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オランダの理学療法クリニック。ウェブサイトに掲載された情報の質


📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士のウェブサイトに掲載されている腰痛と首の痛みに関する役立たない情報

📕van der Noord, Robert, et al. "Unhelpful Information About Low Back and Neck Pain on Physiotherapist's Websites." European Journal of Pain 29.2 (2025): e4782. https://doi.org/10.1002/ejp.4782
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※ Connected Papersとは? >>> note.

✅ 前提知識:オランダでは理学療法士に開業権がある
・オランダでは理学療法士が独立して開業する権利がある。
・理学療法士はオランダ政府が定める「BIG-register」に含まれる12の医療従事者職種の一つ。
・BIG-registerに登録された医療従事者には独立した権限が与えられており、これには理学療法士も含まれる。

[背景・目的] 筋骨格系の痛みを抱える患者にとって、インターネットはますます主要な情報源として利用されるようになってきている。 個人経営の理学療法クリニックは、腰痛(LBP)や首の痛み(NP)に関する情報をウェブサイトで提供しているが、これらの情報が生物心理社会学的観点やガイドラインに沿ったものであり、恐怖心を煽るような内容であるかどうかは不明である。本研究の目的は、オランダの民間理学療法クリニックのウェブサイトに掲載されている腰痛および頸部痛に関する情報を、ガイドラインおよび生物心理社会的モデルとの整合性の観点から分析し、恐怖を煽るような表現の使用について調査することである。

[方法] 横断的研究デザインにより、オランダの民間理学療法クリニックのウェブサイトすべての内容を調査した。生物心理社会的モデルおよびエビデンスに基づくガイドラインの事前設定された基準に基づいて、内容分析を行った。記述統計学を適用した。

[結果] 重複したサイトや情報のないサイトを除外した結果、8707件のウェブサイトのうち834件(10%)が残った。腰痛に関する情報は449件(54%)のウェブサイトに掲載されており、295件(35%)のウェブサイトでは非特異的腰痛について説明されていた。

■ 心理・社会的要因に基づいているか?

・大半のウェブサイト(腰痛:n=287、64%;非特異的腰痛:n=174、59%)は生物医学的見地に立っていた。
・心理的・社会的要因を包括的に取り入れた妥当なバイオサイコソーシャル的情報は少なかった。

■ ガイドラインとの一致:①治療法・介入

・治療に関するアドバイスは、n=560(67%)のウェブサイト上で1855回提供されていた。
・推奨されている介入のほとんどは、ガイドラインと一致していないか、またはガイドラインに言及していなかった。

■ ガイドラインとの一致:②助言・原因・結果

・約7割(69%)の助言や説明がガイドラインと矛盾しており、これには不適切な恐怖心を煽るような内容が含まれている可能性が高い。
・恐怖を煽るような表現は、n=1624(69%)の回数で提供されていた。

[結論] オランダの民間理学療法ウェブサイト上の情報の大半は生物医学的であり、現在のガイドラインに沿っておらず、恐怖を煽るような表現であった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

『インフォデミック』という言葉を知っているだろうか?
インフォデミックとは「情報(information)」と,感染症の広がりを意味する「エピデミック(epidemic)」を組み合わせた造語であり、インターネットなどで信憑性の低い情報、噂やデマなどの情報が多く急激に拡散され、混乱をもたらす状況のことを指す(🌍 参考サイト >>> site.)。
今回の抄読研究の結果、理学療法士が責任を持って記載されたと思われる「理学療法クリニックのウェブサイトに掲載された情報」の中にも信頼できないものや恐怖を煽るものが多いことが明らかになった。

この結果を受けて、著者はこれまでとは違った種類の危機感を感じた。
それは、生成系AIとの関連における危機感、である。
どういうことか。
生成系AIは、主にインターネット上の情報の集積(ビッグデータ)から指示に応じた生成をする。
ということは、そのインターネット上の情報の質が低ければ、そこから生成された生成物もまた、質が低くなってしまうだろう。
まさに、“Garbage in Garbage out” (ゴミを入力するとゴミが出力される)である。

これまでは、『まあ、インターネット上やSNS上に怪しい情報が落ちていても、人間が適切な情報をチョイスすれば、それでええやん』と思っていた。
だが、生成系AIは予測確率から生成物をつくっていくという仕組み上、あまりにも怪しい情報が多く落ちている状態というのは、マズい、そう思った。
これからの時代は、玉石混交ではいけないのかもしれない。
まずはできるところから。
個人的に出力の際に気をつけていきたい。

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