頭部前方位姿勢の矯正。肩甲骨安定化運動を追加せよ
📖 文献情報 と 抄録和訳
姿勢矯正エクササイズに肩甲骨スタビライゼーションを追加することによる症候性頭部前方姿勢への影響:無作為化試験
[背景・目的] 最も広く見られる姿勢異常の一つに頭部前方位姿勢FHP(Forward Head Posture)があり、これは体幹に対して頭部が前方に突出し、主に矢状面に現れるとされている。肩甲骨安定化運動(scapular stabilization excercise, SSE)は、頸部と肩の筋肉の相互作用と肩甲骨の位置と動きの制御により、胸郭と頭部のそれぞれを最適な位置に戻すことが可能である。目的:本研究は、姿勢矯正運動(postural correctional exercises, PCE)に肩甲骨安定化運動(SSE)を追加することによる症候性FHPへの影響を検討するために実施された。
[方法] DESIGN:プリポスト・シングルマスク(評価者)無作為化実験試験。セッティング 理学療法学科外来に入院しているFHPのような姿勢機能不全を有する参加者。対象者:理学療法学科外来診療所から募集された症候性FHPを有する60名(20~35歳)。方法:参加者は整形外科医から紹介された2つのグループに不透明な密封封筒で無作為に割り付けられた。グループAはSSEと姿勢矯正エクササイズを、グループBは姿勢矯正エクササイズのみを行い、週3回、10週間治療を行った。治療前と治療後の評価として、頭蓋椎角、圧痛閾値、頚部屈筋・伸筋持久力、Arabic neck disability index、安静時と活動時の上部僧帽筋と胸鎖乳突筋の平方根平均を用いた。
[結果] 60名のグループ内分析では、ベースラインと治療後の間にP値<0.05の統計的有意差があり、SSE運動群でより洗練されていることが報告された。
[結論] PCEにSSEを追加することは、FHP患者の管理において、PCEをほとんど行わない場合よりも効果的な方法である。肩甲骨安定化運動と姿勢矯正運動は、ともに頭蓋椎角と圧痛閾値(pressure pain threshold, PPT)を増加させ、筋活動および障害を減少させる。肩甲骨の安定化のみでは、姿勢矯正運動よりも頭蓋角とPPTを増加させ、筋活動や障害を減少させることが分かった。また、すべての変数に統計学的な有意差が認められたが、障害のみ臨床的な変化がみられた。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
1つ、試してみてほしいことがある。
肩甲骨を背中の中央部に引き寄せる(リトラクション)と両肩甲骨の距離を引き離すように前方突出させる(プロトラクション)をしてみてほしい。
注目してほしいことは、そのときの自分の脊椎の肢位だ。
リトラクションには脊椎の伸展が、プロトラクションには脊椎の屈曲がセットになることに気づくと思う。
このように、脊椎運動と肩甲骨運動は、非常に密接に関連していて、脊椎の肢位や運動をコントロールしたい時には、操縦舵の様に肩甲骨運動を利用することができる。
その関係性は、大きな船の方向性を決める『トリムタブ』を想起させる。
姿勢矯正にトライしたい、姿勢矯正を目的とした治療をしたい。
そんなときには、肩甲骨運動に習熟し、実践できることが近道のように感じる。
今回のエビデンスも、それを支持した。
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