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高齢介護施設入居者の脊柱弯曲と転倒リスク
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢者介護施設入居者の矢状面脊柱弯曲と転倒発生率および転倒リスクの関係を調査する
📕Osanlou, Samaneh, et al. "Investigating the relationship between sagittal spinal curvature and fall incidence and fall risk among elderly nursing home residents." Osteoporosis International 35.11 (2024): 1999-2006. https://doi.org/10.1007/s00198-024-07232-z
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Not applicable
[背景・目的] 高齢者の転倒の根本的な原因はバランス能力の低下であり、脊椎の自然弯曲の変化が大きな役割を果たしている。この集団における脊椎弯曲と転倒発生率の関係についてはほとんど知られていない。私たちは主に、介護施設入居者における1年間の前後面における脊椎弯曲と転倒発生率の関係を調査することを目的とした。また、副次的に、前後面における脊椎弯曲と参加者の転倒リスクおよびバランス能力の認識との関連性を明らかにすることを目的とした。
[方法] 対象者(平均年齢70.17±6.01歳の入居者100名)は、矢状面脊柱弯曲の立位測定(フレキシブルルーラー法)と、頸椎に対する頭部前方変位を評価した。
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Tinetti Performance Oriented Mobility Assessment(POMA)と転倒有効性尺度(FES)により、参加者のバランス感覚と転倒恐怖を評価した。転倒は毎月自己申告され、1年間にわたって追跡された。転倒発生率と脊椎弯曲の関連性は、スピアマンの相関とロジスティック回帰により評価された。脊椎弯曲と転倒リスクの予測性能は、脊椎弯曲と転倒リスク指標の変数におけるカットオフ値を定義するためのROCにより決定された。
[結果] 脊椎弯曲および転倒リスク要因の予測性能は、前弯および頭部角度のモデルを使用することで、参加者の84%と77%がそれぞれ正しく分類されたことを示した。
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■ 胸椎後弯×転倒リスク
・AUC:0.867
・Cut-off:57.25度
・感度と特異度はどちらも75%
■ 頭部前方位×転倒リスク
・AUC:0.779
・Cut-off:39.25度
・感度70.6%, 特異度71.9%
[結論] 本研究は、介護施設入居者の脊椎弯曲および転倒に関する新たなデータを追加した。脊椎弯曲の進行を食い止め、転倒防止策を改善するための介入努力が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
“実るほど頭を垂れる稲穂かな”
この言葉は、稲の穂が実るほどに穂先が重くなり、自然と低く下がる様子に例えて、「学問や技能が深まると、他人に対してますます謙虚になること」を意味する言葉。
だが、ここでもう1つの現象が起こっていることに気がつきたい。
頭を垂れるほど、さらに「頭を下げる外力が強まっている」ということに。
回転軸に対して、重心位置が遠くなるほどに、回転軸に加わる外力は大きくなる。
つまり、稲穂の屈曲角度が高まる(頭を垂れる)ほどに、屈曲の最凸部を軸としたとき、そこに加わる回転外力が大きくなるのだ。
これが、そのまま頭部前方位、胸椎後弯(円背)にも当てはまる。
異常姿勢が大きくなればなるほど、そこに加わるストレスは大きくなっているし、円背であれば、前方へ回転させる外力が大きくなっている。
自然、前方へ、下方へ回転して転倒してしまうリスクが高まりそうだ。
今回の抄読研究は、実際に円背者、頭部前方位者の転倒リスクが高まることを示した。
さらに、円背は頭部前方位と比較しても転倒リスクを高精度に予測した。
円背者の転倒リスクには、重々注意していきたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕高齢介護施設入居者の脊柱弯曲と転倒リスク
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) December 12, 2024
・介護施設入居者100名(平均70.1歳)
・胸椎後弯角度, 頭蓋脊椎角(CVA ※頭部前方位)などを測定
転倒リスクの予測
🔹胸椎後弯:AUC 0.867, Cut-off 57.25度
🔹頭部前方位:AUC 0.779, Cut-off 39.25度
やはり矢状面姿勢異常と転倒リスクは関連しそうです😲 pic.twitter.com/B6P7Qd6iSD
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