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運動への骨格筋反応の老化。同化抵抗性という重要な概念


📖 文献情報 と 抄録和訳

加齢に伴う炎症と運動に対する骨格筋反応への影響

📕Kunz, Hawley E., and Ian R. Lanza. "Age-associated inflammation and implications for skeletal muscle responses to exercise." Experimental Gerontology 177 (2023): 112177. https://doi.org/10.1016/j.exger.2023.112177
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[レビュー概要] 加齢は、筋肉量と機能の低下、局所的な炎症、ミトコンドリア生理学の変化、同化抵抗性と呼ばれる運動に対する同化反応の減弱など、骨格筋における重大な変化と関連している。加齢に伴う慢性的で低レベルの炎症である "炎症化 "は、運動や栄養刺激に対する骨格筋の反応能力を含め、加齢に関連した骨格筋の変調の多くに関与している可能性がある。炎症と運動は多くの点で密接に絡み合っている。しかし、加齢に伴う慢性的な全身および局所の炎症は、運動に対する急性の炎症反応や同化反応を損なう可能性がある。対照的に、運動トレーニングは抗炎症性であり、潜在的な炎症の根本原因の多くを標的としている。本総説では、加齢に伴う炎症と運動の相互作用について考察し、高齢者の運動に対する適応反応を改善するための潜在的な治療標的を明らかにする。

■ このレビュー論文の目次
1. Introduction
2. 老化と炎症
2.1. 加齢に伴う炎症の原因
2.2. 加齢に伴う筋特異的炎症
2.3. 加齢に伴う炎症の健康への影響
3. 運動トレーニングの抗炎症効果
4. 急性運動に対する骨格筋反応における一過性炎症の役割
5. 慢性炎症が急性運動反応に及ぼす影響
5.1. 急性運動に対する骨格筋免疫反応に対する加齢の影響
5.2. 加齢と炎症が急性運動に対する同化反応に及ぼす影響
6. 加齢、炎症、運動トレーニング
7. 急性運動および運動トレーニングに対する反応性を高めるための炎症の軽減
8. Conclusion


■ 同化抵抗性(Anabolic Resistance)という重要な概念
・運動は生涯を通じて有益であることに変わりはないが、若年成人と比較すると、高齢者は運動に対する反応が減弱することが多く、これは「同化抵抗性」として知られる現象である(Lalia et al., 2017Kumar et al., 2009) 
・加齢に伴う慢性的な低悪性度炎症は、同化抵抗性を含む骨格筋の加齢性障害の多くに関係していると推測されている(Haran et al., 2012
・急性炎症は傷害や単発の運動後の筋修復に重要な役割を果たすが(Tidball, 2017)、慢性炎症はミトコンドリア機能障害(Lopez-Armada et al, 2013)、インスリンシグナルの消失(Abbatecola et al., 2004; Varma et al., 2009)、同化抵抗性と関連している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

真に独創的な人物とは何か
たとえば、独創的な人間の特徴の一つは、すでにみんなの目の前にあるのにまだ気づかれておらず名前さえ持たないものを見る視力を持ち、さらにそれに名称を新しく与えることができる、ということだ。名称が与えられて初めて、それが実際に存在していることに人間は気づくものなのだ。そうして、世界の新しい一部分が誕生してくる。

ニーチェ 『悦ばしき知識』

名前には、『標本化・結晶化機能』があり、今まで気づかれずにそこにあった現象や、気づかれていてもぼやけていたり曖昧だったりして存在がはっきりしなかった物事が、一度名前がつけられることによってその存在がはっきりするということがある。
さらに、その存在がはっきりすることによって、たくさんの人たちの新たな世界の一部を築く『環世界拡大機能』も有する。

「この患者さん。筋トレしてもあまり効果が出ないんだよね。なぜだろう?」

このぼんやりとした現象が、今回の論文を読んだ僕には『同化抵抗性』という名前をもったはっきりとした存在として捉えられる。

「この患者さん、同化抵抗性が大きい。おそらく加齢によるものと、代謝系の障害によるものが考えらえる。だから、ゴール時期は少し長めに設定して、運動負荷量についても考慮が必要そうだな」

明確な存在、明確な分析、明確な対処。
名前という囲いをうまく用いることができれば、僕たちは世界をはっきりと知って、その中でよりよく生きることができるはずだ。

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