僕の悪いクセなんだよね〜
僕ね、なんでもすっごく考えちゃうの。宝くじもそう。考えて、考えて…だからね、宝くじの勝率は少しずつ上がってきたの。
お姉さんは?恋してる?好きな人はいる?』

『ほぉ〜、お姉さんはおもしろい人が好きなんだぁ。おもしろい人ってモテるもんね〜
僕なんか、おもしろいことなんて言えないもんな〜。なんか、すみません。長々と僕の話しを聞いてもらっちゃって。ごめんね。
あっ、支払いは、PayPayでお願いします』

《PayPay  スクラッチチャーンス!!!》

『わぁぁぁぁっ、わーーっ、ビックリした!!これ、いつもビックリしちゃうのよ〜 あー、心臓に悪いよぉ』

静かに話す男性が「PayPay!」のやや大きめな音に驚く様が可笑しかった。

こんな男性もいるんだなぁ…

ファイトー!いっぱ〜つ!(古い!)が頭に浮かんだ猛暑の午後でした。

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