プラセボ, ノセボ効果。知識を臨床に生かす戦略
📖 文献情報 と 抄録和訳
プラセボ効果とノセボ効果に関する知識を臨床に生かす
[レビュー概要] プラセボ効果とノセボ効果は、あらゆる医学分野に共通する複雑な神経心理学的現象であるが、痛みの分野では特に強い。プラセボ効果とノセボ効果の主要な心理学的決定因子は、肯定的および否定的な治療期待である。プラセボ効果やノセボ効果とも呼ばれる、治療に対する肯定的・否定的な期待の効果は、治療効果、忍容性、アドヒアランスを大きく変化させる可能性がある。プラセボ効果は肯定的な治療期待によって治療効果を高めることができ、ノセボ効果は否定的な治療期待によって副作用を誘発したり、治療効果を消失させたりする。患者の期待や治療に対する過去の経験に対処し、最適化することで、患者の治療に対するアドヒアランスとコンプライアンスが向上する可能性がある。どちらの効果も、患者の否定的な期待、不安、恐怖を軽減するコミュニケーション戦略によって調節することができる。開放性プラセボは、プラセボ効果とノセボ効果の根底にあるメカニズムについて患者に知らせることで、古典的なプラセボ治療の欺瞞的性質を回避するまたとない機会を提供しうる。この臨床的アップデートは、2022年IASP世界年「痛みの知識を実践に移す(Translating Pain Knowledge into Practice)」に沿ったものであり、入手可能な最良のエビデンスと実践を厳選してレビューしている。
<プラセボ効果を最大化し, ノセボ効果を最小化するための戦略>
■ 期待と学習ベースの戦略
- 介入と副作用に関する患者の期待を評価する。
- 過去の(失敗した)治療経験を判断する
- 潜在的なリスクを説明する前に、望ましい治療結果に焦点を当てる。
- 副作用に対処するための戦略を提供する。
- ビデオクリップのような視覚的なツールや、情報を図式化し平易な言葉で表現した情報リーフレットを使用する。
- 不安を煽るような根拠のない情報源ではなく、計画されている治療や病気に関する根拠に基づいた情報を提供する。
- 副作用の少ない前処置を選択する。
■ 患者と医療者の相互作用
- 信頼できる共感的な方法でコミュニケーションをとる
- 患者の知識レベルを評価する
- 病気、予後、治療法、治療の目的、起こりうる副作用について十分な情報を与える。
- 不適応な期待や誤解を防ぐため、治療目標や副作用について患者の理解を確認するために積極的に質問する(例えば、患者に要約させる)。
- コンプライアンスを促進するために、患者の不安や疑問に耳を傾け、答える時間をとる。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
これまで、プラセボ効果、ノセボ効果についてはいくつかの文献抄読において学んできた。
「へぇ、疼痛に関わる効果が特に顕著ということは、理学療法にも応用できそうだな」と感じていた。
しかし、具体的に何をどうすればいいのかはわかっていなかったし、臨床応用も十分にできているとは言えなかった。
今回の論文は、そんな知識と行動の橋渡しをしてくれる貴重な一論文だと感じた。
本文中には、様々な橋渡し戦略がエビデンスとともに示されていて、図に示した戦略表は有用だ。
特に、その中でも赤字で示した部分は実行に繋げやすい部分だと思う。
リスクの前に、望ましい結果に焦点を当てる。
視覚的ツールや情報リーフレットを使用する。
副作用の少ない前処置を選ぶ。
コミュニケーションにおいての複数のポイント。
・・・。
こと疼痛に関する治療やその説明をする場合、これらのポイントを行動指針として介入してみよう。
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