見出し画像

脳卒中一次予防のためのガイドライン2024


📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中一次予防のための2024ガイドライン:米国心臓協会/米国脳卒中協会によるガイドライン

📕Bushnell, Cheryl, et al. "2024 guideline for the primary prevention of stroke: a guideline from the American Heart Association/American Stroke Association." Stroke 55.12 (2024): e344-e424. https://doi.org/10.1161/STR.0000000000000475
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable

✅ 前提知識:脳卒中の一次予防とは?
・脳卒中の一次予防とは、生活習慣や生活環境を改善して、脳卒中を発症させないようにすること
・脳卒中を引き起こす原因は生活習慣の積み重ねであり、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病につながる。
脳卒中の一次予防には、次のような方法が推奨されています。
・血圧をコントロールする
・塩分控えめの食生活と、コレステロールを減らす
・適度な運動をする
・睡眠環境を整えて良質な睡眠をとる
・バランスの取れた食事を口にする

[背景・目的] 「脳卒中一次予防のための2024年ガイドライン」は、2014年の「脳卒中一次予防のためのガイドライン」に代わるものである。この更新されたガイドラインは、脳卒中の既往歴のない患者に対するさまざまな予防戦略を導くために臨床医が使用するリソースとなることを目的としている。

[方法-結果] 2014年のガイドライン以降に発表された文献の包括的な検索、英語で発表されたヒトを対象とした研究から導き出されたもの、およびMEDLINE、PubMed、Cochrane Library、その他の選択された関連データベースにインデックスされたものについて、2023年5月から11月にかけて実施された。 また、米国心臓協会が以前に発表した関連主題に関するその他の文書についてもレビューされた。構成:虚血性および出血性脳卒中は重大な障害につながるが、最も重要なのは、予防が可能であるということだ。2024年の脳卒中一次予防ガイドラインでは、生涯を通じて脳卒中を予防するための戦略について、現在のエビデンスに基づく推奨事項が提示された。これらの推奨事項は、脳卒中発症の予防に加えて、心血管と脳の健康を最適化するための米国心臓協会のライフエッセンシャル8と一致している。また、2014年のガイドラインと比較して新しいものとして、性別ごとの脳卒中スクリーニングと予防に関する推奨事項も追加した。同様のリスク要因の予防に関する多くの推奨事項が更新され、新しいトピックが検討され、十分な質を持つ公表データによって裏付けられた推奨事項が作成された。

■ 脳卒中リスクを高める要因:全体像①

1. 健康の社会的決定要因の悪化(Adverse Social Determinants of Health)
・医療へのアクセスが不十分であること
・経済的困難(低所得、貧困)
・住環境の劣悪さ(治安やインフラの欠如)
・社会的および地域的支援の欠如
・教育機会の不足
・人種差別や偏見の経験

2. 一般的なリスク要因の管理不足(Inadequate Management of Common Risk Factors)
・未診断のリスク要因(例: 高血圧や糖尿病の放置)
・治療が不十分であること
・医療提供者と患者の間で意思決定が共有されていないこと
・医療制度上の障壁(アクセスや保険の問題など)
・生活習慣の重要性が軽視されている(「Life’s Essential 8」など健康的行動の遵守不足)

3. 一般的に認識されていないリスク増強因子(Commonly Unrecognized Risk-Enhancing Factors)
・リポタンパク(a)(Lp(a))
・CADASIL(遺伝性の脳小血管病)
・血栓性疾患(例: 血液凝固異常)
・子宮内膜症
・早期閉経
・妊娠合併症(妊娠中毒症、早産など)

■ 脳卒中リスクを高める要因:全体像②

1. 生物学的要因(Biological Factors)
・妊娠および妊娠に関連する有害な結果(例: 妊娠高血圧症候群)
・ホルモン避妊薬の使用
・炎症性疾患
・早期閉経(45歳未満)
・子宮内膜症

2. 遺伝的要因(Genetic Factors)
・鎌状赤血球症(Sickle Cell Disease)
・遺伝性血栓性疾患(例: 遺伝性抗リン脂質症候群)
・CADASIL(脳小血管障害を伴う遺伝性動脈症)

3. 社会的要因(Social Factors)
・医療へのアクセスの制限
・制度的差別
・歴史的な研究対象からの排除
・医療提供者のバイアス
・偏見やスティグマ
・医療制度への信頼度の低さ

■ 抜粋:身体活動量の推奨事項

・成人においては、脳卒中リスクを評価するための包括的な取り組みの一環として、身体活動のスクリーニングが推奨されている。
・成人患者には、少なくとも週に150分間の適度な運動(moderate-intensity PA)、75分間の激しい運動(vigorous-intensity PA)、または同等の組み合わせを行うよう勧めることが、脳卒中のリスクを軽減するために推奨されている。
座ったままの状態で長時間過ごすことを避けるためのカウンセリング(起きている間、座ったり、もたれたり、横になったりしている状態でエネルギー消費量が少ない状態が特徴)が推奨されている。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

臨床実践ガイドラインとは、「健康に関する重要な課題について、医療利用者と提供者の意思決定を支援するために、システマティックレビューによりエビデンス総体を評価し、益と害のバランスを勘案して、 最適と考えられる推奨を提示する文書」(専門理学療法士:指定研修より)である。
ざっくり、以下のプロセスによってできあがる。

■ 単一試験 → システマティックレビュー → 臨床実践ガイドライン

今回のガイドラインは、米国心臓協会/米国脳卒中協会が作成した、信頼性のおけるガイドラインである。
このような臨床実践ガイドラインは、さながら木(単一試験)の集合である森(単一のシステマティックレビュー)を集合させた自然公園(単一の臨床実践ガイドライン)である。
今回のテーマは脳卒中の一次予防であったが、その全体像、また身体活動量の推奨事項はリハビリテーションセラピストとしても知っておくべき内容だと感じた。
特に、身体活動量については具体的な数値も示されており、生活指導にそのまま応用できそうな内容であった。
脳卒中の一次予防に臨む際に、まず全体像を眺めるときに確認したいガイドラインである。

⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨

○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪

↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び

この記事が参加している募集