人工膝関節置換術後の筋トレの効果
📖 文献情報 と 抄録和訳
人工膝関節置換術後リハビリテーション改善のための筋力トレーニング:ナラティブレビュー
[背景・目的] 変形性膝関節症は、筋力、筋肉量、身体機能の低下と関連している。これらの筋肉に関連する障害は、人工膝関節置換術(total knee arthroplasty, TKA)後に急激に悪化し、身体/機能トレーニングを含む標準的なリハビリテーションプログラムを実施しても、術後も長期にわたって持続する。筋力トレーニング(resistance exercise training, RET)は、健康な集団だけでなく臨床集団においても、筋肉に関連する結果を改善する非常に効果的な戦略であることが示されている。しかし、TKA後の従来のリハビリテーションプログラムにおけるRETの使用は限定的。本論説では、TKA後の回復期間(最長1年)における標準的リハビリテーション(SR)にRETを追加することで、SRのみと比較して筋関連の転帰がより改善されるかどうかについて、最新の知見を提供する。
[レビュー結果概要] 全体として、研究結果は、RETに基づくリハビリテーションはSRと比較して筋力および筋肉量の両方をより大きく改善できることを明確に示している。さらに、大腿四頭筋の筋力とバランスに依存する身体機能の測定値(階段昇降、椅子立ち上がりなど)も、特に身体機能レベルが低い患者では、RETに基づくプログラムの方がSRよりも有益であるようである。しかし、RETを最大限に効果的に行うには、70~80%1RMの負荷, 1エクササイズ3~4セット, 8週間, 週3回以上が推奨される。この総説を踏まえて、私たちは、TKA後のリハビリテーションの標準プログラムに、このような高強度の段階的RETを組み込むことを推奨する。
✅ 定義:標準的なリハビリ(Standard Rehabilitation, SR)
・標準的なリハビリは、膝関節形成術(TKA)後の回復過程において、関節可動域やバランス、日常生活動作の改善を目的とする。具体的には、関節の柔軟性や歩行能力、階段昇降といった身体機能の改善に重点を置く。
・SRは主に低強度の機能訓練が中心であり、筋肥大や筋力向上を目的としたトレーニングは含まれないことが多い。
✅ 定義:筋力トレーニング(Resistance Exercise Training, RET)
・RETは、筋力と筋量を向上させるために、一定の負荷(ウェイトやエラスティックバンドなど)を用いるトレーニング方法である。術後のリハビリにおいても高強度のプログラムが有効とされ、80%の1RM(1回最大挙上重量)の強度でのトレーニングが推奨されている。
・TKA術後1週間~8日以内に開始され、週3回の頻度で行われることが理想的とされている。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
この論文を見たときに、僕は違和感を感じた。
「ん?、標準的なリハビリにも筋トレは入っているよね?」と。
だが、よくよく論文を読んでみると、筋力トレーニングの定義には「筋力と筋量を向上させるために、一定の負荷(ウェイトやエラスティックバンドなど)を用いるトレーニング方法である。術後のリハビリにおいても高強度のプログラムが有効とされ、80%の1RM(1回最大挙上重量)の強度でのトレーニングが推奨されている。」とあった。
ここまで、負荷量についてしっかり検討された上で、筋トレの処方がされているだろうか?
多くの場合、「否」であろう。
だが、その部分にしっかりとこだわり、負荷量をかけた筋力トレーニングを行うことで、筋力は手術前の状態を超えるレベルにまで回復する可能性がある。
改めて、負荷量についてこだわりを持って、日々の臨床に臨みたいと感じさせてくれる論文だった。
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