固有感覚が痛み入力を制御。ゲートコントロール理論の証明
📖 文献情報 と 抄録和訳
固有感覚ニューロンによる末梢神経節の感覚神経伝達のゲートコントロール
[背景・目的] メルザックとウォールのゲートコントロール理論では、脊髄後角への無害な入力が、痛みを誘発する侵害受容器入力を抑制すると提唱された。
[方法-結果] ここでは、自己受容性のパルバルブミンを発現する感覚ニューロンからの入力が、後根神経節内の侵害受容器の活性化を同調的に抑制することを示す。パルバルブミン陽性感覚ニューロンを欠失させると、GCaMP3で測定した侵害受容器活性が亢進し、脊髄の広ダイナミックレンジ・ニューロンへの入力が増加し、急性疼痛行動と自発痛行動が増加し、無害感覚も増強した。パルバルブミン陽性感覚ニューロンは、脱分極した体節から放出されることが知られている小胞GABAを産生するのに必要な酵素とトランスポーターを発現している。
[結論] これらの観察結果は、ゲートコントロール機構が後根神経節内の末梢で起こるという見解を支持するものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
ゲートコントロール理論と聞くと、脊髄反射的に実習当時の自分の経験を思い出す。
無口だが、ものすごい技術を持っていそう(説明してくれないので分からない)な理学療法士の先生の見学。
そのとき見学させてもらった患者さんは、腰痛を訴えていた。
それに対して、その理学療法士の先生は、揉むでも、動かす、でもなく腰背部の一部分に手を当てて、じっとしていた(患者さんは側臥位で)。
(何してんの、これ?)
その手を離して、「じゃ、起きてください」と。
(えっ、何もしてないじゃん!?)
でも、患者さんは『痛くない!』だって・・・。
治療後、その理学療法士の先生に、
「あの治療は、いったいどんな理論的背景で、何をしていたのですか?」
と質問した、もちろん。
そして、その先生は言った。
「なんだと思う?」
それ以外、なにもそれに関して言及はしなかった。
答えではなく、適切な質問項目を与えることが重要!
短絡的に答えを与える手順暗記型ではなく、当人自身が積極的に暗中模索する試行錯誤型学習を!
それはわかる。
それはわかるのだが、その時のぼくには、何がなんだか、調べてもよく分からなかった。
その疑問をずっと持ち続けて、人生を歩んできた、あの治療は一体、何だったのか!?
そして、どのタイミングだったか、それは覚えてはいないのだが、「ゲートコントロール理論」と出会った。
その理論的背景を理解するにつけ、『これ、あの理学療法士の先生の治療っぽい!!!』と直感したのだ。
それ以来、ゲートコントロール理論は、ぼくの中では後光を放つ、特別な存在としてあり続けた。
そして、今回の抄読研究だ。
この論文テーマ、ぼくのアンテナが拾わないわけはない。
そして、中身も期待通り、固有感覚の入力が疼痛をゲートコントロールしていることの証明だった。
これを臨床上において考えると、徒手的な圧迫も、荷重も、歩行も、脊髄のゲートを閉じる方向に制御をかけている。
まあ確かに、動作中に過激な疼痛を知覚していては、動くことがおぼつかない、至極納得のゆく仕組みだ。
あのときの、あの先生!
重要な治療を見せ、重要な疑問を与えていただき、ありがとうございました。
あのときの、あの光景はぼくの中に強く焼きつきました。
これからも、ずっとずっと、残り続けるでしょう。
14年越しに、返答させてください。
答えは、『ゲートコントロール理論を背景とした、徒手的な持続圧迫(当該デルマトーム領域)による疼痛入力の抑制』。
・・・ですよね?
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