標識が行動を変える。認知症者の環境理解をサポート
📖 文献情報 と 抄録和訳
サインをください:具体的なシンボルがアルツハイマー病認知症における方向感覚を促進する
[背景・目的] 目的アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease dementia, ADD)は、特に未知の環境において、しばしば方向感覚の障害を示す。サインはこのような障害を補い、参加意識を向上させる機会を提供するかもしれない。
[方法] ADD患者30名と健常対照者36名を対象に、実生活環境における標識理解パラダイム(sign comprehension paradigm, SCP)を用いて評価を行った。ノンパラメトリック混合モデル分散分析を用いて、異なるシンボルと追加スクリプト(符号化条件)がSCPのパフォーマンス速度と正確さに及ぼす影響を分析した。
各試行の前に、参加者はドアと反対側の固定されたスタート地点まで付き添われ、できるだけ速く、できるだけ正確に衛生施設を見つけるよう指示された。SCPのパフォーマンス速度(記号の位置を考慮し、ドアを開けるまでの時間をベースラインの速度で割ったもの)とSCPの正確さ(間違ったドアの開け方)が記録された。参加者は8回の試行の結果、すべての記号セットを行った。SCPの時間は合計で約15分であった。実験開始前に、参加者はベースライン速度を測定するために短い距離(5m)を歩くように指示された。
[結果]
■ SCPスピード
・最適化された2D+シンボルでは、ISO(Z = 4.213、p < .001、部分η2 = 0.269)および2D(Z = 4.322、p < .001、部分η2 = 0.283)と比較して、SCP速度が増加することを明らかになった。
・健常対照者では、シンボル間の速度差は見られなかった。群間差も観察されなかった。
■ SCP誤り率
・すべての記号と符号化の組み合わせにおいて、健常対照者と比べてADD者のSCPエラー率が高いことを示した(t = -3.079、p = 0.002、部分η2 = 0.143)。
・ポストホックウィルコクソン検定では、両群とも二重符号化条件のSCP誤り率が単一符号化条件より有意に低いことが示された(Z = 2.428、p = 0.015、部分η2 = 0.089)。
・さらにシンボルの主効果を分析した結果、3DシンボルではISOよりもSCPエラー率が低く(Z = 1.897、p = 0.058、部分η2 = 0.055)、2Dシンボルでも低かった(Z = 1.732、p = 0.083、部分η2 = 0.045)。
[考察] 本研究の結果、具体的二重符号化記号は従来の記号よりも有利であることが明らかになった。したがって、ADDとともに生活する高齢者を支援するために具体的二重符号化記号を導入することが強く示唆される。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
宮崎駿さんの映画が好きだ。
とにかく好きだ。
見ていて、飽きるということがない。
「なぜ、こんなに飽きることがないのだろう?」
真剣に、そう考えたことがある。
僕の中の答えは、「五感的」、とくに「触覚的」だからだと思った。
魔女の宅急便で、キキが空を飛んでいるシーン。
風が耳の横を吹き抜けていく感じ、服を膨らませる感じ…、それらを見ることを通じて「感じる」。
トトロのお腹にメイが乗っているシーン。
毛のふわふわした感じ、トトロの呼吸でお腹が柔らかく上下する感じを「触るように感じる」。
ラピュタの冒頭、パズーが空から落ちてくるシータを支え、急に重みが加わるシーン。
グッと上肢→体幹→下肢に負荷が伝搬する、重みをリアルに「体感する」。
そういう、現実を、感覚を、想起させる「絵」がある。
今回の研究は、より理解しやすい絵、行動を賦活しやすい絵があることを示した。
ポイントは、より行動をイメージしやすい(2D+)、より現実に近い(3D)。
環境づくりの一環として、標識はこだわりがいのある部分だと思った。
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