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施設入居者のADL機能低下の予後


📖 文献情報 と 抄録和訳

長期療養施設における機能低下の軌跡と予測因子:カナダの介護施設入居者を対象とした後方視的コホート分析

📕Egbujie, Bonaventure Amandi, et al. "Trajectories of functional decline and predictors in long-term care settings: a retrospective cohort analysis of Canadian nursing home residents." Age and Ageing 53.12 (2024): afae264. https://doi.org/10.1093/ageing/afae264
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[背景・目的] 日常生活動作(ADL)能力の低下、すなわち「機能低下」は、高齢者人口の主な健康上の懸念事項である。介入により、ADL能力の低下は遅らせたり、予防したり、回復させることができる。将来の機能変化の軌跡を予測する能力があれば、ケア計画を強化し、入居者の結果を改善することができる。

[方法] これは、カナダの5つの州における長期療養型介護施設入居者に関する36ヶ月間の後方視的縦断的分析である。 グループベースの軌跡モデリング(GBTM)を実施し、明確な軌跡と、軌跡グループのメンバーシップに関連する入居者の属性を特定した。

[結果] この研究には、合計204,036人の長期療養型介護施設入居者が含まれた。入居時の平均年齢は83.7歳(標準偏差=8.6)で、63.3%が女性であった。

■長期療養施設入居者のADL機能低下の予後(4つのパターン)

①壊滅的な機能低下(Catastrophic decline):n = 48,441、22.7%
②一部回復を伴う急速な機能低下(Rapid decline with some recovery):n = 27,620、18.7%
③徐々に進行する機能低下(Progressive decline):n = 30 287、14.4%
④機能低下なし/最小限の低下(No/Minimal decline):n = 97 688、47.9%

■ 4つの異なる機能低下パターンと予測因子

・入居者のADLヒエラルキースコアは、入居者がたどる機能低下の軌跡を予測する最も強力な単一指標であった。
・ADLH 5-6 OR 0.03 (0.03–0.04) の入居者は、最も深刻な機能低下の傾向を示す可能性が最も低く、一方、ADLH 5-6 OR 39.05 (36/60–41.88) の入居者は、機能低下の傾向がほとんどないか、あるいは全くない可能性が最も高いことが示された。

[結論] この研究結果は、LTC施設入居者の健康状態の推移の異質性をさらに浮き彫りにし、個別ケアの必要性を改めて裏付けるものとなった。この研究は、入居者の中で、機能低下のさまざまなレベルにおいて最もリスクが高いのは誰かを示している。この研究結果は、即時的および高度なケア計画を支援する有益な情報を提供するだけでなく、入居者の重症度レベルの合計に基づいて、将来の介護人員要件を予測するのにも役立つ。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

この研究で注目すべきところは、どこだろう。
それはやはり、「N数」だと思う。
施設入居時点から36ヶ月後までのデータが揃った20万人以上のデータである。

臨床研究は、大まかに言えば母集団を反映した少数の被験者のデータから、母集団全体の傾向を統計解析を用いて推測していくプロセスになる。
だが、この研究においては、『ほぼ母集団やん!』と思えるほどに被験者数が大きい。
当然、より母集団の傾向を真に近いところで反映した結果となるはずだ。

今回の研究の結果、施設入居者のADL低下パターンは4つに分かれた。
特に、②③はリハビリテーションのサポートによって影響を与えられる可能性が高い集団ではないかと感じる。
当然のことだが、必要性の高いところに、必要な支援を提供できることが理想だ。
今回の研究は、その一助となるデータと言えるのではないだろうか。

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