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『筋膜』を伸ばす筋力トレーニング

📖 文献情報 と 抄録和訳

ハムストリングスの3つの運動における筋力と筋膜の挙動

📕Van Hooren, Bas, et al. "Muscle forces and fascicle behavior during three hamstring exercises." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2022). https://doi.org/10.1111/sms.14158
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] ハムストリングエクササイズ中の筋力と筋膜の挙動に関する知識は、運動処方を最適化することができるが、異なるエクササイズ間でのこれらの結果に関する情報は不足している。我々は、ノルディックハムストリングカール(Nordic hamstring curl: NHC)、シングルレッグローマンチェア(single-leg Roman chair: RCH)、シングルレッグデッドリフト(single-leg deadlift: DL)の3つのハムストリングエクササイズにおける下肢筋力と大腿二頭筋長頭の筋膜挙動を特徴づけ、比較することを目指した。

[方法] 10名の男性参加者は、全身運動学、地面反力、表面筋の活性化、大腿二頭筋の長頭筋膜の挙動を測定しながら、エクササイズを実施した。

スクリーンショット 2022-06-27 6.32.21

✅ 図1. シングルレッグデッドリフト(A)、ノルディックハムストリングカール(B)、シングルレッグローマンチェアホールド(C)の実験セットアップと、各運動に対応するOpenSimモデル。上と下の画像は少し違う視点からのものであることに注意してください。緑の矢印は、地面反力ベクトルを表しています。動画と筋骨格モデルの動きを同期させた動画は、OpenScienceフレームワークで見ることができます:🌍 参考サイト >>> site.

[結果] 平均筋膜長はDLで最も高く、次いでRCH、NHCであった。筋膜の伸長はRCHおよびDLと比較してNHCで高く、RCHとDLの間には差がなかった。大腿二頭筋短頭・長頭、半腱様筋、半膜様筋のピーク力は、RCHおよびDLと比較してNHCで概して高かったが、エキセントリック相の平均力はNHCとRCHで概して差がなかった。NHCのピーク力は、大腿二頭筋の長頭および半膜様筋の低活性化と一致した。NHCは、DLおよびRCHと比較して、一般的にハムストリング筋力のピークが最も高く、筋膜の伸張がより大きくなることが示された。

スクリーンショット 2022-06-27 6.40.32

✅ 図2. 上段:シングルレッグデッドリフト(左)、ノルディックハムストリングカール(中)、シングルレッグローマンチェアホールド(右)時の矢状面関節角 度。2列目 大腿二頭筋腱単位長 3列目 大腿二頭筋長頭筋膜の長さ。4列目 大腿二頭筋の長頭、半膜様筋、半腱様筋の筋力。5列目 半腱様筋と大腿二頭筋の実験的に測定された筋活性を、近位と遠位の測定位置で平均化したもの。各パネルは、グループ平均(実線)±1SD(斜線帯)を表示する。薄い灰色の部分は、DL(0~66%)とRCH(83~100%)のバーベル下降期、およびNHC(0~88%)の開始~ブレイクポイントを反映する。濃い灰色の領域は、ブレークポイント以降、NHCが終了するまでの期間(88-100%)を反映している。

スクリーンショット 2022-06-28 3.34.11

✅ 図3. 各エクササイズの開始時、中間点、終了時の超音波画像。NHC、ノルディックハムストリングカール、RCH、ローマンチェアホールド、DL、デッドリフト。赤と緑の破線はそれぞれ上部と下部の腱膜を示す.オレンジの破線は筋膜の断片を表し,青の線は各断片から重み付けして算出した参照筋膜を表す.超音波とViconのビデオデータを同期させた動画は、以下から入手可能です。🌍 参考サイト >>> site.

[結論] したがって、NHCは、筋膜長の増加を促進するために最も効果的であると思われます。NHCは、大腿二頭筋短頭と半腱様筋の筋力適応を促進するのに有効ですが、RCHとDLは、大腿二頭筋長頭と半膜様筋の筋力増加を促進するより有効かもしれません。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、ぜひ上記抄読中に記載した2つの動画を見ていただきたい。
とくに、後半の超音波映像と筋トレ映像を同期させた映像は必見だと思う。
NHCの最終域において、筋膜が「ギュルッ」と動く様子が観察できる。
筋膜の挙動も、ここまで明らかに観察されるようになってきているのだと肌に感じた。

その中で、いくつかの疑問点が生じた。

▶︎疑問①:筋膜を伸ばす筋トレとストレッチングではどちらが筋膜伸張が大きい?
・筋トレ中に筋膜が伸張するのはわかったが、本家本元のストレッチングでの筋膜伸張と比較するとどうなのだろう?
・もしストレッチングよりNHCの方が筋膜伸張効果が大きいのなら、筋膜を伸張するためには特異的な介入が必要ということになろう

▶︎疑問②:筋実質を伸ばすストレッチと筋膜を伸ばすストレッチは違う?
・疑問①に近いのだが、たとえばハムストのストレッチングは筋実質も筋膜も伸張するだろう
・だが、その中で筋実質をとくに大きく伸ばすストレッチと筋膜を伸ばすストレッチは違うのだろうか
・さらに、方法によって伸張がかかる部位も変わってくるのだろうか
・たとえば、以下の研究では①股関節屈曲→膝伸展のストレッチ vs. ②膝伸展→股関節屈曲のストレッチで筋実質の伸張部位の比較をして、「差はない」と結論したが、筋膜挙動の視点を加えたら、違うのか?(📕中村, 2017 >>> doi.)

これらの疑問もいずれ解き明かされるだろう。
いや、既に解き明かされているかもしれない。
ひとまず、NHCをやっているときに患者(選手)から、

「先生、なんでハムストの筋トレには色々あるのに、NHCなんですか?」
「ああ、これだけは、筋トレに加えて『筋膜』を伸ばせる方法だからだよ・・・✨。この動画、見て(自分で撮ったかのように上記の動画を見せつける)。」
「先生、これ、やばいっすね」

患者(選手)、新人、学生にドヤれるシナリオが1つ増えた 🌸

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