N95マスクの効果。国別で効果に大きな違い
📖 文献情報 と 抄録和訳
医療従事者のCOVID-19予防のための医療用マスクとN95レスピレーターの比較：無作為化試験
📕Loeb, Mark, et al. "Medical masks versus N95 respirators for preventing COVID-19 among health care workers: a randomized trial." Annals of Internal Medicine 175.12 (2022): 1629-1638. https://doi.org/10.7326/M22-1966
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[背景・目的] 医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19に対して同程度の防御効果を示すかどうかは不明である。目的：日常的なケアを行う医療従事者において、医療用マスクがN95マスクと比較してCOVID-19の予防効果が劣らないかどうかを明らかにすること。
[方法] デザイン：多施設、無作為化、非劣性試験。(ClinicalTrials.gov：NCT04296643）．設定。2020年5月4日から2022年3月29日まで、カナダ、イスラエル、パキスタン、エジプトの29の医療施設。参加者COVID-19が疑われる、または確認された患者に直接ケアを提供した医療従事者1009名。介入は医療用マスク対フィットテスト済みN95レスピレータの10週間の使用、および各施設で実施された方針であるユニバーサルマスクの使用。測定方法：主要評価項目は、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応（RT-PCR）試験で確認されたCOVID-19であった。
[結果] intention-to-treat解析では、医療用マスク群497人中52人（10.46％）に対してN95呼吸器群507人中47人（9.27％）でRT-PCRで確認されたCOVID-19が発生した（ハザード比［HR］、1.14［95％CI、0.77～1.69］）。
■ 国別の予定外のサブグループ解析
・カナダでは131人中8人（6.11％）対135人中3人（2.22％）（HR, 2.83 [CI, 0.75 to 10.72] ）
・イスラエルでは17人中6人（35.29％）対17人中4人（23.53％）（HR、1.54 [CI, 0.43 to 5.49] ）
・パキスタンでは92人中3人（3.26％）対94人中2人（2.13％）（HR, 1.50 [CI, 0.25 to 8.98] ）
・エジプトでは257人中35人（13.62％）対261人中38人（14.56％）（HR, 0.95 [CI, 0.60 to 1.50] ）
介入に関連する有害事象は、医療用マスク群で47件（10.8％）、N95レスピレータ群で59件（13.6％）報告された。制限事項家庭や地域社会での曝露によるSARS-CoV-2の獲得の可能性、国による不均一性、効果の推定値の不確実性、自己申告のアドヒアランスの違い、ベースライン抗体の違い、循環変異体およびワクチン接種の国による違い。
[結論] COVID-19の患者に日常的なケアを提供した医療従事者において、全体の推定値は、N95呼吸器に対するRT-PCRで確認されたCOVID-19のHRと比較して、医療用マスクに対する2倍のハザードが除外された。サブグループの結果は国によって異なり、治療効果の異質性のため、全体の推定値は個々の国には当てはまらない可能性がある。
🌱 So What?：何が面白いと感じたか？
この論文の題名を見たとき、とてもテーマに引かれた。
きっと、数週間前から少しの期間、まさにN95マスクを装着したリハビリを経験したからだろうと思う。
装着感としては、普通のサージカルマスクと比較して明らかに苦しい。
最初の数日は、頭痛が出たくらいだ。
そんなに苦しいくらいなので、さぞ効果的なのだろうと思ったが、結果としては国間によって大きな違いがあるというものだった。
カナダの効果は大きく、イスラエル、パキスタンはボチボチ、エジプトは効果なし、という感じだ。
この国間の差は、一体何によって生じているのだろう。
論文の中では、市中感染に治療中のマスクが関係ないことが記載されていたが、確かに治療以外の時間の過ごし方には国間の差が大きそうだ。
また、感染対策の徹底度合いにも、違いがあるのではなかろうか。
当院で感染対策の防護服やN95マスクの着脱練習の際に言われたことに「外すときに最大のリスクが訪れる」がある。
この部分を徹底してやれていなければ、マスク装着中ではないところで感染が生じてしまうだろう。
今回、あえて結果の図にGDPの世界ランキングをのせたのだが、先進国は医療も進んでいると考えれば、日本はカナダに近いのかもしれない。
そう考えれば、N95マスクはやはり有効と捉えたくなる（すべて仮説だが）。
なんにせよ、あれだけ苦しい思いをしたのだ。
「効果があってくれ！」という強いバイアスを、僕はもっている。
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