身体活動量と所得の逆U字関係。動くほど高所得というわけではない
📖 文献情報 と 抄録和訳
加速度計で測定した身体活動と中年期の所得との関連:北フィンランド出生コホート1966年研究
[背景・目的] 本研究では、身体活動(physical activity, PA)と中年期の収入との関連を調査した。
[方法] 北フィンランド出生コホート1966(N = 2797)の被雇用者を対象とした。ビン化散布図と多項式回帰を用いて、加速度計で測定した46歳時の中等度の運動量(moderate PA, MPA)、活発な運動量(moderate-to-vigorous PA, vigorous PA, VPA)、中等度から活発な運動量(MVPA)と、50歳時の戸籍ベースの所得との関連を評価した。モデルは、性別、配偶者の有無、子供の数、教育、思春期のPA、職業上の身体的努力、時間の嗜好で調整した。
[結果] MPA(p<0.001)、VPA(p<0.05)、MVPA(p<0.001)が所得と曲線的に関連することがわかった。サブグループ分析では、肉体的に激しい仕事をする人のMPA(p<0.01)およびMVPA(p<0.01)、女性全体(p<0.01)および肉体的に軽い仕事をする女性のVPA(p<0.01)、男性全体および肉体的に激しい仕事をする男性のMPAおよびMVPA(それぞれp<0.05;p<0.01;p<0.05;p<0.05)と所得との間に曲線的な関連が認められた。最も所得が高かったのは、現在のPAガイドラインよりもPA量が多い場合であった。一方、505.4分/週を超えるMPA、216.4分/週を超えるVPA、555.0分/週を超えるMVPAは所得と負の関連を認めた。
PAと所得との間の直線的な関連は、MPA(p<0.05)とMVPA(p<0.05)については女性で、MPA(p<0.05)、VPA(p<0.05)、MVPA(p<0.05)については肉体的に軽い仕事をする人で、VPA(p<0.05)については肉体的に激しい仕事をする女性で認められた。
[結論] 現在の推奨レベルまでのPAは所得と関連するが、505.4分/週を超えるMPA、216.4分/週を超えるVPA、555.0分/週を超えるMVPAは所得と負の関連を持つ可能性があると結論づけた。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
身体的リテラシーという言葉がある。
身体的リテラシーとは、生涯にわたって身体活動に従事することに価値を見出し、責任を持つための動機、自信、身体的能力、知識、理解のことである。
その一端に「あなたはどうして、身体活動をするのですか?」という身体活動に対しての目的がある。
そして、1つの身体活動という目的に対して、多くの目的が存在することに注意が必要だ。
あるひとは言う。
またあるひとは言う。
また別のあるひとは言う。
・・・。
つまり、『1つの行動、多くの目的』。
1つの行動には、多くの目的・意味付けが可能である。
僕たち理学療法士は、相手に望ましい行動をとってもらうために、この原理を利用することが得策だ。
ときに、1つの行動に対しての目的をすり替えることで、真意を隠蔽し、
ときに、1つの行動に対しての目的を相手の望ましいものとすることで、相手の行動への興味・モチベーションを高める。
『それは嘘じゃん。隠蔽じゃん。操作じゃん。』と言われるかもしれない。
だが、行動は事実であり、目的・意味づけは付与するものである。
描き出すものである。
だから、そこに嘘もクソも無いのである。
そのときの現実において、最も適切な目的・意味付けをするものが、最も賢い者だと思う。
そんな中で、今回の抄読研究は、身体活動をする目的の1つに「所得の増大」があることを示した。
動くほど高所得というわけではないが、ある一定の身体活動量までは、身体活動量と所得は関連しそうだ。
そんな人に身体活動をとってもらいたいときに、
最後、詐欺師っぽくなってしまったが、このセラピストは概ね賢い。
なぜなら、相手の心の扉の鍵穴の形に応じた、鍵を差し込もうとしているから。
所得増大を人生の大目的にしている人に、身体活動のダイエットに対する効果を説いても、仕方ないことだ。
1つの行動には、多くの目的がある。
その中から、相手にフィットする目的をチョイスして、提示したい。
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