大腿四頭筋と呼ばないで。大腿直筋と広筋群は役割が違う
📖 文献情報 と 抄録和訳
二足歩行スクワットにおける単関節型と二関節型の大腿四頭筋の運動制御ストラテジーの違い
[背景・目的] 二足歩行スクワット(bipedal squats, SQBP)における膝関節と股関節の二関節筋と単関節筋の相互作用は、滑らかでダイナミックな動きを可能にするために、中枢神経系の適切な制御機構が必要である。
[方法] 本研究では、健康な男性レクリエーションアスリート12名を対象に、標準化された筋力トレーニングプロトコル(10回×3セット)に従い、3段階の負荷(3回反復最大負荷の50%、62.5%、75%)でSQBPを行った際の内側広筋、外側広筋、大腿直筋の運動制御について検討した。時間領域と周波数領域における運動制御メカニズムの違いを定量化するため、(1)相関分析による筋共分散、(2)RF、VM、VL間の筋間コヒーレンス(Intermuscular coherence, IMC)による共通の神経入力の分析を行った。
[結果] 両脚とも、VM-VL間のガンマIMCは、RF-VL間およびRF-VM間に比べて有意に高いことが明らかになった。また、相関分析により、すべての筋ペアにおいて、上昇時の相関係数が下降時に比べて有意に高いことが示された。しかし、運動制御の負荷依存的な変調は観察されなかった。
[結論] 本研究は、SQBP中の運動制御は、二関節筋と単関節筋の共通入力の違いによって特徴づけられるという新しい証拠を提供する。さらに、筋肉の活性化パターンは、下降期と比較して上昇期で高い類似性を示す。将来的には、エリートスポーツやリハビリテーションにおけるトレーニングコンセプトを最適化するために、基礎となる制御メカニズムに関する洞察を提供するため、我々の観察を検証し、拡張することを目的とする必要がある。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
大腿四頭筋、という。
そして『名は体を表す』といわれる。
すなわち、僕たちは大腿四頭筋(直筋+広筋群(中間広筋、内側広筋、外側広筋))を1つの塊として認識している節がある。
だが、それは妥当だろうか?、と本研究の結果は問いかけている。
大腿直筋と広筋群では異なる神経入力をしている、というのだ。
これは、理学療法士にとっては、「そうだろうね」という意外性のない、再確認的な結果だ。
なぜなら、スクワット指導などにおいて、僕たちは直筋と広筋群に違う役割を要求しているから。
例えば、変形性膝関節症者に対するスクワット指導において、股関節伸展筋やハムストリングスの筋活動を高めた動作の獲得が重要となる。
全般の荷重負荷を膝関節伸展のみではなく、股関節のトルクに分散できるからだ。
そのために重要なことは、大腿骨上の骨盤前傾(股関節屈曲)を伴うこと。
そして、その肢位をとった場合の大腿四頭筋に着眼すると、広筋群は活性化され、大腿直筋は抑制される。
直筋の活動が抑制されるのは、骨盤前傾により直筋は緩み膝伸展に貢献しにくくなるからだろうと思う。
すなわち、この動作指導において、理学療法士は「大腿直筋の活動を抑制し、広筋群の活動を賦活する」ということをしている。
このように、直筋と広筋群は僕たちにとっては、全然別個の筋ですらある。
であるのに、なぜ『大腿四頭筋』と一個に括られる筋であるのだろう。
その全部が膝蓋骨につく筋だから、だろうか。
だが、それによって頭の中で「4つで1つの塊」として認識されると、実践においてやや不利かもしれない。
名前が思考を導く、ということだって、十分に考えられるのだから。
少なくとも理学療法士は、『大腿四頭筋と呼ばないで』と思う今日この頃である。
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