膝OA者+糖尿病。歩行速度, 立ち上がり時間への影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
糖尿病は、変形性膝関節症患者またはその予備軍における身体能力測定値の長期的低下と関連する:変形性膝関節症イニシアチブからのデータ
[背景・目的] 本研究の主な目的は、変形性膝関節症(osteoarthritis OA)患者またはそのリスクを有する患者において、糖尿病(diabetes mellitus, DM)が歩行速度や椅子立ちテストなどの身体能力測定に及ぼす影響を、8年間の追跡調査を通じて縦断的に検討することであった。
[方法] デザイン:前向き縦断研究。設定多施設共同。集団:この研究は、Osteoarthritis Initiativeの45~79歳の膝関節OA患者またはそのリスクを有する参加者を対象とし、ベースラインから96ヵ月間の追跡を行った。方法参加者は、ベースライン時および追跡期間中に、歩行速度は20m歩行テスト、椅子立ち上がりテスト時間は5回立ち上がりテストを用いた身体能力測定を行った。参加者はベースライン時に糖尿病(DM)の有無を尋ねられ、DMの有無に分類された。一般化推定方程式は、年齢、性別、学歴、BMI、抑うつ症状、身体活動レベル、ベースラインの併存疾患数、ベースラインのKellgrenとLawrenceのOAグレードを含む共変量をコントロールした後、DMと歩行速度、DMと5回立ち上がりテストの2つのモデルで利用された。
[結果] 合計4796人の参加者が対象となり、ベースライン時にDMのある人(N.=362)とない人(N.=4311)に分類された。ベースライン時にDMを有していた参加者は、共変量をコントロールした後、ベースライン時にDMを有していなかった参加者と比較して、経時的に歩行速度が有意に低下し(B=-0.048、95%信頼区間[95%CI]:[-0.07, -0.02]、P<0.001)、5回立ち上がりテストの時間が有意に増加した(B=0.49、95%CI:[0.08, 0.89]、P=0.018)。
[結論] 糖尿病は、膝関節OAの患者またはそのリスクを有する患者において、歩行速度と反復椅子立ち試験時間に負の影響を及ぼすことと関連していた。膝関節OAと糖尿病を有し、身体能力測定値が低下している患者は、機能的依存、QOLの低下、複雑なリハビリテーションの必要性のリスクがある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
“第3の因子” というものがある。
「わからない」と思った方、ぜひ上のリンクから第3の因子のnoteを見ていただきたい。
この第3の因子が重要なことは、主の解析結果を歪めてしまう、ということだ。
例えば、変形性膝関節症者の重症度と歩行速度を考えた際に、重症度ごとに歩行速度が遅くなっていた。
だが、糖尿病の有無によっても歩行速度は異なる可能性が大きい、ということが今回の抄読研究で示されている。
つまり、“糖尿病の有無” という第3の因子を調整した上で、主の解析結果を論じなければならない。
このような交絡因子の補正、は特に論文投稿時の査読者とのやり取りにおいて、加熱する議題である。
「なぜ、糖尿病の有無についての患者背景が調査されていないのですか?そして、多変量解析の交絡因子として糖尿病を加えるべきだと思うのですが、いかがでしょうか?」
すでに情報収集が終わっている段階で、このやり取りになるので、正直、キツイ。
(僕は結構言い訳で逃げてしまうタイプですが・・・涙)
だが、最初から適切に第3の因子の理解ができていれば、研究計画の情報収集の1項目に『糖尿病』を加えることができていただろう。
今回の抄読研究は、まさにその部分に役立つ研究だ。
変形性膝関節症者の運動機能を主のアウトカムとした研究の場合、糖尿病の有無の情報収集は必須、です。
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